子どもが「頭が痛い」と言ったら ― 親が知るべき判断基準|その症状、大丈夫? #18

お子さんが「頭が痛い」と訴えたとき、「大丈夫かな」「病院に行くべきかな」と迷った経験はありませんか?子どもの頭痛は実は珍しくなく、小中学生の約半数が頭痛を経験していると報告されています1)。多くは片頭痛か緊張型頭痛ですが、まれに髄膜炎・脳腫瘍・水頭症など見逃してはいけない病気が隠れていることもあります。

この記事では、脳神経内科医の視点から、子どもの頭痛の種類・大人の片頭痛との違い・頭痛ダイアリーの活用・危険なサインの見分け方・受診先の選び方・家庭でできる対処法を整理して解説します。

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子どもの頭痛 親が知るべき判断基準 インフォグラフィック ― 一次性頭痛(片頭痛・緊張型頭痛)と二次性頭痛(髄膜炎・脳腫瘍・水頭症)の見分け方、子どもの片頭痛の特徴(両側・短時間・嘔吐目立つ・顔色変化・寝ると治る・腹部片頭痛)、危険な頭痛の6サイン(突然の激痛・高熱と首のこわばり・日に日に悪化・朝の噴射性嘔吐・意識障害けいれん・視力低下複視)、年齢別受診先(中学生以下は小児科・高校生以上は脳神経内科や頭痛外来)、緊急度3段階(赤すぐ受診119番/黄早めに受診/緑様子見OK)、家庭でできる対処法(睡眠・規則正しい生活・画面時間制限・水分補給)、頭痛ダイアリーのすすめ

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📺 動画タイムスタンプ

  • 00:00 オープニング
  • 01:02 子どもの頭痛の現状と2つの種類
  • 01:37 子どもの「片頭痛」の特徴
  • 02:21 子どもに最も多い「緊張型頭痛」
  • 02:54 受診前に準備したい「頭痛ダイアリー」
  • 03:29 すぐに受診すべき「危険な頭痛」のサイン
  • 04:14 最も大切な判断基準は「いつもと違うかどうか」
  • 04:59 年齢別の受診先の選び方
  • 05:36 受診の目安 3段階(赤・黄・緑)
  • 06:22 家庭でできる対処法・生活習慣の見直し
  • 07:03 本日のまとめと次回予告

子どもの頭痛は珍しくない

子どもの頭痛は珍しいものではありません。50研究のシステマティックレビューでは、20歳未満の頭痛有病率は58.4%(95%CI 58.1–58.8)、片頭痛は7.7%と報告されています1)。日本国内でも小中学生の約3〜5割が頭痛を経験しているとされ、女子は男子より頭痛・片頭痛の頻度が高いことも分かっています1)5)。子どもだからこそ、頭痛を「甘え」と決めつけずに適切に対応することが大切です。

一次性頭痛と二次性頭痛

子どもの頭痛は大きく2種類に分けられます2)3)

種類 説明 代表的な病気
一次性頭痛 頭痛そのものが病気。引き起こす別の病気はない。多くは適切な対応で改善する 片頭痛、緊張型頭痛
二次性頭痛 別の病気が原因で起こる頭痛。頻度は低いが見逃してはいけない 髄膜炎、脳炎、脳腫瘍、水頭症

ポイント:子どもの頭痛のほとんどは一次性頭痛(片頭痛・緊張型頭痛)です。神経学的所見が正常で典型的なパターンを示す場合、ルーチンでの画像検査は不要とされています3)。一方で「いつもと違う頭痛」「神経症状を伴う頭痛」「日に日に悪化する頭痛」は二次性頭痛を疑うサインです。

子どもの片頭痛 ― 大人との違い

片頭痛は子どもにも起こりますが、症状が大人とは異なる点があります2)

子どもの片頭痛の特徴

  • 痛む場所:大人は片側が多いが、子どもは両側・おでこ全体が痛むことが多い
  • 持続時間:大人は4〜72時間だが、子どもは1時間程度から短いことが多い(ICHD-3小児片頭痛基準では2〜72時間に短縮)
  • 吐き気・嘔吐が目立つ:頭痛より嘔吐が前面に出ることがある
  • 顔色が悪くなる:青白い顔になることが多い
  • 寝ると治ることが多い:暗い静かな場所で休むと回復しやすい

注意:子どもの片頭痛は「お腹が痛い」と表現されることがあります。これは腹部片頭痛(abdominal migraine)と呼ばれるICHD-3の小児期周期性症候群の一つで、成長とともに典型的な頭痛の形に変化していくことがあります2)。繰り返す原因不明の腹痛も、片頭痛の可能性を念頭に置くことが大切です。

