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2025年のインフルエンザは例年より約2ヶ月早く流行が始まり、専門家からは「過去10年間で最大規模の流行になる可能性」が指摘されています。11月の時点で全国的な警報レベルに突入しており、今シーズンは全国各地で平年を大きく上回るスピードで感染が拡大しています。
流行の早さと地域別の広がり傾向
2025年のインフルエンザは例年より約2ヶ月も早く流行が始まりました。専門家からは「過去10年間で最大規模の流行になる可能性」が指摘されるほど異例の状況です[1]。厚生労働省の発表によれば、11月中旬(第46週)のインフルエンザ定点当たり報告数(※定点=指定医療機関1施設あたりの週間患者数)は全国平均で37.73人に達し、前週の約1.7倍という急増を示しました[2]。通常は12月下旬から1月にかけて本格的な流行期を迎えますが、今シーズンは11月の時点ですでに全国的な警報レベルに突入しています。

地域別に見ると、11月第46週時点で宮城県(80.02人)、埼玉県(70.01人)をはじめ、東北地方や関東地方を中心に非常に高い患者報告数が観測されています[3]。実際、東京都では11月にインフルエンザ警報が16年ぶりに発表されるなど、年末を待たず多くの地域で警報基準(※定点あたり30人)を超えました[4]。その後も流行拡大は続き、第47週(11月17~23日)には全国平均51.12人に達し、さらに多くの県で警報基準超えとなっています[5]。特に宮城県は約89人と突出した値を示しました[5]。

インフルエンザ患者の急増に伴い、学校では休校250校、学年閉鎖2,244件、学級閉鎖6,323件(第47週)と集団感染対策も相次いで取られています[5]。つまり今シーズンは、全国各地で平年を大きく上回るスピードで感染が拡大しているのが特徴です。

全国約5,000か所の定点医療機関から報告された患者数を医療機関1施設あたりに換算した数値。流行の指標として用いられ、1.0を超えると流行開始、30を超えると警報レベルとされています。
流行しているウイルスの型:A香港型(H3N2)と新変異株「サブクレードK」
今シーズン流行の中心となっているのはインフルエンザA型(H3N2亜型)、いわゆる「香港型」と呼ばれる株です。国立感染症研究所の調査では、直近の5週間(2025年第42~46週)に検出されたインフルエンザウイルスの約86%がA型H3N2で占められており、残りがA型H1N1pdm09(約11%)とB型(約3%)という状況でした[6]。つまり流行の8~9割がA香港型であり、B型インフルエンザや2009年の新型由来のA(H1N1)pdm09は少数派となっています(B型は今のところビクトリア系統が検出されており、山形系統の復活は確認されていません)。

新変異株「サブクレードK」の出現
特に注目すべきは、A(H3N2)の新しい変異株「サブクレードK」の存在です。東京大学医科学研究所・河岡教授の解析によれば、医療機関から提供されたH3N2ウイルス41検体中40検体で「サブクレードK」に分類される変異株が検出されています[7]。サブクレードKとはH3N2の亜系統の一つで、ウイルス表面の抗原(ヘマグルチニン=H)遺伝子に変異が生じた新系統です[8]。具体的にはヘマグルチニンに7つの変異が起こり、現在ワクチンに採用されている株(同じH3N2でもサブクレードJ2系統)とは異なる系統へ進化しています[8]。

そのため、昨シーズンまでの感染や今季のワクチンで獲得した免疫では十分に防ぎきれず、ウイルスが免疫をすり抜けて感染を広げやすい状況にあると考えられています[8]。この現象は「抗原ドリフト」(ウイルスが人の免疫を逃れるように少しずつ形を変えること)と呼ばれ、サブクレードKはまさに抗原ドリフトによって生まれたウイルスと言えます[9]。

サブクレードKの出現は国内外で大きな影響を及ぼしています。南半球のオーストラリアで記録的流行を起こしたH3N2株の系統を継ぐウイルスとされ、英国でもこのK亜系統が主流となり2003~2004年以来の大流行を招いたと報告されています[10]。

