健康診断や人間ドックで「骨密度が低い」「骨粗鬆症の疑い」と言われて、不安になっていませんか。あるいは、ご家族が背骨や足の付け根を骨折して、初めて骨粗鬆症という言葉に向き合っている方もいるかもしれません。骨粗鬆症は痛みもなく静かに進むため、気づいたときには骨折していた、ということが少なくない病気です。
この記事は、骨粗鬆症と向き合うときに「最初に読む1本」として、神経内科・総合内科専門医がやさしく整理したものです。①骨密度検査(DXA)はいつ・誰が受けるべきか、②結果の見方、③「閉経のせい」だけではない隠れた原因、④薬の違いと選び方・やめどき、そして⑤一度折れた骨折を繰り返さない「二次骨折予防(FLS)」までを、2025年に10年ぶりに改訂された最新ガイドラインに沿ってまとめます。
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この記事の要点(検査のタイミング・薬の2グループ・二次骨折予防)を1枚にまとめました。クリックで原寸表示できます。
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骨粗鬆症とは——「痛くないのに進む」サイレントな病気
骨は一度できたら一生そのまま、ではありません。古くなった骨を壊す「骨吸収」と、新しい骨をつくる「骨形成」をくり返しながら、たえず入れ替わっています。若いうちはこの2つがつり合っていますが、加齢や閉経でバランスが崩れ、壊すほうが上回ると骨は中身がスカスカになり、もろくなっていきます。これが骨粗鬆症です3。
やっかいなのは、骨がもろくなっていく過程では痛みがほとんどないことです。多くの人は、転んで手首や背骨、足の付け根を折って初めて「実は骨粗鬆症だった」と気づきます。だからこそ、症状が出る前に「測って知る」ことが何より大切になります。
この記事の結論(先出し)
①骨密度はDXAで測る。背骨や足の付け根を弱い力で折る「脆弱性骨折」があれば、その場で骨粗鬆症と診断できる/②薬には「吸収を抑える薬」と「骨をつくる薬」があり、リスクが高い人はつくる薬から始める。自己判断でやめるのはかえって危険/③一度折れると次が折れやすい。FLS(骨折リエゾンサービス)で検査・治療を続けて二次骨折を防ぐ。
本当に怖いのは「骨折の連鎖」
骨粗鬆症そのものより怖いのは、骨折が次の骨折を呼ぶ「連鎖」です。とくに背骨(椎体)や足の付け根(大腿骨近位部)の骨折は、痛みや寝たきり、生活の質の低下につながりやすく、一度脆弱性骨折を起こした人は、次の骨折を起こすリスクが大きく上がることが分かっています7。逆に言えば、最初の1回の骨折を「次を防ぐ出発点」にできれば、連鎖は断ち切れます。これが記事の後半でお話しするFLSの考え方です。
骨密度検査(DXA)はいつ・誰が受ける?

「骨密度って、何歳から測ればいいの?」という質問はとても多いです。結論から言うと、女性は閉経の前後(おおよそ50歳前後)に一度は測っておくのがすすめられます。日本では、市区町村が行う骨粗鬆症検診として、40・45・50・55・60・65・70歳の女性を対象に、5歳きざみで骨量測定が実施されています10。お住まいの自治体の検診案内を確認してみてください。
検査にはどんな種類がある?
