
日本で使えるAI問診ツール最新比較(2025年12月時点)
📑 目次
はじめに:いま「AI問診」を比較する意味
外来の逼迫、人手不足、患者数の増加、そして医療DXの加速により、「診察前に情報を揃える」ことの価値が一段と上がっています。特に問診は、①患者の状況把握、②緊急度の見立て、③診療録作成(下書き含む)、④多職種連携の起点、という役割があり、ここを効率化できると診療全体が整います。
一方で「AI問診」と一口に言っても実態は幅広く、医療機関向け(診療前の情報収集・カルテ下書き)と、生活者向け(受診科・緊急度の目安提示)では目的もリスクも違います。本稿では、2025年12月16日時点で確認できる公開情報をもとに、日本で利用しやすいAI問診系ツールを整理し、導入検討に使える比較観点を提示します。
AI問診と「Web問診」の違い
実務上の差はシンプルで、主に次の違いとして現れます。
Web問診(ルール・分岐中心):あらかじめ作った設問セットを、診療科や条件で出し分ける
AI問診(動的深掘り・整形):主訴や回答内容に応じて質問が追加・変化し、結果を医療者が使いやすい形(文章化、構造化、カルテ下書き等)に寄せる
ただし、製品によって「AI」の範囲(深掘り質問、文章化、鑑別提示、生成AIなど)は異なるため、"何が自動化されるのか(質問生成? 要約? 鑑別?)"を分解して評価するのが安全です。
比較表:日本で使える主要AI問診系ツール(要点)
※下表は各社の公開情報・ストア掲載情報・報道をもとに筆者が整理したものです。仕様や料金は改定されうるため、最終判断は各社資料で確認してください。
| 区分 | ツール(提供) | 何が"AI"か | 連携・運用の特徴 | 向く現場 |
|---|---|---|---|---|
| 医療機関向け | ユビーAI問診(Ubie) | 患者回答に応じた最適質問、問診内容の文章化・病名辞書等を活用した診療前整理 | 全国47都道府県・1,800以上の医療機関導入(2024年10月時点)[1] | 外来量が多い、診療科が幅広い、受付〜診察の流れを整えたい |
| 医療機関向け | 今日の問診票(プレシジョン) | AI問診+電子教科書(CDS)で所見・鑑別・治療情報等を参照しやすく、カルテ下書き支援 | 導入実績500+→700+の記載あり[5][7] | 初診カルテ負担が大きい、総合内科/救急寄り、標準化したい |
| 医療機関向け | HOPE 今日の問診票 with CDS(富士通) | 上記「今日の問診票」を富士通電子カルテと連携し、患者取り違え予防や参照導線を強化 | 電子カルテ連携(属性連携、起動導線、コピー等)を具体化。「医療機器ではない」と明記[4] | HOPE環境での導入を検討、連携品質を重視 |
| 生成AI型 | 問診生成AI(大阪国際がんセンター等) | 自宅で対話型(音声)入力→院内プラットフォーム集約、多職種が同一画面参照 | 実運用で業務負担25%軽減を確認[12] | がん領域など継続フォロー、症状経過収集 |
| 生活者向け | 医療AIパートナー「ユビー」(Ubie) | 継続対話で状況を理解・記憶し、受診前〜受診後の疑問を支援 | 症状検索「ユビー」は月間1,300万人規模(2025年7月時点)[2] | 患者の"受診前準備"や情報整理を促したい |
| 生活者向け | メルプAI受診相談(メルプ) | 1分程度の問診で「診療科と緊急度」を表示[13] | かかりつけ連携(メルプWEB問診対応施設)と併用設計 | 受診科選択に迷う層への導線づくり |
| 生活者向け(海外) | Ada(症状チェッカー) | 質問に回答→AIが評価レポート提示[14] | 日本から入手・利用可能(ストア) | 海外患者・英語圏患者の補助、一般的セルフチェック |
個別レビュー① ユビーAI問診(Ubie):導入規模と実装の「現場感」が強い
公開情報では、ユビーAI問診は紙問診の置き換えにとどまらず、問診内容の文章化や病名辞書等を活用し、医師の記載負担を減らす設計が示されています[3]。
導入実績は、2024年10月時点で全国47都道府県・1,800以上の医療機関と明記されています[3]。規模感として「標準化された運用パッケージとして回っている」可能性が高く、初めてAI問診を入れる施設にとっては安心材料になり得ます。
セキュリティ面では、閉域網VPNでの提供事例(情報セキュリティ課題への対応の文脈)もあり、病院側のネットワーク要件が厳しい場合の検討材料になります[11]。
強み:外来フロー(受付→診察)に乗せやすい、導入実績が大きい
事前に詰めるべき点:電子カルテ反映方法、端末運用(院内iPad/患者スマホ)、救急・発熱など"例外動線"
個別レビュー② 今日の問診票(プレシジョン):AI問診+「参照できる医学知識」を前面に
