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プロバイオティクスの科学的効果:免疫力を高める仕組みとエビデンス
現代の研究から明らかになってきたプロバイオティクス(善玉菌)の免疫力向上効果について、最新の医学論文をもとに解説します。腸内細菌と免疫系の密接な関係を踏まえ、プロバイオティクスとは何か、その免疫増強のメカニズム、科学的エビデンス、摂取方法のポイント、そして実践的なアドバイスまでを網羅します。専門的な内容も含みますが、一般の方にも理解できるよう噛み砕いて説明していきます。
1. プロバイオティクスとは何か?
プロバイオティクスとは、「適切な量を摂取することで宿主(人間)に健康上の有益な効果をもたらす生きた微生物」のことです 1。簡単に言えば、体に良い働きをする細菌などのことで、ヨーグルトや乳酸菌飲料、発酵食品などに含まれています。プロバイオティクスの代表的な菌の属は乳酸桿菌(ラク酸菌、Lactobacillus)やビフィズス菌(Bifidobacterium)で、他にも腸球菌(Enterococcus)や酵母(Saccharomyces boulardii)など多様な微生物が利用されます 1。これらはもともと人の腸内や食品中に存在する菌種で、安全性が高く健康に役立つことが確認されています。
日常でプロバイオティクスを摂取する手段として最も身近なのが発酵食品です。例えばヨーグルトは牛乳を乳酸菌で発酵させた食品で、生きた乳酸菌(Lactobacillus bulgaricusやStreptococcus thermophilusなど)が含まれています。味噌や納豆、ぬか漬け、キムチ、ケフィアなどの発酵食品にも有益な微生物が含まれ、昔から健康に良いと言われてきました。ただし、商品によっては加熱処理により菌が死んでいる場合もあるため、「生きた菌が含まれている」ことを表示で確認することが重要です。
プロバイオティクスが注目される背景には、現代人の食生活や生活環境の変化で腸内フローラ(腸内細菌叢)の乱れが起こりやすいことがあります。腸内フローラとは腸内に生息する数百〜数千種類・100兆個以上の微生物の生態系のことで、善玉菌・悪玉菌・日和見菌のバランスが健康に大きく影響します。プロバイオティクスを摂ることで、この腸内フローラのバランスを善玉菌優位に整え、私たちの体に様々な有益な作用をもたらしてくれるのです。
2. プロバイオティクスが免疫力を高めるメカニズム
人の免疫システムの約7割は腸に集中していると言われます 2。腸は単に栄養を吸収する器官ではなく、腸内細菌と密接に連携して外敵から身体を守る「免疫の最前線」の場でもあります。では、プロバイオティクス(善玉菌)がどのように免疫力を高めるのでしょうか?主なメカニズムを順に見ていきます。

腸内フローラのバランス改善と腸管バリア強化
プロバイオティクスを摂取すると、腸内フローラのバランスが改善されます。善玉菌が増えることで悪玉菌の増殖が抑えられ、腸内環境が整います。腸の粘膜には粘液層と呼ばれる防御壁があり、その表面に分泌型IgA抗体や抗菌ペプチドが存在して病原菌の侵入を防いでいます 4。善玉菌はこの粘膜バリアの形成を助け、例えば有害な細菌が腸壁に付着・侵入するのを阻止したり、腸の上皮細胞を刺激して粘液やIgA抗体の産生を促進します。さらに、乳酸菌は乳酸を産生して腸内を弱酸性に保ち、病原菌が増えにくい環境を作ります。このように「腸の守り」を固めることが、免疫力向上の第一歩となります。
免疫細胞の活性化と調整
