高血圧の食事指導|減塩だけでは終わらない外来の基本

高血圧の食事指導|減塩だけでは終わらない外来の基本

この記事では、高血圧で食事が重要な理由・高血圧の食事指導でまず目指すこと・食塩摂取を減らすについて解説します。

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外来でそのまま使える食事指導シリーズ 第2回

この記事のポイント

  • 高血圧の食事指導の中心は減塩(1日6 g未満が目標)だが、「塩を減らす」と言うだけでなく、どこから塩分が入っているかを患者と一緒に見つけることが重要
  • 汁物・麺の汁・漬物・加工食品・惣菜・外食など、日常の習慣を少し変えるだけで減塩は現実的になる
  • 減塩だけでなく、体重管理・飲酒・食事パターン全体・腎機能まで含めて考えることで、その人に合った指導になる

高血圧の食事指導というと、まず「減塩」が思い浮かびます。実際、それは間違いではありません。日本高血圧学会は高血圧患者で食塩摂取量 1 日 6 g 未満を勧めており1、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」でも、高血圧や慢性腎臓病の重症化予防を目的とした量として 6 g/日未満が示されています2

ただ、外来で実際に難しいのは、「減塩しましょう」と言うことではなく、患者さんが日常の中で何をどう変えればよいかを具体化することです。しかも、高血圧の患者さんの多くは、糖尿病、肥満、脂質異常症、腎機能低下などを併せ持っています。そのため、単に塩分だけを話して終わると、食事全体の改善につながらないことがあります。

この記事では、高血圧の食事指導でまず何を見て、どこを変えると実行につながりやすいかを、外来で使いやすい形で整理します。

高血圧で食事が重要な理由

高血圧は、脳卒中、心不全、虚血性心疾患、慢性腎臓病などの重要な危険因子です。食事療法だけで全てが解決するわけではありませんが、薬物療法と並んで基礎になる介入です。

とくに食塩摂取は血圧と深く関係しており、減塩は高血圧患者だけでなく、将来の高血圧予防にも意味があります。一方で、血圧は食塩だけで決まるわけではありません。肥満、飲酒、運動不足、睡眠、ストレス、腎機能、薬剤など多くの要因が関与します。したがって食事指導でも、塩分だけに視野を狭めず、食事全体を見ることが大切です。

高血圧の食事指導でまず目指すこと

高血圧の患者さんに食事指導をするとき、目標は単に「薄味にする」ことではありません。実際には、次の3点を意識すると整理しやすくなります。

1. 食塩摂取を減らす

最優先です。とくに外食、加工食品、汁物が多い患者さんでは効果が出やすい部分です。

2. 体重が過剰なら少しでも減らす

肥満があると血圧は下がりにくくなります。食塩を減らしても、体重増加が続いていれば改善が乏しいことがあります。

3. 続けられる形にする

短期間だけ厳しくしても続きません。食事療法は、無理なく続けられる形で初めて意味があります。

まず見直したいのは食塩の取り方

患者さんは「塩辛いものはそんなに食べていない」と言うことがよくあります。しかし実際には、塩分は目立たない形で多く含まれています。

汁物

みそ汁、スープ、ラーメンやうどんの汁は、食塩摂取の大きな原因です。特に麺類で「汁まで飲む」習慣は影響が大きくなります。

漬物・佃煮・梅干し

少量でも塩分が多い食品です。毎食つけている人では積み重なります。

加工食品

ハム、ソーセージ、練り物、インスタント食品、レトルト食品、カップ麺などは、塩分が多いことが少なくありません。

惣菜・弁当・外食

自炊ではそこまで濃くなくても、外食や弁当が増えると塩分は一気に増えます。丼物、麺類、定食、カレーなどは塩分が高くなりやすい代表です。

「塩をかけない」だけでは減塩にならない

高血圧の患者さんに「食卓塩は使っていません」と言われることがあります。もちろんそれ自体は良いのですが、減塩の本丸はそこではありません。

実際の食塩摂取量は、料理の最後に振る塩よりも、もともと食品や惣菜に入っている塩分の影響を大きく受けます。つまり、患者さんが頑張るべき点は「味付けを少し我慢すること」だけではなく、塩分の多い食品を見抜くことにあります。

外来で説明するときは、

  • 汁物の回数
  • 麺の汁を飲むかどうか
  • 漬物の頻度
  • 弁当や惣菜の利用頻度
  • カップ麺や加工肉の習慣

このあたりを具体的に聞くと、修正点が見えやすくなります。

食塩を減らしやすい具体策

減塩は「薄味で我慢する」と捉えられがちですが、実際には工夫の余地があります。

汁物は回数と量を調整する

みそ汁を完全にやめる必要はありませんが、1日3回飲んでいるなら1回にする、具を多くして汁を少なめにする、というだけでも変わります。

麺の汁を残す

ラーメン、うどん、そばなどでは、汁を全部飲まないことが大きな減塩になります。これは外来でも説明しやすく、患者さんにも実行しやすい方法です。

調味料は「目分量」より「少量を意識」

しょうゆやソースは、かける量が無意識に増えやすいものです。小皿に取って使う、最初から全体にかけない、といった工夫が役立ちます。

だし、酸味、香辛料を使う

レモン、酢、こしょう、七味、香味野菜、だしのうまみを活かすと、塩分を減らしても食べやすくなります。

加工食品を毎日の習慣にしない

ハム、ソーセージ、漬物、佃煮、インスタント食品は「たまに食べる」ならともかく、毎日続くと塩分がかさみます。

野菜や果物はどう考えるか

野菜や果物の摂取は、一般には血圧管理に有利な食事パターンの一部とされています。食物繊維やカリウムを含むためです。ただし、ここは注意が必要です。

高血圧の患者さんの中には、慢性腎臓病を合併している方もいます。その場合、腎機能や血清カリウム値によっては、カリウム摂取を無条件に勧めにくいことがあります。したがって「血圧に良いから野菜と果物をどんどん増やしましょう」と一律には言わず、腎機能低下がある患者では少し慎重に考える必要があります。