今日の問診票は、導入実績ページで全国500以上の病院/医療機関で導入と記載されています[5]。また別の公開情報(プレスリリース)では、全国700以上の医療機関に提供という記載もあり、普及が進んでいることが示唆されます(時点差の可能性あり)[7]。
特徴として重要なのは、問診結果そのものに加え、電子教科書(CDS)を参照しながら鑑別や治療情報にアクセスしやすいという思想です。富士通の製品説明では、AI問診結果から症状・所見・鑑別診断・治療方法などの電子教科書を1画面表示し、初診カルテ作成工数削減をうたっています[4]。
料金は、公式に基本料金+初期導入費用+iPad等機器代+オプション費用という構造が明示されています(具体金額は要問い合わせ)[6]。
強み:初診の標準化、専門外領域の"確認漏れ"抑制に効きやすい設計
注意:鑑別提示をどう扱うか(あくまで参考か、誰が最終判断するか)を院内ルール化しないと混乱する
個別レビュー③ HOPE 今日の問診票 with CDS(富士通):連携品質を重視するなら候補
富士通のページでは、プレシジョンの「今日の問診票」と富士通電子カルテの連携により、問診入力時の患者取り違え予防や、電子カルテ上から問診結果・電子教科書にアクセスしやすくする導線が説明されています[4]。また、オンプレミス稼働や柔軟なカスタマイズにも言及があります[4]。
加えて、同ページに「本製品は医療機器ではありません」と明記されており、薬機法上の位置づけ(少なくとも当該製品説明上の立て付け)を確認するうえで重要です[4]。
HOPE環境の施設では、単体導入より"つなぎ込みの完成度"がメリットになりやすい
逆に、HOPE以外が中心の施設では、連携方式・コスト・運用負担の見極めが必要
生成AI型の新潮流:問診"生成"へ(ただし一般導入とは別問題)
大阪国際がんセンター等での報道では、患者が初診前に自宅で対話型の「問診生成AI」と会話しながら音声入力し、院内プラットフォームに集約、多職種が同一画面で参照できる仕組みが紹介されています。さらに業務負担を従来比25%軽減したと報じられています[12]。
ここは今後の方向性(患者の生活の場で情報が集まり、院内で共有される)として重要ですが、現時点では「製品として一般提供され、どの施設でも同じ条件で導入できる」話とは限りません。導入検討では、対象診療科、入力手段(音声/テキスト)、院内データ連携基盤、監査ログ、説明責任まで含めて要件化が必要です。
生活者向けAI問診(受診相談・症状チェッカー)は、医療機関の"前工程"になり得る
医療AIパートナー「ユビー」
Ubieは2025年9月に、医療AIパートナー「ユビー」の提供開始を発表しています。症状検索「ユビー」等での知見をもとに開発され、β版テスト指標(受診決意66.3%、症状伝達の参考95.2%など)も公開されています[1]。
また、症状検索エンジン「ユビー」は2025年7月時点で月間1,300万人以上が利用と明記されています[2]。
医療機関側の使い方としては、患者が受診前に「伝えるべき点」を整理できれば、診察の立ち上がりが早くなる可能性があります。ただし、生活者向けはあくまで情報提供であり、"診断の代替ではない"説明をセットで運用する必要があります[1]。
メルプAI受診相談
メルプのアプリ説明では、症状から診療科と緊急度を1分でチェックできる「メルプAI受診相談」が記載されています(開発・販売元はHERO innovation、最終更新日2025/11/27の表示)[13]。
医療機関の導線づくり(どの科に来るべきか迷う患者の入口)としては有用になり得ますが、ここも同様に、出力の意味(目安)と、緊急時の例外動線(救急受診/119等)の説明設計が重要です[13]。
Ada(海外症状チェッカー)
Adaは日本のアプリストアから利用可能で、ストア上で「症状を確認し、評価レポートを受け取る」といった説明があります[14]。
ただし海外発サービスは、日本の医療提供体制(受診の導線、診療科の文化、救急の使い分け)に最適化されていない可能性があるため、院内で患者に案内する場合は慎重さが必要です[14]。
導入検討のチェックリスト(医師・管理者目線)
AI問診の導入は「便利そう」で始めると事故ります。最低限、次を押さえるのが現実的です。
まとめ:結局、どれを選ぶべきか(実務結論)
外来フローの整備と普及実績を重視するなら:ユビーAI問診が第一候補になりやすい[3]
初診カルテ作成・標準化+参照知識(CDS)まで含めて厚くしたいなら:今日の問診票(+HOPE環境なら富士通連携)[4][5]
患者が自宅で継続的に情報を整える"前工程"を強化したいなら:医療AIパートナー「ユビー」等の生活者向けも、運用設計次第で効く[1]
生成AI問診は将来性が大きい一方、現時点では先行事例の要素が強く、汎用導入には要件定義が鍵[12]