腸にはパイエル板などの腸関連リンパ組織があり、多数の免疫細胞(マクロファージ、樹状細胞、T細胞、B細胞、NK細胞など)が待機しています。プロバイオティクスは腸管内で免疫細胞と相互作用し、その働きを活性化・調整します。例えば、ある乳酸菌は樹状細胞やマクロファージといった「免疫の司令塔」に働きかけ、サイトカインという情報伝達物質の放出を促します。その結果、ナチュラルキラー(NK)細胞やキラーT細胞(細胞傷害性T細胞)などの攻撃型免疫細胞が活性化され、ウイルスに感染した細胞やがん細胞を排除する能力が高まります 5。実際に、乳酸菌シロタ株(L. casei strain Shirota、ヤクルト株)の摂取でNK細胞活性やウイルスに対抗するTh1型サイトカイン(インターフェロンIFN-γなど)の増加が観察されています 5。これはウイルス感染細胞の破壊が促進され、体内でのウイルス増殖が抑えられる可能性を示唆します。
一方でプロバイオティクスは、抗炎症や免疫の過剰反応を抑える作用も持ち合わせます。例えば一部の乳酸菌やビフィズス菌は、調節性T細胞(Treg)を増やして抗炎症サイトカインのIL-10を分泌させ、アレルギーや慢性炎症反応を和らげる働きがあります 6。このように善玉菌は免疫を「ただ高める」だけでなく、必要に応じてブレーキもかけながら、免疫バランスを整える役割を果たしています。
腸内細菌代謝産物による作用
さらに最近の研究では、腸内細菌が作り出す代謝産物が免疫に影響を与えることも分かってきました。例えば食物繊維をエサにビフィズス菌などが産生する短鎖脂肪酸(酪酸や酢酸など)は、腸粘膜のエネルギー源となってバリア機能を強化したり、全身の免疫調整に寄与することが知られています。また、明治R-1ヨーグルトの乳酸菌であるOLL1073R-1株は多糖体(EPS)を大量に産生する特徴があり、この菌由来のEPSが免疫細胞の受容体を刺激してインターロイキン12・18を介したIFN-γ産生を誘導し、結果としてNK細胞を活性化することが解明されています 7。このように、プロバイオティクスは菌体そのもの+菌が作る物質の両面から免疫系に作用し、防御力を高めているのです。
3. 科学的エビデンス
プロバイオティクスの免疫効果については、近年多くの研究や臨床試験が行われており、その有用性を裏付ける科学的エビデンスが蓄積されています。本節では、最新の研究結果や具体的なデータを紹介します。特に、日本で販売されている明治R-1ヨーグルトに関する公式データ・臨床試験結果も取り上げます。
プロバイオティクス摂取でNK細胞活性が向上
免疫力の指標の一つであるNK細胞活性について、多くの臨床試験が報告されています。NK細胞(ナチュラルキラー細胞)は先天的免疫の一部で、ウイルス感染細胞や腫瘍細胞を直接攻撃する重要な役割を担います。加齢やストレスでNK活性は低下しがちですが、プロバイオティクスの摂取がその機能を改善する可能性があります。実際、高齢者を対象とした6件のランダム化比較試験(RCT)をまとめた2020年のメタ分析では、プロバイオティクスを摂取したグループは摂取していないグループに比べて有意にNK細胞活性が高まることが確認されました 8。このメタ分析の結果、NK活性の効果量(SMD)は0.777と算出され、統計的有意差が示されています 8。つまり、プロバイオティクスは高齢者の自然免疫力(NK活性)を底上げするという科学的根拠があるのです。
さらに、日本発の具体例として明治プロビオヨーグルトR-1の研究成果に注目します。R-1ヨーグルトには先述したL. bulgaricus OLL1073R-1株が含まれますが、このヨーグルトを毎日摂取することで免疫力がどう変わるか検証されています。明治と地方自治体の共同研究では、70〜80代の高齢者57名(山形県)と60代以上の高齢者85名(佐賀県)に対し、R-1ヨーグルト90gを毎日摂取する群と牛乳100mLを摂取する対照群に分け、8〜12週間の介入試験を行いました。その結果、ヨーグルト群では加齢に伴い低下するT細胞の増殖能が有意に上昇し、さらに摂取前にNK活性が低かった人々でNK細胞活性が有意に向上しました 9。最も注目すべきは風邪の発症リスクへの影響で、ヨーグルト群は対照群(牛乳群)に比べて風邪をひく割合が顕著に低下しました。牛乳群の風邪リスクを1とすると、ヨーグルト群では山形で0.29、佐賀で0.44となり、両試験の統合解析では約0.39まで低下したのです 9。これは風邪をひくリスクがおよそ2.6倍低減したことを意味し、統計的にも有意な差が認められました(P=0.019) 10。加えて、ヨーグルト群では「目・鼻・喉の調子」といったQOL指標も改善し、その改善度合いがNK活性の向上と相関したとの報告があります 10。