緊張型頭痛 ― 最も多い子どもの頭痛

子どもの頭痛の中で最も多いのが緊張型頭痛です。頭全体が締め付けられるような痛みで、以下のような特徴があります2)5)

緊張型頭痛の特徴

  • 頭全体が「ぎゅっ」と締め付けられるような痛み
  • 我慢できる程度の痛み(重度にはなりにくい)
  • 吐き気は少ない
  • 動いても悪化しない(片頭痛は動くと悪化する)

よくある原因

  • 学校でのストレス・友人関係の悩み・受験プレッシャー
  • スマホやゲームの長時間使用(眼精疲労・姿勢不良)
  • 睡眠不足・不規則な生活リズム
  • 猫背などの姿勢不良(首・肩の筋肉緊張)

生活習慣の見直しで多くは改善します。ストレスの原因を探ることも重要です。

片頭痛 vs 緊張型頭痛の比較

子どもの片頭痛と緊張型頭痛について、痛み方、動いたときの変化、吐き気や光・音への過敏を比較した図
片頭痛はズキズキして動くと悪化しやすく、吐き気や光・音のつらさを伴うことがあります。緊張型頭痛は締め付ける痛みで、動いても悪化しにくい傾向があります。(クリックで拡大)
特徴 片頭痛(子ども) 緊張型頭痛
痛む場所 両側・おでこが多い 頭全体
痛みの性質 ズキズキ・拍動性 ぎゅっと締め付け
強さ 中等度〜重度 軽度〜中等度
持続時間 2〜72時間(大人より短いことが多い) 30分〜数時間
吐き気 あり(目立つことも) 少ない
動作の影響 動くと悪化する 悪化しない
光・音過敏 あり 少ない
寝ると 治ることが多い やや改善する

頭痛ダイアリーのすすめ

子どもの頭痛について、起きた時刻、続いた長さ、痛む場所、痛み方、伴う症状、きっかけを記録する頭痛ダイアリーの図
頭痛のパターンを記録して受診時に見せると、医師が症状を整理しやすくなり、生活上のきっかけにも気づきやすくなります。(クリックで拡大)

お子さんが受診する前に「頭痛ダイアリー」をつけておくと、医師が正確に診断しやすくなります5)

記録するポイント6つ

  • いつ痛くなったか(日付・曜日・時間帯)
  • どのくらい続いたか(分〜時間)
  • どこが痛いか(おでこ・後頭部・片側など)
  • どんな痛みか(ズキズキ・ぎゅっと・ガンガン)
  • 他に症状があるか(吐き気・嘔吐・光や音が嫌など)
  • きっかけは何か(寝不足・テスト前・天気・運動後など)

1〜2週間分の記録があると、受診がとてもスムーズになります。記録が難しい小さなお子さんの場合は、親御さんが気づいたことをメモしておくだけでも十分です。「何曜日に多い」「テスト前に集中している」「特定の天気のときに出る」など、パターンが見えてくると生活改善のヒントにもなります。

危険な頭痛のサイン

次の症状がある場合は、脳腫瘍・髄膜炎・くも膜下出血など、見逃せない病気の可能性があります。すぐに受診してください3)

以下の症状があれば緊急受診が必要です
突然の激しい頭痛(「今まで経験したことがない痛さ」)→ くも膜下出血・脳出血の可能性
頭痛+高熱+首のこわばり+嘔吐 → 髄膜炎・脳炎の可能性。救急受診が必要
頭痛が日に日に悪化している → 脳腫瘍・水頭症の可能性
朝の頭痛+噴射性嘔吐(噴水のように吐く)→ 頭蓋内圧が上がっているサイン
意識がおかしい・けいれんがある → 119番で救急搬送
視力低下や複視(物が二重に見える)を伴う頭痛 → 眼科・神経疾患の可能性

Lewis 2002のPractice Parameterでは、神経学的所見が正常な反復性頭痛にはルーチンの画像検査は不要とされる一方、以下の5項目が頭蓋内占拠性病変の予測因子と報告されています3):(1) 頭痛発症から1か月未満、(2) 片頭痛の家族歴がない、(3) 神経学的所見の異常、(4) 歩行の異常、(5) けいれんの合併。これらが当てはまる場合は画像検査の検討対象となります。

「いつもと違う」を見逃さない

子どもの普段の頭痛パターンと、急に強くなる、休んでも悪化する、ぐったりするなどの普段と違う変化を比較した図
普段の頭痛パターンを知っておくと、急な変化や悪化に気づきやすくなります。いつもと違うと感じたら、受診をためらわないでください。(クリックで拡大)