骨を測る検査にはいくつか種類があり、精度や目的が違います。診断の基準になるのはDXA(デキサ)法です9。
| 検査 | どんな検査か | 位置づけ |
| DXA法 | わずかなX線で腰の骨(腰椎)と足の付け根(大腿骨)を測る | 診断の基準となる検査。骨折しやすい部位を直接測れる |
| 超音波法(QUS) | かかとなどに超音波を当てる。X線を使わない | 手軽なスクリーニング(ふるい分け)向き。検診や薬局でよく使われる |
| MD法 | 手のX線写真から骨の濃さを評価する | 簡便だが、診断はDXAで確認するのが基本 |
結果の見方(YAM・Tスコア)
骨密度の結果は、YAM(若い人の平均値を100%としたときの割合)やTスコアという指標で示されます。おおまかな目安として、YAMが70%以下、またはTスコアが−2.5以下になると骨粗鬆症と判断されます1。さらに大切なポイントとして、背骨や足の付け根を弱い力で折る「脆弱性骨折」がある場合は、骨密度の数値に関わらず骨粗鬆症と診断できるとされています1。「数値が基準ぎりぎりだから大丈夫」ではなく、すでに折れているかどうかが重要なのです。
男性や若い人でも測ったほうがよいことがある
骨粗鬆症は女性に多い病気ですが、男性がならないわけではありません。男性でも加齢やあとで述べる「続発性」の原因で骨がもろくなり、しかも男性の骨折は予後が悪いこともあります。次のような人は、年齢や性別にかかわらず一度医師に相談しましょう。
- すでに背骨・手首・足の付け根などを軽い転倒で骨折したことがある
- ステロイド(副腎皮質ホルモン)を長く使っている/使う予定がある
- 関節リウマチ、糖尿病、甲状腺・副甲状腺の病気がある
- 親が足の付け根を骨折したことがある/極端に痩せている・喫煙・多量の飲酒
「閉経のせい」だけ?——隠れた原因(続発性)を見逃さない
骨粗鬆症の多くは、加齢や閉経による「原発性」です。一方で、別の病気や薬が原因で骨がもろくなる「続発性骨粗鬆症」も少なくありません1。続発性を見逃すと、いくら骨の薬を飲んでも大もとの原因が放置されてしまいます。とくに、若くして発症した・男性・急速に進んでいるといった場合は、原因をしっかり調べることが大切です。
続発性骨粗鬆症の代表的な原因
・ステロイドの長期使用(ぜんそく・膠原病などの治療)
・内分泌の病気(甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能亢進症、性ホルモンの低下、クッシング症候群など)
・関節リウマチ、糖尿病、慢性腎臓病
・栄養の吸収が悪くなる病気や、極端な栄養不足
これらは「年のせい」では片づけられないサインです。心当たりがあれば、骨だけでなく原因の検索を主治医に相談してください。
骨粗鬆症の薬——「吸収を抑える薬」と「骨をつくる薬」

「骨の薬はたくさんあって違いが分からない」とよく言われます。実は、骨粗鬆症の薬は大きく2つのグループに分けて考えると、ぐっと整理しやすくなります1,6。
| グループ | 代表的な薬 | はたらき |
| 骨を壊すのを抑える薬 (骨吸収抑制薬) |
ビスホスホネート(飲み薬・点滴)、デノスマブ(半年に1回の注射)など | 骨が壊れるスピードをゆるめ、骨密度を保つ・増やす |
| 骨をつくる薬 (骨形成促進薬) |
テリパラチド、アバロパラチド(自己注射)、ロモソズマブ(月1回の注射) | 新しい骨を積極的につくる。骨折リスクが特に高い人向け |
ビスホスホネートやデノスマブは「壊れるのを抑える」薬、テリパラチドやアバロパラチドは「つくる」薬です。ロモソズマブは骨をつくる力を高めつつ壊れるのも抑える、両方のはたらきを持つ新しい注射薬です4。どれを選ぶかは、年齢・骨密度・すでに骨折があるか・他の病気などをふまえて医師が決めます。
リスクが特に高い人は「つくる薬→抑える薬」の順序療法
骨折のリスクが非常に高い人(すでに背骨を何か所も折れている、骨密度が極端に低いなど)では、まず「骨をつくる薬」でしっかり骨を増やしてから、「壊すのを抑える薬」に切り替えて維持するという順番(順序療法)が有効と分かってきました。大規模な研究をまとめた解析でも、骨形成促進薬(ロモソズマブやテリパラチドなど)はビスホスホネートよりも骨折を防ぐ効果が高いと報告されています6。実際、ロモソズマブで治療してからビスホスホネートに切り替えた人は、ビスホスホネート単独よりも背骨の骨折が少なかったことが示されています5。
知っておきたい注意点(自己判断でやめない)