要するに、明治R-1ヨーグルトの臨床試験からは「毎日乳酸菌1073R-1株入りヨーグルトを食べると、高齢者のNK細胞が元気になり風邪を引きにくくなる」というエビデンスが得られているのです。この成果はテレビやメディアでも紹介され、日本でR-1ヨーグルトが人気商品となった一因でもあります。
風邪・感染症予防効果のエビデンス
プロバイオティクスが風邪やインフルエンザなど呼吸器感染症の予防に有効かどうかは、多くの研究者が関心を寄せるテーマです。先述のR-1の研究は高齢者での風邪罹患低減を示しましたが、他の年齢層や状況でも類似の効果が報告されています。
例えば、米国で大学生を対象に行われた大規模試験では、試験期間中に風邪またはインフル症状を経験した割合がプラセボ群37%に対し、あるプロバイオティクス(ビフィドバクテリウム・ビフィダム株)摂取群では24%に減少しました 11。さらに、そのプロバイオティクスを摂取した学生は、万一風邪をひいても平均持続日数が1.8日に留まり、プラセボ群の2.4日より短かったと報告されています 11。このように特定の菌株では風邪の発症率を3割以上減らし、罹患しても症状期間を短縮するデータが得られています。
また、激しい運動を行うアスリートや兵士のような集団では免疫が一時的に低下しやすく、上気道感染症(風邪)が問題となります。イギリスの持久系アスリートを対象にしたある試験では、乳酸菌シロタ株を20週間摂取しても風邪症状の発症率自体は有意差が出なかったものの、摂取群で唾液中のIgA抗体レベルが高く維持され、潜在的なヘルペスウイルス(CMVやEBV)の抗体価が低下するといった免疫指標の改善が見られました 5。著者らは「LcS乳酸菌の継続摂取が粘膜免疫(唾液IgA)を維持し、NK細胞機能にも良い影響を及ぼした可能性がある」と述べています 5。このように、ハードな環境下でもプロバイオティクスが免疫防御力の低下を緩和することが示唆されています。
さらに視野を広げると、コロナ禍以降、ウイルス感染全般に対するプロバイオティクスの有用性にも注目が集まりました。2021年のメタ解析では、プロバイオティクスやプレバイオティクスの投与により動物実験でウイルス感染時の死亡率低下やウイルス量減少、サイトカイン分泌の調整など有益な結果が報告され、人を対象とした臨床試験(6件のRCT)でも症状スコアや感染率の低下傾向が示されたとしています 12(ただし臨床では有意差にわずかに届かず、更なる研究が必要とされています)。とはいえ、プロバイオティクスが呼吸器系のウイルス感染リスクを約20%減少させる(相対リスク0.80)との報告もあり 12、総合的に見れば「予防的なプロバイオティクス摂取は呼吸器感染症に対して一定の防御効果をもたらす可能性がある」と言えるでしょう。
アレルギー抑制などその他の効果
プロバイオティクスは免疫の質の改善にも寄与します。免疫力というと「高める」側面ばかりに目が行きますが、花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギーは免疫の過剰反応が原因です。善玉菌には免疫の暴走を抑え、過敏な反応を沈める作用も期待されています。
実際、通年性アレルギー性鼻炎の患者にビフィズス菌と乳酸菌の混合プロバイオティクス(商品名NVP-1703)を4週間投与した臨床試験では、鼻症状スコアが有意に改善し、患者のQOL評価である鼻炎コントロールテストもプラセボ群より良好という結果が得られました 6。血液検査ではアレルギー原因物質に対する特異的IgE抗体の上昇が抑えられ、抗炎症サイトカインであるIL-10が有意に増加していたことから 6、プロバイオティクスが抗炎症・免疫寛容を促す方向に働いたと考えられます。つまり、花粉症や鼻炎などのアレルギー症状緩和にもプロバイオティクスは役立つ可能性が示唆されているのです。
