寝ている時に足がつる ― 脳神経内科医が教える危険なサインと予防法

夜中に突然ふくらはぎがつって、痛みで目が覚める ―― こんな経験はありませんか? 「足がつる」(こむら返り)は非常に多い症状で、50歳以上の約半数が経験しているとされています。1

ほとんどの場合は脱水や筋肉疲労が原因で心配いりませんが、頻繁に起こる場合は病気が隠れていることも。この記事では脳神経内科医の視点から、足がつる原因・危険なサインの見分け方・予防法を解説します。

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足がつる(こむら返り)とは?

「足がつる」とは、医学的には「有痛性筋けいれん」と呼ばれる状態です。筋肉を動かす神経が何らかの原因で異常に興奮し、筋肉が一気に強く収縮します。2

特にふくらはぎ(腓腹筋)に起きやすく、「こむら返り」という名前はふくらはぎの古い呼び名「こむら(腓)」に由来します。痛みは通常数秒〜数分で治まりますが、翌日まで鈍い痛みが残ることもあります。

ポイント:足がつること自体は珍しくありません。50歳以上では約半数が経験しており、就寝中に起こることが最も多いです。1

よくある原因 ― ほとんどは心配不要

足がつる原因で最も多いのは、日常的な要因です。

原因 なぜつりやすくなる?
脱水・水分不足 就寝中の発汗で体内の水分が減り、電解質バランスが崩れる
ミネラル不足 マグネシウム・カリウム・カルシウムの不足で神経の興奮が高まる
筋肉疲労 運動後・長時間の立ち仕事で筋肉に疲労物質が蓄積
冷え 血行不良により筋肉への酸素供給が減る
加齢 50歳を過ぎると筋肉量が減り、つりやすくなる
妊娠後期 体重増加・血液量の変化・ミネラル消費増加による

これらは生活習慣の見直しで対処できるものがほとんどです。

意外と多い ― 薬の副作用による足のつり

意外と見落としがちなのが、薬の副作用です。3

薬の種類 つりやすくなる理由
利尿薬 カリウム・マグネシウムが尿と一緒に排出される
スタチン(コレステロールの薬) 筋肉にダメージを与えることがある
ARB・ACE阻害薬(降圧薬) 電解質バランスを変化させる
β刺激薬(喘息の薬) カリウムの細胞内移行を促進

注意:普段飲んでいる薬があって足がつるようになった場合は、主治医にご相談ください。自己判断で薬をやめるのは危険です。必ず医師に相談しましょう。

脳神経内科医が注目する ― 隠れた病気

頻繁に足がつる場合、病気が隠れていることがあります。4

末梢神経障害(糖尿病など)

糖尿病やアルコール多飲などによる末梢神経障害では、しびれや感覚低下に加えて筋けいれんが起きやすくなります。足先のしびれやピリピリ感を伴う場合は注意が必要です。

腰部脊柱管狭窄症

腰の脊柱管が狭くなって神経が圧迫される病気です。歩いていると足がしびれたりつったりし、休むと楽になる(間欠性跛行)のが特徴的です。中高年に多く見られます。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)

まれですが、運動神経が障害される病気の初期症状として足のつりが現れることがあります。筋肉が痩せてくる(筋萎縮)、力が入りにくくなるなどの症状を伴う場合は早めの受診が必要です。

甲状腺機能低下症

甲状腺ホルモンの不足により、筋肉のけいれんやこわばりが起きることがあります。疲れやすい、むくみ、寒がりなどの症状を伴う場合は甲状腺の検査を受けましょう。

下肢静脈瘤・末梢動脈疾患

血液循環の問題で足の筋肉への酸素供給が不足し、つりやすくなります。足のだるさ、むくみ、冷えを伴う場合は循環器の問題も考えます。

こんな「つり方」は要注意 ― チェックポイント5つ

⚠ 以下のいずれかに当てはまる場合は、医療機関を受診してください

  1. 週に2回以上、繰り返しつる ― 単なる疲労では説明がつかない頻度です
  2. しびれや感覚の鈍さを伴う ― 末梢神経障害の可能性があります
  3. 筋肉が痩せてきた(筋萎縮) ― 運動神経疾患の除外が必要です
  4. ふくらはぎ以外(太もも・手など)もつる ― 全身性の原因を精査すべきです
  5. 歩行中につって休むと治る ― 脊柱管狭窄症や血管疾患の可能性

受診の目安 ― 緊急度3段階

緊急度 状況 対応
🔴 すぐ受診 筋力低下が急速に進行 / 足がパンパンに腫れて熱を持つ 深部静脈血栓症・重篤な神経疾患の可能性→救急受診
🟡 早めに受診 週2回以上つる / しびれを伴う / 筋肉が痩せてきた 脳神経内科で原因を精査
🟢 様子見OK 月1〜2回程度 / 疲労時・運動後に限られる 生活習慣の見直しとセルフケア

何科を受診すればいい?
しびれや筋萎縮を伴う場合は脳神経内科が最適です。足のむくみや静脈瘤がある場合は血管外科、腰痛を伴う場合は整形外科も選択肢になります。迷ったらかかりつけの内科に相談しましょう。