・デノスマブは、自己判断で中断したり次の注射が大きく遅れたりすると、骨密度が急に戻り、背骨を一度に何か所も折ってしまうことがあります(リバウンド)。やめたいときは必ず主治医に相談し、次の薬への切り替えを一緒に考えてください1。
・ロモソズマブは、心筋梗塞や脳卒中を起こしたことがある人では慎重に使う必要があります(心血管系のリスク)5。
・まれにあごの骨の壊死や非典型的な大腿骨骨折が起こることがありますが、いずれもまれで、骨折を防ぐ利益のほうが一般に上回ります。歯の治療を受けるときは、骨の薬を使っていることを歯科医に伝えてください。
薬だけに頼らない——食事・運動・転倒予防
薬を使う・使わないにかかわらず、土台になるのが食事・運動・転ばない工夫です。これらは骨の薬を飲んでいる人でも、すべての人にすすめられます2。
カルシウムとビタミンD
骨の材料になるカルシウム(乳製品・小魚・大豆製品・緑黄色野菜)と、その吸収を助けるビタミンD(魚・きのこ・適度な日光)は、食事から十分にとることが基本です。ただし注意したいのは、「サプリさえ飲めば予防できる」わけではないこと。一般の人がカルシウムのサプリだけを飲んでも、骨折を防ぐ効果ははっきりしないと報告されています8。不足している人や治療中の人で、医師の判断のもと補助的に使うのが適切です。
運動と転倒予防
骨は適度な負荷がかかると強くなります。ウォーキングなど体重がかかる運動や、軽い筋力トレーニング・バランス運動を、無理のない範囲で続けましょう。そして骨粗鬆症の人にとっては、「転ばない環境づくり」が骨折予防に直結します。室内の段差や電気コードをなくす、滑りにくい履物にする、明るさを確保する、ふらつく薬を見直す——こうした工夫が、最後の砦になります。
「2回目の骨折」を防ぐ仕組み——骨折リエゾンサービス(FLS)

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいことです。前半でも触れたとおり、一度脆弱性骨折を起こすと、次の骨折のリスクが大きく上がります7。ところが、骨折の治療(手術やギプス)が終わると、その後の骨粗鬆症の検査や治療がうやむやになってしまうことが、これまで多くありました。
そこで広がってきたのが、骨折リエゾンサービス(FLS:Fracture Liaison Service)です。「リエゾン」は「連携・つなぐ」という意味で、骨折で入院した人を、医師・看護師・薬剤師・リハビリ職などの多職種チームがもれなく骨粗鬆症の評価・治療・その後の管理につなぐ仕組みです。日本でも「二次骨折予防のためのFLSクリニカルスタンダード」が定められ、こうした取り組みが二次骨折(2回目の骨折)を減らすことが示されています7。
患者さん・ご家族ができること
骨折で入院・手術をしたら、その治療が一段落しても骨粗鬆症の検査と治療を「そこで終わり」にしないことが何より大切です。退院後も骨密度を測り、必要な薬を続け、自己判断でやめない。これが「2回目」を防ぐいちばんの近道です。
まとめ:早く知る・正しく測る・続けて防ぐ
この記事のまとめ
- 骨粗鬆症は痛みなく進む。女性は閉経前後に一度はDXAで骨密度を測る(検診は40〜70歳に5歳きざみ)
- 脆弱性骨折があれば、数値に関わらずその場で診断。男性・若年・急な進行は「続発性」も疑う
- 薬は「壊すのを抑える薬」と「つくる薬」。リスクが高い人はつくる薬から始める順序療法
- デノスマブなどは自己判断でやめない。食事・運動・転倒予防が土台
- 一度折れたら次が折れやすい。FLSで検査・治療を続け、2回目を防ぐ
骨粗鬆症は「年だから仕方ない」とあきらめる病気ではありません。早く知り、正しく測り、続けて防ぐ。今日できる一歩——まずは自分や家族の骨密度を測ったことがあるか、確認するところから始めてみてください。
患者配布用A4ハンドアウト
この記事の要点を、そのまま印刷して使えるA4資料にまとめました。痛くないことは進んでいない証拠にならないこと・検診は40〜70歳の女性に5歳ごとであること・すでに軽い力で折れたことがある方は骨密度の数値を待たずに相談してよいこと・注射の薬を自己判断でやめない理由を、数値や専門用語を最小限にした言葉で整理しています。ご家族への説明にもお使いください。
スマートフォンで見る方向けにQRコードを載せてあります。ハンドアウト一覧には、他の病気の配布資料も掲載しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 骨密度検査は何歳から受ければよいですか?