さらに乳幼児のアレルギー予防の文脈では、妊婦や乳児に乳酸菌を投与する研究も行われています。結果は菌種やタイミングによってまちまちですが、例えばビフィズス菌を含むプロバイオティクスを摂取した母親から生まれた子供はアトピー性皮膚炎の発症率が低かったという報告もあります。一方で一貫しない結果もあるため、現時点では「アレルギー予防にプロバイオティクスが有効」と断言するには至りませんが、腸内環境を整えることが免疫調整に寄与する可能性は十分に考えられます。
以上のように、プロバイオティクスの免疫効果については、風邪やインフルエンザなど感染症予防、NK細胞活性の向上、粘膜免疫の維持、アレルギー炎症の抑制など、多角的なエビデンスが積み上がっています。特に日本では明治R-1ヨーグルトやヤクルト製品など具体的な商品を用いた研究が進んでおり、それらの公式データも免疫力向上効果を裏付けています 9,10。もちろん全ての研究で完璧な効果が出ているわけではありませんが、総合的には「適切なプロバイオティクス摂取は免疫の働きをサポートする」と科学的に評価できる段階に来ています。
4. プロバイオティクスの摂取方法と注意点
プロバイオティクスの恩恵を受けるには、日々の生活にうまく取り入れることが大切です。ここでは、具体的な摂取方法や商品選びのポイント、そして安全面での注意事項について説明します。
ヨーグルトなど食品から摂る場合
ヨーグルトは手軽で美味しいプロバイオティクス食品です。ただし、商品によって含まれる菌の種類や量、製造後に菌が生きているかが異なるため、選び方に留意しましょう。ポイントは以下の通りです:
- 「生きた菌」が入ったものを選ぶ: ヨーグルトや乳酸菌飲料の中には加熱殺菌処理されているものもあります。「乳酸菌○○株使用」などと書かれていても、加熱済みでは菌は死んでいます。成分表示に「殺菌○○乳酸菌」と書かれていないか、パッケージに「プロバイオティクス」「生きて腸まで届く」などの記載があるか確認しましょう。例えば明治R-1ヨーグルトやヤクルトは生きた菌が含まれています。
- 含まれる菌種や株を確認: プロバイオティクス効果は菌の種類(株)によって異なります。商品によって乳酸菌○○株、ビフィズス菌△△株など特徴が示されています。研究で効果が報告されている株(L. caseiシロタ株、L. bulgaricus OLL1073R-1株、L. rhamnosus GG株、B. lactis BB-12 など)を含む製品は信頼性が高いと言えます。明治R-1はOLL1073R-1株、ヤクルトはL. casei Shirota株、森永のビヒダスヨーグルトはB. longum BB536株など、各社こだわりの菌があります。
- 余分な添加物や砂糖に注意: プロバイオティクスそのものとは関係ありませんが、健康のためにはできるだけ砂糖の少ないヨーグルトを選ぶと良いでしょう。加糖タイプは美味しい反面、糖分の過剰摂取につながります。無糖ヨーグルトに果物を入れるなど、自分で甘さを調節するのもおすすめです。
- 継続して摂取する: 善玉菌は腸内に定着し続けるわけではなく、摂らなくなると数週間で効果が薄れる場合があります。免疫力向上の効果を得るには、できれば毎日継続的にプロバイオティクス食品を摂ることが大事です。先述のR-1やヤクルトの試験でも「毎日摂取」が前提でした。
プロバイオティクスサプリメント・医薬品の利用
近年はサプリメント(錠剤やカプセル)でもプロバイオティクスが手に入ります。特定の菌株を高濃度に含む製品や、複数の菌をブレンドしたもの、乳酸菌生産物質(発酵上清)を含むものなど種類も様々です。サプリの利点は、食品由来では摂りにくい高用量の菌が摂取でき、保存もしやすい点です。ただし注意点もあります:
- 効果の確立度: サプリは医薬品ではないため、臨床試験データが十分でないものもあります。「◯◯に効く」と謳っていても裏付けが弱い場合もあるので、信頼できるメーカーや論文発表の有無を確認すると安心です。自社で臨床試験を行って結果を公開しているブランド(例えば森下仁丹のビフィーナ等)もあります。
- 菌が生きて届く工夫: 胃酸や胆汁で多くの菌は死滅してしまいます。サプリでは胃で溶けず腸で放出されるカプセルを使ったり、耐酸性の菌を採用するなどの工夫があります。こうしたドラッグデリバリー技術がしっかりしている商品を選びましょう。
- 保存と賞味期限: 生きた菌なので、直射日光や高温は避け、パッケージの指示通り保存します。開封後は湿気に注意し、早めに使い切るのが望ましいです。湿度で錠剤内の菌が活性化してしまうと効果が落ちる可能性があります。
- 医薬品との相互作用: プロバイオティクスサプリ自体は安全性が高いですが、まれに他のサプリメントや薬との相互作用に留意が必要な場合があります。免疫抑制剤を飲んでいる人などは主治医に相談すると安心です。また抗生物質を服用中は腸内の菌が大きく乱れるため、プロバイオティクスサプリで補うと下痢予防に有効との報告もあります。ただし抗生物質と同時に飲むと菌も殺されてしまうので、タイミングをずらすなど工夫しましょう。
過剰摂取のリスクと副作用
「体に良いから」と言ってプロバイオティクスを過剰に摂りすぎるのはおすすめできません。一般的にプロバイオティクスは安全ですが、考えられるリスクや副作用を挙げます:
- 胃腸の不調: 一度に大量の乳酸菌やビフィズス菌を摂取すると、腸がびっくりしてガスがたまったり腹部膨満、軽い下痢などが起こることがあります。特に食物繊維をエサに菌が活発に発酵するとガス産生が増えるためです。少量から慣らす、こまめに水分をとるなどで緩和できます。
- 感染症のリスク(まれ): ごく稀ですが、重篤な副作用として菌血症や敗血症が報告されたケースがあります 13。これは主に免疫力が極端に低下した患者(白血病や臓器移植後の免疫抑制状態、新生児集中治療室の未熟児など)で、投与した乳酸菌や酵母が血液中に侵入し感染症を起こした例です 13。健康な人では通常起こりませんが、免疫不全の方は主治医と相談の上で慎重にプロバイオティクスを使用する必要があります。例えば中心静脈カテーテルを挿入中の重症患者にサッカロマイセス酵母を投与したところ、カテーテルから酵母が血中に入り真菌血症を起こした例などがあります。そのため、国によっては「重篤な疾患患者にはプロバイオティクス使用注意」の勧告が出ている場合もあります 13。
- 遺伝子への影響: プロバイオティクス自体ではありませんが、腸内細菌同士で耐性菌遺伝子のやりとり(遺伝子水平伝播)が起こる可能性が指摘されています。現状、サプリ由来の菌が耐性菌になるリスクは極めて低いと考えられていますが、将来的な課題としてモニタリングが必要とされています。
- その他: 一部の菌株はヒスタミンを産生するものもあり、大量摂取でごく軽い蕁麻疹様症状を起こした例が報告されています。ただ通常の食品レベルでは問題になることはほぼありません。また「○○アレルギー用のプロバイオティクスサプリ」と称する商品でも、基材にアレルゲン(乳成分や大豆など)が含まれる場合もあるので、食物アレルギーがある方は成分表示を確認しましょう。
総じて、プロバイオティクスは非常に安全性の高い介入策ですが、「過ぎたるは及ばざるが如し」で適量の摂取を心がけ、自身の体調に注意を払いましょう。何か不調を感じたら一旦中止し、必要なら専門家に相談することも大切です。
5. 結論と実践的なアドバイス
結論として、現代の科学的知見は「プロバイオティクスの継続摂取が免疫機能をサポートし、感染症リスクの低減や免疫バランスの調整に有用である」ことを示唆しています。腸内細菌と免疫の関係はますます解明が進んでおり、プロバイオティクスを上手に活用することで日々の健康維持・増進につなげることが可能です。ただし、効果は菌の種類や個人の体質によって異なるため、科学的根拠に基づきつつ自分に合った方法で取り入れることが重要です。
どんな人にプロバイオティクスがおすすめか?