足がつった時の対処法

実際に足がつった時は、以下の3ステップで対処しましょう。

ステップ1: ストレッチ

つま先を手前にゆっくり引いて、つった筋肉を伸ばします。急に無理に伸ばすと肉離れの危険があるため、ゆっくり行うことがポイントです。

ステップ2: マッサージ

痛みが和らいだら、つった部分を軽くマッサージしてほぐします。強く揉みすぎないように注意しましょう。

ステップ3: 温める

蒸しタオルやカイロで温めて血行を促進します。冷やすのではなく温めるのがポイントです。

予防する5つの習慣

  1. こまめな水分補給 ― 就寝前にコップ1杯の水を飲む。夜間の脱水を防ぎます
  2. ミネラルを意識した食事 ― マグネシウム(ナッツ・海藻)、カリウム(バナナ・ほうれん草)を積極的に摂りましょう
  3. 就寝前のストレッチ ― ふくらはぎを30秒ずつ伸ばす習慣をつけましょう。壁に手をつき、片足を後ろに伸ばすストレッチが効果的です
  4. 足を冷やさない ― レッグウォーマーや靴下で保温。特に冬場やクーラーの効いた部屋では注意
  5. 適度な運動 ― ウォーキング30分で筋力を維持。ただし過度な運動は逆効果です

マグネシウムの補充について
マグネシウムサプリメントの効果については、研究により結果が分かれています。5 食事からの摂取が基本ですが、不足気味なら補助的に使えます。ただし腎臓の病気がある方は必ず医師に相談してください。

まとめ

寝ている時に足がつる 危険なサインと予防法 まとめインフォグラフィック — ①有痛性筋けいれんとは/②よくある原因(脱水・ミネラル不足・筋疲労・冷え・加齢・妊娠後期)/③薬の副作用(利尿薬・スタチン・ARB/ACE阻害薬・β刺激薬)/④隠れた病気(末梢神経障害・脊柱管狭窄症・ALS・甲状腺機能低下症・下肢動脈疾患)/⑤要注意の「つり方」5つ/⑥A受診の目安/Bつった時の対処/C予防する5つの習慣/3つのポイント
図:「寝ている時に足がつる」記事の全体まとめ。原因→危険サイン→受診の目安→予防までを1枚で整理

足がつる症状で覚えておきたい3つのポイント

  1. たまにつる程度はほとんど心配不要 ― 脱水・筋肉疲労・冷えが主な原因で、生活習慣の見直しで改善できます
  2. 頻繁につる・しびれを伴う場合は病気のサインかも ― 末梢神経障害や脊柱管狭窄症の可能性があり、脳神経内科で精査を受けましょう
  3. 薬の副作用もチェック ― 利尿薬やスタチンなど、普段のお薬が原因のこともあります。主治医に相談してみてください

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よくある質問(FAQ)

Q1: 芍薬甘草湯は効きますか?

はい、即効性がある漢方薬で、足がつった時の頓用として有効です。ただし長期連用は低カリウム血症のリスクがあるため、つった時の頓用にとどめましょう。定期的に服用する場合は必ず医師の指示に従ってください。

Q2: 足がつるのは脳梗塞の前兆ですか?

足のつり単独では脳梗塞を疑う根拠にはなりません。ただし、片側の麻痺・ろれつの回りにくさ・激しい頭痛を伴う場合は脳卒中の可能性があるため、すぐに119番に電話してください。

Q3: 毎晩つる場合はどうすればいいですか?

毎晩つる場合は、まず就寝前の水分補給とストレッチを試してみてください。それでも改善しない場合は、電解質異常や神経の問題がないか血液検査と神経学的な診察を受けることをおすすめします。

Q4: 運動中に足がつるのを防ぐには?

運動前の十分なウォーミングアップとストレッチ、運動中のこまめな水分・電解質補給が基本です。特に暑い時期は発汗でミネラルが失われやすいため、スポーツドリンクの活用も検討しましょう。

Q5: 足のつりとこむら返りは同じですか?

はい、基本的に同じ意味です。「こむら返り」はふくらはぎのつりを指す俗称で、医学的には「有痛性筋けいれん」と呼びます。ふくらはぎ以外(太もも・足の裏など)がつる場合も同じメカニズムです。

参考文献

1) Maisonneuve H, et al. Prevalence of cramps in patients over the age of 60 in primary care: a cross sectional study. BMC Fam Pract. 2016;17:111. DOI

2) Miller TM, Layzer RB. Muscle cramps. Muscle Nerve. 2005;32(4):431-442. DOI

3) Allen RE, Kirby KA. Nocturnal leg cramps. Am Fam Physician. 2012;86(4):350-355. PMID: 22963024

4) Katzberg HD. Neurogenic muscle cramps. J Neurol. 2015;262(8):1814-1821. DOI

5) Garrison SR, et al. Magnesium for skeletal muscle cramps. Cochrane Database Syst Rev. 2020;9(9):CD009402. DOI

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