AA 2024アルツハイマー病バイオマーカー分類|AT₁T₂NISVとCore 1・Core 2を解説

2024年のAlzheimer’s Association改訂基準では、アルツハイマー病(AD)のバイオマーカー分類が従来のAT(N)からAT₁T₂NISVへ拡張されました。最大のポイントは、タウを早期反応のT₁と凝集タウ病理のT₂へ分け、Core 1は「AD病理があるか」Core 2は「タウ病理がどこまで進んだか」を主に評価する枠組みにしたことです。本稿ではp-tau217とMTBR-tau243の違い、生物学的病期A〜D、臨床で誤解しやすい点まで、原著に沿って整理します。

この記事の結論
Core 1はAD病理の存在を検出する入口、Core 2はタウ病理の負荷・病期・予後を評価する層です。Core 1陽性は「認知症」や「直ちに治療適応」と同義ではありません。

動画で解説(YouTube)

AA 2024分類の全体像:AT₁T₂NISV

2024年基準は、バイオマーカーを大きく3群に分けています。第一はAD neuropathologic changeを直接扱うCoreバイオマーカー、第二はAD病態に関与するものの疾患特異性が低い過程、第三は非ADの併存病理です。1

分類 何を表すか 代表的バイオマーカー 位置づけ
AAβ蛋白病理アミロイドPET、CSF Aβ42/40Core 1
T₁リン酸化・分泌型ADタウp-tau217、p-tau181、p-tau231Core 1
T₂凝集したADタウ病理タウPET、MTBR-tau243、p-tau205Core 2
N神経障害・機能不全・変性NfL、MRI萎縮、FDG-PET非特異的
I炎症・グリア反応GFAPなど非特異的
Sαシヌクレイン病理CSF αSyn-SAA併存病理
V血管性脳障害梗塞、白質病変、出血性病変併存病理

Core 1:「AD病理があるか」をみる

Core 1はアミロイドPETと概ね同じ時期に異常化する早期バイオマーカーです。A、T₁、Aとタウを組み合わせた比率検査が含まれます。2024年基準では、十分な精度が確認された特定のCore 1検査が異常であれば、生物学的ADを診断できるとしています。1

診断用途として原著が具体的に挙げるのは、アミロイドPET、CSF Aβ42/40、CSF p-tau181/Aβ42、CSF total tau/Aβ42、そして「十分に正確な」血漿検査です。血液ではp-tau217や%p-tau217が重視されます。

カテゴリーと診断用途は同じではありません。
p-tau181やp-tau231もT₁ですが、分類上T₁に入る検査がすべてそのまま臨床診断用として認められるわけではありません。測定系、カットオフ、対象集団で性能が変わります。

p-tau217が重視される理由

p-tau217は、Aβ病理に反応して早期に上昇する可溶性タウを捉えます。Ashtonらの3コホート研究では、市販p-tau217免疫測定法がAβおよびタウ病理を高い精度で識別し、CSFバイオマーカーに近い性能を示しました。3 ただし、検査名だけでなく、どの測定系か、どの集団でカットオフが検証されたかを確認する必要があります。

p-tau217については、既存記事「p-tau217:アルツハイマー型認知症バイオマーカーの詳細解説」でも詳しく解説しています。

Core 2:「タウ病理がどこまで進んだか」をみる

Core 2はT₂に相当し、タウPET、MTBR-tau243、p-tau205、非リン酸化mid-region tau fragmentsなどを含みます。Core 1より遅れて異常化し、タウ病理の負荷、生物学的病期、予後、現在の症状にAD病理がどの程度寄与しているかを評価します。1

ここで重要なのは、Core 2陰性でも初期ADを否定できないことです。たとえばCore 1陽性でも、タウPETが陰性の初期段階は十分にありえます。Core 2は一般に、単独でADを除外するための検査ではありません。

MTBR-tau243とは

MTBRはmicrotubule-binding regionの略です。Horieらは、CSF MTBR-tau243がアミロイドPETよりもタウPETおよび認知機能と強く関連し、凝集タウ病理をより特異的に反映することを示しました。2 2024年基準ではT₂/Core 2に位置づけられますが、臨床実装の成熟度はCore 1より低く、主に研究・開発段階です。

比較点 p-tau217 MTBR-tau243
分類T₁ / Core 1T₂ / Core 2
主に反映Aβ病理に伴う早期タウ反応凝集タウ・神経原線維変化
関連しやすい画像アミロイドPETタウPET
主な用途AD病理の検出・診断病期・予後・症状への寄与

生物学的病期A〜D

2024年基準は、アミロイドPETとタウPETを組み合わせた生物学的病期A〜Dを提示しました。AはアミロイドPET陽性・タウPET陰性、Bは内側側頭葉に限局するタウPET集積、Cは新皮質に中等度、Dは新皮質に高度のタウPET集積です。1

  • A(initial):Aβ陽性、タウPET陰性
  • B(early):内側側頭葉タウPET陽性
  • C(intermediate):新皮質タウPET中等度
  • D(advanced):新皮質タウPET高度

Core 1体液検査だけでは「病期A以上」は示せても、A〜Dのどこかを正確に分けることは現状できません。また、p-tau205、MTBR-tau243、非リン酸化tauを順に早期・中間・進行病期へ対応させる体液病期は、原著自身がconceptualと明記しています。PET病期と体液病期を同一視してはいけません。