A. 女性は閉経前後・50歳ごろに一度は測るのがすすめられます。市区町村の骨粗鬆症検診は40〜70歳の女性を対象に5歳きざみで行われています。骨折歴・ステロイド使用・家族歴などがあれば、年齢にかかわらず相談してください。
Q2. 骨密度の検査にはどんな種類がありますか?
A. 腰椎と大腿骨を測るDXA法が診断の基準です。かかとなどで測る超音波法(QUS)は手軽なスクリーニング向き、手のX線で評価するMD法もあります。診断はDXAで確認するのが基本です。
Q3. 骨粗鬆症の薬は一生飲み続けるのですか?
A. 薬や骨折リスクによって異なります。一定期間で効果と副作用を評価し、休薬を検討する薬もあります。一方でデノスマブは自己中断すると骨折リスクが急に戻る(リバウンド)ため、勝手にやめないことが大切です。やめたいときは必ず主治医に相談してください。
Q4. 男性は骨粗鬆症になりませんか?
A. なります。加齢・ステロイド・性ホルモンの低下・生活習慣などで起こり、男性の骨折は予後が悪いこともあります。男性でも、骨折歴やステロイド使用などがあれば検査の対象です。
Q5. 薬の副作用(あごの骨の壊死など)が心配です。
A. あごの骨の壊死や非典型的な大腿骨骨折はいずれもまれで、骨折を防ぐ利益のほうが一般に上回ります。歯科治療を受けるときは骨の薬を使っていることを伝えてください。心配でも自己判断で中断するのは、かえって危険です。
Q6. カルシウムやビタミンDのサプリだけで予防できますか?
A. サプリ単独での骨折予防効果ははっきりしません。不足している人・治療中の人で補助的に有用です。基本は食事・運動と、必要に応じた薬物治療の組み合わせです。
Q7. 一度骨折したら、また折れますか?防げますか?
A. 1回の脆弱性骨折で次の骨折リスクは大きく上がります。だからこそ、骨折リエゾンサービス(FLS)で検査・治療・継続管理を行い、薬を自己判断でやめないことで、2回目の骨折を減らすことができます。
参考文献
- Subarajan P, Arceo-Mendoza RM, Camacho PM. Postmenopausal Osteoporosis: A Review of Latest Guidelines. Endocrinol Metab Clin North Am. 2024;53(4):497-512. DOI
- Eastell R, et al. Pharmacological Management of Osteoporosis in Postmenopausal Women: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline. J Clin Endocrinol Metab. 2019;104(5):1595-1622. DOI
- Aibar-Almazán A, et al. Current Status of the Diagnosis and Management of Osteoporosis. Int J Mol Sci. 2022;23(16):9465. DOI
- Cosman F, et al. Romosozumab Treatment in Postmenopausal Women with Osteoporosis. N Engl J Med. 2016;375(16):1532-1543. DOI
- Saag KG, et al. Romosozumab or Alendronate for Fracture Prevention in Women with Osteoporosis. N Engl J Med. 2017;377(15):1417-1427. DOI
- Händel MN, et al. Fracture risk reduction and safety by osteoporosis treatment: a network meta-analysis. BMJ. 2023;381:e068033. DOI
- Geusens P, et al. Fracture liaison programs. Best Pract Res Clin Rheumatol. 2019;33(2):278-289. DOI
- Capozzi A, Scambia G, Lello S. Calcium, vitamin D, vitamin K2, and magnesium supplementation and skeletal health. Maturitas. 2020;140:55-63. DOI
- 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版(日本骨粗鬆症学会・日本骨代謝学会・骨粗鬆症財団 編). Minds ガイドラインライブラリ
- 厚生労働省. 健康増進事業実施要領(骨粗鬆症検診). 厚生労働省
今村久司(京都大学医学部卒・京都大学医学博士・神経内科専門医指導医・総合内科専門医指導医・てんかん学会専門医指導医)