体重、飲酒、食事全体も無視できない

高血圧の食事指導で減塩が中心になるのは確かですが、それだけでは不十分です。

体重

体重増加、とくに内臓脂肪の増加は血圧上昇に関わります。塩分を減らしていても、食事量が多く体重が増えていれば改善しにくくなります。

飲酒

飲酒量が多い患者では、血圧管理の観点からも見直しが必要です。とくに「毎日飲む」「量が多い」「つまみが塩辛い」という組み合わせは悪循環になりやすいです。

食事パターン全体

外食が多い、野菜が少ない、加工食品が多い、夜遅い食事が多い、といった生活全体の偏りは血圧に影響します。食塩だけの話にせず、日常の食事パターン全体を聞く方が実践的です。

外食・コンビニでの選び方

高血圧の患者さんにとって、外食やコンビニをゼロにするのは現実的ではありません。重要なのは、選び方を少し変えることです。

外食でのコツ

  • 麺類は汁を飲み干さない
  • 丼物単品より、主菜と副菜が分かれた定食の方が調整しやすい
  • 漬物や小鉢が多い定食では、全部を食べ切らなくてもよい
  • 追加のしょうゆやソースを最初からかけない

コンビニでのコツ

  • カップ麺や加工肉中心を避ける
  • おにぎり、サラダ、ゆで卵、豆腐、焼き魚系などを組み合わせる
  • スープ類は毎回つけない
  • 栄養成分表示で食塩相当量を見る習慣をつける

腎機能低下や高カリウム血症がある場合の注意

高血圧患者の中には、慢性腎臓病を合併している方が少なくありません。この場合、減塩の考え方はそのまま重要ですが、野菜や果物、乳製品などの扱いは腎機能によって変わることがあります。

とくに高カリウム血症がある患者では、一般的な高血圧向けの食事指導をそのまま当てはめると危ういことがあります。高血圧という病名だけで画一的に話すのではなく、腎機能、尿蛋白、血清カリウム値、利尿薬やレニン-アンジオテンシン系阻害薬の使用状況も見ながら調整する必要があります。

よくある誤解

減塩しょうゆならたくさん使ってよい

減塩しょうゆは役立ちますが、無制限に使ってよいわけではありません。量が増えれば塩分も増えます。

塩を使わなければ減塩できている

実際には加工食品、汁物、惣菜、外食由来の塩分が大きいので、それだけでは不十分です。

血圧は体質だから食事を変えても意味がない

体質の影響はありますが、食事介入、とくに減塩や体重管理は血圧管理の基本です。薬物療法が必要でも、食事の見直しは無駄になりません。

一気に厳しくしないと意味がない

むしろ続かないことが多く、現実的ではありません。実行可能な小さな変更を積み重ねる方が外来では有効です。

外来での伝え方のコツ

高血圧の食事指導では、「減塩しましょう」で終わらせず、患者さんの生活に合わせて1〜2個の行動目標に落とすことが大切です。

たとえば、

  • みそ汁は1日2回まで
  • 麺の汁は飲まない
  • 漬物は毎食ではなく1日1回まで
  • カップ麺は週1回まで
  • しょうゆは小皿に取って使う

このように具体化すると、患者さんは実践しやすくなります。

逆に、「塩分を控えるようにしてください」「薄味にしてください」といった抽象的な指示だけでは、行動変容につながりにくいことが多いです。

まとめ

高血圧の食事指導の中心は減塩です。高血圧患者では 1 日 6 g 未満を目標にする考え方が基本になります1,2。しかし、実際の外来で大事なのは、「塩を減らす」と言うことではなく、どこから塩分が入っているかを患者さんと一緒に見つけることです。

汁物、麺の汁、漬物、加工食品、惣菜、外食。こうした日常の習慣を少し変えるだけでも、減塩は現実的になります。

また、高血圧の食事指導は塩分だけで終わりません。体重、飲酒、食事全体のパターン、腎機能の有無まで含めて考えることで、はじめてその人に合った指導になります。

次回は、脂質異常症(高脂血症)の食事指導を取り上げます。油を減らすだけでは不十分な理由と、どの脂質をどう見直すべきかを整理します。

参考文献

  1. Ohya Y, et al. The Japanese Society of Hypertension Guidelines for the management of elevated blood pressure and hypertension 2025 (JSH2025). Hypertens Res. 2026;49(1):9-235. PMID: 41476123(日本語版:高血圧管理・治療ガイドライン2025)
  2. 厚生労働省. 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書. ナトリウム(食塩相当量)の項:「高血圧及びCKDの重症化予防を目的とした量は、食塩相当量6 g/日未満とする」

前回の記事:食事指導は「何を禁止するか」ではなく「何を守るか」から始める

次回の記事:脂質異常症の食事指導(近日公開)

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