子どもの頭痛の判断で最も大切なのは、「いつもと違うかどうか」です。普段のお子さんの頭痛パターンを把握しておくことが、異常を見つける最短の方法です3)

心配が少ないサイン 要注意サイン
痛み方が毎回似ている 今までにない激しい痛み
寝ると治る 寝ても治らない・悪化する
食欲があり元気 ぐったりして元気がない
遊ぶと忘れている 痛みで目が覚める
学校に行ける程度 頭痛で学校に行けないほど強い

小さいお子さんへの注意:言葉でうまく「頭が痛い」と言えない年齢のお子さんは、ぐずる・食欲が落ちる・頭を抱えるしぐさをする・光を嫌がるなどの行動で頭痛を表すことがあります。こうした行動の変化にも注目してください。

何科を受診する?

子どもの頭痛で受診する科は、原則として年齢で使い分けます。中学生以下は小児科、高校生以上は脳神経内科や頭痛外来が一般的な目安です5)

年齢 第一選択の受診先 理由
中学生以下
(小学生・中学生)
小児科 全身状態の評価・感染症の除外・体重に応じた薬剤量の調整など、小児領域の総合的な評価が必要なため
高校生以上 脳神経内科
または頭痛外来
身体は成人に近づき、片頭痛・緊張型頭痛の専門的な診療(予防薬・トリプタンを含む薬物療法、MRI判断)が可能なため

中学生以下 ― まずは小児科

かかりつけの小児科を第一選択にしてください。全身状態の評価ができ、感染症(風邪・インフルエンザなど)による頭痛の除外もできます。神経症状(しびれ・麻痺・視野異常)を伴うときや、画像検査・専門的な薬物療法が必要と判断された場合は、小児科から小児神経科に紹介してもらえます。

高校生以上 ― 脳神経内科や頭痛外来も選択肢

身体が成人に近づくため、脳神経内科や頭痛外来で大人と同じ診療体系の中で評価できます。繰り返す片頭痛や生活に支障の出る頭痛、神経症状を伴う頭痛は、脳神経内科・頭痛外来で予防薬・トリプタン・MRI判断などを含めた管理が可能です。

眼科も忘れずに

視力低下や斜視による眼精疲労が頭痛の原因になることがあります。学校の視力検査で「要検査」とされた場合は眼科受診を検討してください。

迷ったとき:かかりつけ医・かかりつけの小児科に相談すれば、必要に応じてより専門的な科(小児神経科・脳神経内科・頭痛外来・眼科)に紹介してもらえます。「どの科に行くべきか」で受診をためらわないことが何よりも大切です。

受診の目安 ― 緊急度3段階

緊急度 症状 対応
すぐ受診 突然の激しい頭痛+嘔吐
高熱+首のこわばり
意識がおかしい・けいれん
119番または緊急受診
早めに受診 頭痛が1週間以上続く
朝の頭痛が繰り返す
頭痛が日に日に強くなる
頭痛で学校を休む日が増えた
中学生以下:小児科
高校生以上:脳神経内科 / 頭痛外来
(頭痛ダイアリー持参)
様子見OK 一時的で寝ると治る
元気で食欲もある
いつもと同じパターン
生活習慣の見直しから
頭痛ダイアリーをつける

家庭でできる対処法

子どもの頭痛に対して、ご家庭でできる対処法をご紹介します5)

1. 十分な睡眠を確保する

睡眠不足は頭痛の大きな誘因です。就寝・起床時間を一定にして生活リズムを整えることが重要です。目安は小学生9〜11時間、中学生8〜10時間です。

2. 規則正しい食事

朝食を抜くと血糖値が下がり、頭痛の原因になります。食事を規則正しく取ることが大切です。また、脱水も頭痛の原因になるため、こまめな水分補給を心がけましょう。

3. 画面時間を制限する

スマートフォン・ゲーム・タブレットの長時間使用は眼精疲労や姿勢不良を招き、頭痛の原因になります。1日の目安としては1〜2時間以内を意識してください。

4. 安心できる環境を作る

学校でのストレスや対人関係の悩みが緊張型頭痛を引き起こすことがあります。子どもが「頭が痛い」と言ったときは、まず話を聞いてあげることが大切です。「甘え」と決めつけず、ストレスの原因がないか探ってみてください。

5. 頭痛時の対応

頭痛が出たときは、静かで暗い部屋で横にならせましょう。冷たいタオルを額や首に当てることで楽になる場合があります。市販の小児用解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン)は適量使用できますが、月10日以上の常用は避けてください4)