NとI:病勢を補足するがAD特異的ではない

NにはNfL、MRI上の萎縮、FDG-PET低代謝などが含まれ、神経細胞・軸索・シナプスの損傷や機能不全を表します。IはGFAPなどの炎症・アストロサイト反応を表します。いずれも病勢や予後の理解に役立ちますが、脳血管障害や他の神経変性疾患でも異常になりうるため、単独でADを診断するマーカーではありません。

SとV:併存病理を可視化する

Sはαシヌクレイン病理、Vは血管性脳障害を表します。CSF αSyn-SAAはLewy小体病理の併存を捉える検査です。AD患者でαSyn-SAA陽性が一定割合にみられ、臨床表現型に影響する可能性も報告されています。4

高齢者の認知機能低下は、AD病理だけで説明できないことが少なくありません。幻視、認知変動、REM睡眠行動異常、パーキンソニズムが目立つ場合はSを、歩行障害や広範な白質病変、梗塞・出血性病変がある場合はVを意識します。

臨床で誤解しやすい3点

1.Core 1陽性=認知症ではない

Core 1陽性は生物学的AD病理を示しますが、認知症という臨床症候とは別です。認知機能、日常生活機能、経過、認知予備能、併存病理を合わせて評価します。

2.p-tau217陽性=自動的な確定診断ではない

測定系とカットオフが対象集団で検証されているかが重要です。臨床像と結果が食い違う場合、CSFやアミロイドPETによる確認、腎機能などの交絡因子、他疾患を再検討します。

3.生物学的AD=抗Aβ抗体薬の適応ではない

治療適応は、症候性であること、臨床病期、MRI所見、ARIAリスク、併存疾患、薬剤ごとの添付文書・適正使用条件などを別に確認します。関連して「抗アミロイド抗体治療におけるARIAリスク」も参照してください。

臨床での読み方:5ステップ

  1. 症候と機能障害を評価する。
  2. 年齢、表現型、鑑別疾患から事前確率を考える。
  3. 目的に合う検証済みCore 1検査を選ぶ。
  4. 臨床像と不一致なら、CSF、PET、S・V、交絡因子を追加評価する。
  5. 生物学的診断と治療適応を分けて判断する。

より広い検査実装については「アルツハイマー型認知症のバイオマーカー総説」も合わせてご覧ください。

まとめ

  • Core 1(A・T₁・比率検査):AD病理があるか
  • Core 2(T₂):タウ病理がどこまで進んだか
  • N・I:神経障害と炎症を補足するが非特異的
  • S・V:αシヌクレイン・血管性の併存病理
  • p-tau217:T₁/Core 1、早期検出
  • MTBR-tau243:T₂/Core 2、タウ負荷

AT₁T₂NISVは、検査名を並べる表ではありません。「病理があるか」「どこまで進んだか」「何が症状へ寄与しているか」を分けて考えるための地図です。

医療情報に関する注意
本記事は一般的な医学情報の提供を目的とし、個別の診断・検査・治療を指示するものではありません。検査の選択や結果の解釈は、認知症診療に詳しい医師へご相談ください。

よくある質問

Q1.Core 1が陽性なら認知症ですか?

いいえ。Core 1陽性は生物学的AD病理を示しますが、認知症という臨床症候や日常生活機能の低下とは別に評価します。

Q2.タウPETが陰性ならADを否定できますか?

いいえ。Core 1陽性・Core 2陰性は、初期ADとして矛盾しません。

Q3.p-tau217陽性なら抗Aβ抗体薬を使えますか?

自動的に適応となるわけではありません。症候、臨床病期、MRI、ARIAリスク、薬剤ごとの条件を別に確認します。

参考文献

  1. Jack CR Jr, Andrews JS, Beach TG, et al. Revised criteria for diagnosis and staging of Alzheimer's disease: Alzheimer's Association Workgroup. Alzheimers Dement. 2024;20(8):5143-5169. PMID 38934362. DOI 10.1002/alz.13859. PubMed / DOI
  2. Horie K, Salvadó G, Barthélemy NR, et al. CSF MTBR-tau243 is a specific biomarker of tau tangle pathology in Alzheimer's disease. Nat Med. 2023;29(8):1954-1963. PMID 37443334. DOI 10.1038/s41591-023-02443-z. PubMed / DOI
  3. Ashton NJ, Brum WS, Di Molfetta G, et al. Diagnostic Accuracy of a Plasma Phosphorylated Tau 217 Immunoassay for Alzheimer Disease Pathology. JAMA Neurol. 2024;81(3):255-263. PMID 38252443. DOI 10.1001/jamaneurol.2023.5319. PubMed / DOI
  4. Pilotto A, Bongianni M, Tirloni C, et al. CSF alpha-synuclein aggregates by seed amplification and clinical presentation of AD. Alzheimers Dement. 2023;19(8):3754-3759. PMID 37102457. DOI 10.1002/alz.13109. PubMed / DOI

監修:今村久司(脳神経内科専門医)/執筆:医知創造ラボ(2026年8月29日、原著・PubMed情報を確認)