基本的には老若男女、ほとんどの方に有益と言えますが、特に以下のような方には積極的な摂取をおすすめします。
- 免疫力を高めたい人: 風邪をひきやすい、疲れがたまるとすぐ体調を崩すといった方は、腸内環境の改善が有効かもしれません。先述のように高齢者では風邪予防効果が確認されています 9。また季節の変わり目や冬場の感染症流行期に備えて摂るのも一手です。
- ストレスや運動で体調管理が必要な人: 仕事や勉強のストレスが多い方、アスリートや受験生など体調管理が求められる方にも有用です。研究で、試験期の学生でプロバイオティクス摂取群がより健康に過ごせたという報告 11や、アスリートの粘膜免疫維持の例 5がありました。
- アレルギー体質の人: 花粉症やアトピーの症状緩和を目的に試してみる価値があります。全員に効果が出るわけではありませんが、ある乳酸菌で鼻炎症状が改善したデータ 6もあるため、薬に加える補完的アプローチとして期待できます。
- 腸の調子を整えたい人: 便秘や下痢をしやすいなど腸内環境の乱れを感じている方にも、腸の善玉菌を増やすプロバイオティクスは役立ちます。免疫以外にも消化吸収の改善や整腸作用が得られ、一石二鳥です。
逆に、免疫抑制剤を使用中の人や重篤な疾患で医師の管理下にある人、新生児などは、念のためプロバイオティクス使用について医療者に相談しましょう。一般の健康な人では問題ありませんが、安全第一です。
継続的に摂取するためのポイント
「無理なく日常に組み込む」ことが鍵です。具体的には:
- 好きなヨーグルトや乳酸菌飲料を見つけて毎日の習慣にする(朝食やおやつに摂るなど)。
- 食事に発酵食品を1品加える(納豆、キムチ、味噌汁、ぬか漬け等をローテーションする)。
- サプリメントを利用する場合は、飲み忘れない時間帯(例えば就寝前や朝食後)を決めておく。
- 効果を実感するには数週間〜数ヶ月単位で見て、季節ごとの体調変化や便通などを記録してみる。
プロバイオティクスは「薬」ではなく日々の健康を底上げするパートナーのような存在です。即効性の劇的な効果を期待するものではありませんが、継続することで体質改善や未病対策につながる可能性があります。ぜひ最新の科学的根拠も参考に、自分に合った形でプロバイオティクスを取り入れてみてください。腸を味方につけて、免疫力アップと健やかな毎日を手に入れましょう。
参考文献
- Probiotics: Mixed messages. PMC. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1479485/
- The Interplay between the Gut Microbiome and the Immune System in the Context of Infectious Diseases throughout Life and the Role of Nutrition in Optimizing Treatment Strategies. PMC. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8001875/
- File:20101212 200110 LactobacillusAcidophilus.jpg. Wikimedia Commons. Available from: https://commons.wikimedia.org/wiki/File:20101212_200110_LactobacillusAcidophilus.jpg
- Beneficial effects of probiotics on the Immune System. Florastor. Available from: https://www.florastor.ca/en/experts-advice/beneficial-effects-of-probiotics-on-the-immune-system.html
- Effects of Lactobacillus casei Shirota ingestion on common cold infection and herpes virus antibodies in endurance athletes: a placebo-controlled, randomized trial. PMC. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4943997/
- Probiotic NVP-1703 Alleviates Allergic Rhinitis by Inducing IL-10 Expression: A Four-week Clinical Trial. PMC. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7284371/
- Enhanced natural killer cell activation by exopolysaccharides derived from yogurt fermented with Lactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricus OLL1073R-1. PubMed. Available from: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26686726/
- Effects of probiotic supplementation on natural killer cell function in healthy elderly individuals: a meta-analysis of randomized controlled trials. PMC. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7279433/
- 乳酸菌1073R-1株の効果. 明治ヨーグルトライブラリー. Available from: https://www.meiji.co.jp/yogurtlibrary/laboratory/report/1073r1/03/01/
- Reducing the risk of infection in the elderly by dietary intake of yoghurt fermented with Lactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricus OLL1073R-1. PubMed. Available from: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20487575/
- Bifidobacterium Strain Helps Reduce Colds. Optibac Probiotics. Available from: https://www.optibacprobiotics.com/professionals/latest-research/general-health/bifidobacterium-bifidum-rosell-71-reduces-colds
- A meta-analysis reveals the effectiveness of probiotics and prebiotics against respiratory viral infection. PMC. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7955103/
- Probiotics: Should All Patients Take Them? PMC. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8706842/