鎮痛薬の飲み過ぎに注意:子どもでも、鎮痛薬を月10日以上使用し続けると「薬物乱用頭痛(medication-overuse headache)」になり、慢性的な頭痛が起きやすくなります2)。「薬が効かなくなってきた」「毎日のように頭痛がある」という場合は医師に相談してください。

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まとめ

子どもの頭痛 3つのポイント

1. 多くは片頭痛か緊張型頭痛 ― 小中学生の半数近くが頭痛を経験しており1)、生活習慣の見直しで改善することが多い。子どもの片頭痛は大人と症状が異なるため、「お腹も痛い」「すぐ治る」場合も片頭痛(腹部片頭痛を含む)の可能性を疑って

2. 「いつもと違う頭痛」が受診の判断基準 ― 普段のパターンを知っておくことが重要。頭痛ダイアリーをつけておくと受診時に役立ち、生活改善のヒントにもなる

3. 高熱+嘔吐+首のこわばりは救急サイン ― 髄膜炎の疑いがあり、緊急性が高い。朝の頭痛の繰り返しや日に日に悪化する頭痛も脳腫瘍・水頭症のサインになる可能性があるため見逃さないで

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よくある質問(FAQ)

Q. 子どもが「頭が痛い」と言うのは仮病ですか?

子どもの頭痛を「仮病」と判断することは慎重にしてください。小中学生の多くが頭痛を経験しており、痛みは本物です1)。ただし、学校に行きたくないストレスが「頭痛」という形で出ることもあります。まず子どもの話を聞き、ストレスの原因がないかを探ることが大切です。身体的な原因と心理的な原因は並行して存在することもあります5)

Q. 子どもに市販の頭痛薬を飲ませてもいいですか?

小児用の解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン)は適切な用量であれば使用できます。Cochraneレビューでは、イブプロフェンも小児片頭痛の急性期治療として2時間後の疼痛消失で有意な効果が示されています4)。ただし、アスピリンは子どもへの使用は原則禁止(ライ症候群のリスク)です。服用する場合は必ず年齢・体重に合った用量を確認し、月10日以上の連用は避けてください2)

Q. 子どもの片頭痛は大人になると治りますか?

子どもの片頭痛は思春期以降に変化することが多く、特に男の子では改善・消失するケースも報告されています。一方、女の子では月経開始後に悪化することもあります。片頭痛は完全に「治る」というより、ライフステージに応じて変化していく慢性疾患として管理することが一般的です5)

Q. MRIを撮らなくても大丈夫でしょうか?

典型的な片頭痛や緊張型頭痛で神経学的所見が正常であれば、必ずしもMRIは必要ではありません3)。AAN/CNSの実践パラメータでも、神経学的検査が正常な反復性頭痛にルーチンの画像検査は推奨されていません。ただし、頭痛が日に日に悪化している、朝の頭痛が繰り返す、神経症状(しびれ・視野異常・麻痺)を伴う、けいれん合併、家族歴に片頭痛がない、などの場合は画像検査の検討対象となります3)

Q. 子どもにも予防薬を使いますか?

頭痛が月に何度も繰り返し日常生活に支障をきたす場合は、医師の判断のもとで予防薬を検討することがあります。中学生以下は小児科・小児神経科高校生以上は脳神経内科・頭痛外来が処方の主体となります。いずれもまずは生活習慣の改善が優先され、それで改善しない場合に薬物療法が選択肢になります5)。自己判断での投薬は避け、必ず医師に相談してください。

参考文献

1) Abu-Arafeh I, Razak S, Sivaraman B, Graham C. Prevalence of headache and migraine in children and adolescents: a systematic review of population-based studies. Dev Med Child Neurol. 2010;52(12):1088-1097. PMID: 20875042. doi:10.1111/j.1469-8749.2010.03793.x

2) Headache Classification Committee of the International Headache Society (IHS). The International Classification of Headache Disorders, 3rd edition. Cephalalgia. 2018;38(1):1-211. PMID: 29368949. doi:10.1177/0333102417738202

3) Lewis DW, Ashwal S, Dahl G, et al. Practice parameter: evaluation of children and adolescents with recurrent headaches: report of the Quality Standards Subcommittee of the American Academy of Neurology and the Practice Committee of the Child Neurology Society. Neurology. 2002;59(4):490-498. PMID: 12196640. doi:10.1212/wnl.59.4.490

4) Richer L, Billinghurst L, Linsdell MA, et al. Drugs for the acute treatment of migraine in children and adolescents. Cochrane Database Syst Rev. 2016;4(4):CD005220. PMID: 27091010. doi:10.1002/14651858.CD005220.pub2

5) 日本頭痛学会・日本神経学会監修. 頭痛の診療ガイドライン2021. 医学書院; 2021.