日本でも秋以降の患者の大半がA(H3N2)型で、その中からこのK亜系統の検出が確認されており、今季の流行を加速させる一因になったと考えられます[10]。もっとも、変異株だからといって特別に重い症状を起こすわけではなく、症状自体は従来のインフルエンザと同様です(後述)。しかし「今までの免疫が効きにくく感染者が増えやすい」「流行開始が早まりワクチン未接種者が多い時期に広がった」「ウイルス自体の広がりやすさも高い可能性がある」など複合的要因で10年に一度規模の大流行につながる恐れがあると指摘されています[11][12]。
症状の特徴と重症度・入院率の傾向
インフルエンザの症状は例年通り、突然の高熱(38℃以上)や咳、喉の痛み、全身の倦怠感、関節痛・筋肉痛が主なものです。いわゆる「かぜ(普通感冒)」よりも急激かつ高熱になりやすい点が特徴で、特にA香港型は高熱と強い全身症状を伴いやすい傾向があります。また、小児では時に嘔吐や下痢など消化器症状を伴うこともあります。高齢者では典型的な発熱が目立たず、「何となく元気がない」「食欲が落ちた」といった形で症状が現れる場合もあり注意が必要です。
入院患者の急増
重症度や入院の傾向については、今シーズンは患者数の急増に伴い入院症例も急激に増加しています。国の定点病院報告によれば、第46週(11月中旬)には全国で1,466人がインフルエンザによる入院を報告しており、前週(888人)から大幅に増加しました[13]。特に入院患者の年齢層は両極端で、5~9歳の小児(282例)や1~4歳の小児(292例)が多い一方、80歳以上の高齢者(281例)や70代(188例)も非常に多くを占めています[13]。
インフルエンザの重症化リスクが小さな子どもと高齢者で高いことが、入院患者データからも明確に示されています。特にインフルエンザA(H3N2)亜型はA(H1N1)亜型に比べ高齢者が重症化しやすいことが知られており、過去の流行でもH3N2優勢の年は高齢者の入院・死亡が多い傾向があります[14]。
今年はまさにH3N2優勢であるため、高齢者のインフルエンザ肺炎や二次感染による細菌性肺炎が増加する懸念があります[15]。小児についても、インフルエンザ脳症などの重い合併症は稀ながら発生する可能性があるため注意が必要です。
現時点で聞かれている症状の特徴自体に新たな変化は報告されていません。つまり、サブクレードKだからといって特有の症状が出現するわけではなく、通常のインフルエンザと同様の症状です。ただし患者数が多いため重症化する人の絶対数も増える点には留意が必要です。高齢者ではインフルエンザ発症後に肺炎を併発するリスクが高まります。インフルエンザウイルスそのものが肺炎を起こす場合もありますが、多くはウイルスで弱った呼吸器に細菌(二次感染)が重なって起こる肺炎です[15]。インフルエンザ罹患後、一旦熱が下がっても再度高熱や痰の悪化が見られたら肺炎の可能性があります。小児や高齢者で発症した場合、家族や周囲も「その後肺炎などを起こしていないか」注意深く見守り、様子がおかしければ早めに医療機関を受診することが大切です。
ワクチンの有効性・接種状況と推奨対象者
インフルエンザワクチンは今シーズンもA型2株(H1N1pdm09とH3N2)、B型2株(ビクトリア系統と山形系統)の計4価が供給されています。今季のワクチン株(H3N2)は上述の通りサブクレードJ2系統で、流行中のサブクレードKとは系統が異なるため抗原性(ウイルスの「型」)がずれています[9]。この「型のずれ」によりワクチンの効果低下が懸念されましたが、決して効果がゼロになるわけではありません[16]。

英国の初期データでは、新変異株Kに対して今季ワクチン接種をした場合、小児で約70~75%の発熱外来受診予防効果、成人でも30~40%程度の発症予防効果が示されています[17]。これは例年シーズン終盤に得られるワクチン効果と同程度であり、「多少のズレ」があってもワクチンは一定の予防効果を発揮していることを意味します[17]。特に重症化予防という観点ではワクチン接種が依然として重要です。専門家も「たとえ感染予防効果が低下しても、重症化リスクを減らす最善策はワクチン」と強調しており[18]、今シーズンの変異株出現によって「ワクチンが効かないのでは?」と広がった不安に対し、正しい理解が呼びかけられています。
接種状況と推奨対象者
現在、日本ではインフルエンザワクチンは毎年10月頃から接種開始となります。今年は供給量も十分確保されており(約5,293万回分の見込み[19])、厚労省は流行期に入る12月中旬までに接種を済ませるよう推奨しています[20]。接種対象は生後6か月以上の希望者すべてですが、特に重症化リスクの高い以下の人々は優先的に接種が推奨されます:

| 対象者 | 推奨理由 |
|---|---|
| 65歳以上の高齢者 | 定期接種の対象。加齢に伴い肺炎など合併症リスクが高いため公費助成の制度もあります[18] |
| 心臓病・肺疾患・糖尿病などの基礎疾患がある人 | 持病悪化や合併症予防のため重要です[21] |
| 妊婦 | 妊娠中でも不活化ワクチンは安全とされています。妊娠後期ほどインフルエンザで重症化しやすく、胎児を守るためにも推奨されます |
| 小児(特に乳幼児や持病のある子) | インフルエンザ脳症等の予防のほか、小児への接種は周囲全体の流行抑制にも繋がります[18] |
| 医療従事者や高齢者施設職員 | 自分が媒介となって患者・入所者に感染させるリスクを減らすため、職業上強く推奨されます |
今年は流行開始が早く、「ワクチンを打つ前に感染してしまった」という声も聞かれます[22]。たとえ一度インフルエンザにかかった後でも、シーズン後半に別の型(例えば今後A(H1N1)やB型が流行する可能性)に備えて、シーズン中のワクチン接種完了が勧められています[23]。
インフルエンザウイルスは毎年微妙に姿を変える(抗原ドリフトする)ため、昨年のワクチンや過去の感染で得た免疫が十分効かない可能性があります[9]。そのため流行株に合わせて毎年ワクチンが作られ、毎年の接種が推奨されているのです。特に高齢者施設では接種率を上げることで発病率を34~55%減少させ、死亡率を約82%低下させたというデータもあり[24]、自分自身のためだけでなく社会全体の重症者・死亡者を減らす観点からもワクチンは重要と言えます。
抗インフルエンザ薬(タミフル等)の有効性と使用状況
日本ではインフルエンザと診断されれば抗インフルエンザウイルス薬が投与されるケースが非常に多く、実は世界で最も抗インフル薬を使用している国でもあります[25]。現在国内で使用できる抗インフル薬は大きく5種類あります[26]:

📋 抗インフルエンザ薬の詳細(クリックして展開)
| 薬剤名(商品名) | 投与法 | 対象年齢 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| オセルタミビル(タミフル) | 経口(カプセル・ドライシロップ) | 生後2週から全年齢 | もっとも使用実績が多い標準薬[27]。発症後48時間以内に服用開始すると症状持続期間を約1日短縮できる[28] |
| ザナミビル(リレンザ) | 吸入(専用ディスク式) | 7歳以上 | 吸入により気道局所で作用するため全身副作用が少なく耐性も出にくい[29](喘息など呼吸器疾患のある人は注意) |
| ラニナミビル(イナビル) | 吸入(ドライパウダー) | 10歳以上 | 1回の吸入で治療完結する長時間型薬[30]。服薬ミスが少ない反面、吸入手技が不十分だと効果も十分得られないことがある |
| ペラミビル(ラピアクタ) | 点滴静脈注射 | 全年齢 | 重症例や経口摂取困難な患者に。1回の点滴投与で血中有効濃度を維持[31]。入院患者や高齢者などに適する |
| バロキサビル マルボキシル(ゾフルーザ) | 経口(錠剤・顆粒) | 12歳以上 | 1回の服用で治療が完結する新しいタイプ[32]。ただしウイルスの耐性株出現が報告されており慎重な使用が推奨[33]。日本感染症学会のガイドラインでも「第一選択としてroutineに用いることは推奨しない」と明記[34] |
これらの薬剤のうち、タミフル・リレンザ・イナビル・ラピアクタはノイラミニダーゼ阻害薬と呼ばれ、ゾフルーザはエンドヌクレアーゼ阻害薬という作用機序を持ちます[26]。いずれもインフルエンザウイルスの増殖を抑える薬ですが、使用方法や対象年齢が異なるため、患者の年齢・症状・背景に応じて使い分けられています。
抗インフルエンザ薬の有効性
抗インフルエンザ薬の有効性としては、発症から48時間以内の早期投与でウイルス増殖を抑え、発熱期間を短縮したり症状の重症化を防いだりする効果が期待できます[28][35]。日本小児科学会の指針でも、抗インフル薬の早期投与により重症化予防効果が示されていることから、乳幼児や基礎疾患のあるハイリスク患者、咳が強く呼吸器症状の重い患者には投与が推奨されています[36]。発症後48時間を過ぎても、重症化リスクが高く症状が長引く場合には投与を検討するとされています[37]。
一方で、基礎疾患のない比較的元気な患者ではインフルエンザは多くが自然軽快する疾患でもあり「必ずしも抗ウイルス薬の投与が全員に必須ではない」ことも同時に示されています[38]。つまり、症状やリスクに応じて医師が判断するというスタンスです。
使用状況と耐性監視
使用状況については、今シーズンの大流行に備え国も供給状況をモニターしています。厚労省の発表では、10月末~11月末の約1か月間で約374万人分の抗インフルエンザ薬が医療機関や薬局に出荷されたとのことです[39]。日本は先述のように抗インフル薬の使用が多い分、耐性ウイルスの監視体制も整えられており[25]、国立感染症研究所と地方衛生研究所が連携して定期的に耐性株サーベイランスが実施されています[40]。幸い現時点でサブクレードKに関する抗インフル薬耐性の大きな問題は報告されていません。標準的なオセルタミビル(タミフル)などは引き続き有効と考えられ、医療機関では検査でインフルエンザと確定した患者に積極的に抗インフル薬を処方しています。
特に受験生や仕事を休めない人などでは、家族内で感染者が出た場合に予防投与(発症を防ぐ目的で健康な家族が抗インフル薬を内服する)を希望されるケースもあります。これは保険適用外(自費)ですが、「どうしても感染を避けたい重要な予定がある」「同居家族が感染しており自分も高リスク」といった場合に医師が判断して処方することがあります[41]。予防内服には毎日薬を服用する必要があり注意点もありますが、適切な抗ウイルス薬の活用は感染拡大防止や重症化予防に有用です。
今からできる具体的な感染対策
最後に、インフルエンザの感染予防対策について、今日から実践できる具体的なポイントをまとめます。基本的には新型コロナ流行下で学んだ「感染症対策の基本」がそのまま有効です。厚生労働省も「手洗いや適切なマスク着用など基本的な感染対策の徹底」を呼びかけています[42]。

| 対策 | 具体的な方法 |
|---|---|
| 石けんと水による手洗い | 外出先から戻った時や咳・くしゃみを手で押さえた後、食事前などは20秒以上かけて丁寧に手を洗う[43]。手洗いがすぐできない場合はアルコール消毒液で手指を清潔に |
| マスクの着用と咳エチケット | 人混みや公共交通機関では不織布マスクの着用が効果的。自分が咳やくしゃみ症状のある時は周囲への感染拡散を防ぐため必ずマスクを着用[43] |
| 適切な換気 | 室内の定期的な換気が重要。寒冷時期でも1時間に数回、窓を数分間全開にするか換気扇・換気設備を活用[44]。室内の湿度を50~60%程度に保つと粘膜の防御機能維持に役立つ |
| 人混みを避ける・距離をとる | 流行期には繁華街やイベントなど多数が集まる場所への不要不急の訪問は控えめに。人と人の距離をとる工夫(座席間隔を空ける、会議はオンライン併用)が有効 |
| 日々の健康管理 | 十分な睡眠とバランスの良い食事を心がけ、体調を万全に整える[45]。適切な水分補給で喉の粘膜を潤すことも防御に有効[46] |
| 体調不良時は無理をしない | 発熱や咳などインフルエンザ様の症状が出現したら、学校や職場を休んで早めに医療機関を受診[47]。解熱後も一定期間はマスク着用や外出控えを続ける |
以上のような基本的な対策の積み重ねが、新型変異株による流行拡大を抑える上で何より重要です[48]。インフルエンザは決して特別な病気ではなく、「手洗い・換気・マスク・ワクチン」というオーソドックスな予防策の徹底が最大の防御策となります[43]。すでに流行が広がっている今こそ、一人ひとりが出来る対策を見直し実践することが求められています。
高校生の皆さんも、自分と周囲の大切な人を守るために、ぜひ今日から基本の予防策を心がけてください。私たち一人ひとりの心がけが、この冬のインフルエンザから社会全体を守る力になります。
