新しい薬を始めた後に発疹が現れたとき、薬疹は重要な鑑別です。一方で、感染症など薬以外の原因もあり、発疹の見た目だけでは原因を決められません。なかでも重症薬疹は、初期には一般的な薬疹と似て見えることがあります。皮膚だけでなく粘膜、発熱、全身状態、臓器障害を繰り返し評価し、服薬歴を時間軸に沿って整理することが大切です。1,2

まず重症徴候と全身状態を確認する
皮膚の痛み、水疱やびらん、急速に広がる皮疹、口唇・口腔・眼・外陰部などの粘膜病変、発熱、顔面浮腫、リンパ節腫脹、全身状態の悪化は重症薬疹を考える手がかりです。ただし、初回にすべてがそろうわけではありません。息苦しさ、血圧低下、意識障害などがあれば、アナフィラキシーなども念頭に皮疹の分類に先立って緊急対応します。1,2,4,9
SJS/TEN や DIHS が疑われるときは、原因が確定していなくても皮膚科へ速やかに相談し、入院や高次医療機関への紹介を検討します。SJS/TENを疑い眼の症状があれば眼科とも連携します。2疑わしい薬を整理し、治療上不可欠な薬についても処方医・薬剤師と代替策を検討します。抗てんかん薬などは中止に伴う発作リスクにも配慮しつつ、重症反応が疑われる薬の対応を遅らせないことが重要です。ラモトリギン錠「トーワ」の電子添文は、発疹発現時の早期の皮膚科専門医への相談を求め、発疹に特定の症状を伴う場合は直ちに中止するよう記載しています。中止が必要な場合は発作悪化に備え、代替治療を速やかに検討します。5
発疹の形から何を考えるか
写真を見る前に:以下は公表された症例の写真です。皮疹の見た目には個人差があり、写真だけで薬疹の病型や原因薬は確定できません。重症例の写真は開閉できる欄に掲載しています。

出典:He C, et al. Front Med. 2025;12:1671455. Figure 1/CC BY 4.0(原図を使用)

出典:Porr C, et al. J Clin Med. 2025;14:8504. Figure 1/CC BY 4.0(原図を使用)

出典:Porr C, et al. J Clin Med. 2025;14:8504. Figure 2/CC BY 4.0(原図を使用)
- 斑状丘疹型:紅斑と小さな丘疹が広がる型です。薬疹のほかウイルス感染なども鑑別に挙がります。見た目だけで軽症と決めません。4
- 蕁麻疹型:膨疹とかゆみを認めます。呼吸器症状や循環症状を伴う場合にはアナフィラキシーを念頭に直ちに対応します。9
- 固定薬疹:同じ薬への再曝露で同じ場所に繰り返し現れることが手がかりになります。7
- 小膿疱を伴う発疹:急性汎発性発疹性膿疱症(AGEP)を含めて評価します。
- 水疱・びらん、皮膚の痛み、粘膜病変:SJS/TEN などを念頭に置きます。これらは診断を確定する単独所見ではありません。
皮疹は形、分布、広がり方、痛みやかゆみ、粘膜所見を記録し、可能なら同意を得た写真を経時的な比較に役立てます。
重症薬疹:SJS/TEN、DIHS/DRESS、AGEP
SJS/TEN
SJS/TENの症例写真(皮膚障害の画像)
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出典:Johnson S, et al. Cureus. 2025;17:e87202. Figure 3/CC BY 4.0(原図を使用)(表示用画像は縮小、拡大先は原図)
SJS/TEN は皮膚や粘膜の障害を伴う重篤な病態です。初期所見だけで確定できないことがあり、経過と鑑別診断を含めて評価します。日本皮膚科学会の2025年基準では、TEN の主要所見に体表面積の10%を超える水疱・びらんが含まれ、国際基準に準じて10〜30%の表皮剥離を SJS/TEN オーバーラップと診断してもよいとされています。面積の数値だけで他の必須所見や鑑別を省略しないでください。2
DIHS と DRESS

出典:Roy S, et al. Case Rep Immunol. 2019;2019:1625010. Figure 2/CC BY 4.0(原図を使用)

出典:Roy S, et al. Case Rep Immunol. 2019;2019:1625010. Figure 3/CC BY 4.0(原図を使用)
薬剤性過敏症症候群(DIHS)は、皮疹、発熱、血液学的異常や臓器障害を伴う重症薬疹です。早期の皮疹は一般的な薬疹に似ることがあります。顔面浮腫やリンパ節腫脹は診断の手がかりですが、認めない時点で除外はできません。DRESS と DIHS は重なり合う概念ですが、診断基準は同一ではありません。DIHS ではヒトヘルペスウイルスの再活性化との関連が特徴として挙げられています。1
肝・腎機能や血算などを経時的に確認し、皮疹の改善後も必要なフォローを専門科と相談します。免疫抑制療法の選択は病型、臓器障害、感染症の鑑別を踏まえて専門家と判断します。
AGEP

出典:Mima Y, Ohtsuka T. Cureus. 2025;17:e82812. Figure 1/CC BY 4.0(原図を使用)
急性汎発性発疹性膿疱症(AGEP)は、広い範囲の紅斑と多数の小膿疱、発熱などを呈する病態です。膿疱性乾癬や感染症などとの鑑別が必要で、臨床経過と皮膚科の評価を組み合わせます。6 診断・管理の詳細は現行の専門資料を確認します。
薬剤歴は時間軸で整理する

処方薬や市販薬を含め、使用した薬剤名、剤形、投与経路と使用時期を確認します。薬ごとに、過去の反応や発疹・発熱が現れた時期を並べます。8直近の追加薬だけが原因とは限らず、薬剤ごと・反応型ごとに潜伏期間が異なります。中止後の経過も手がかりに加え、薬歴と臨床像をあわせて判断します。1,4,8
複数の候補がある場合、皮疹や臓器障害の経過、既知の副作用、他の原因を合わせて判断します。DIHSでは薬剤リンパ球刺激試験の結果が実施時期によって異なりうるため、検査の選択と結果の解釈は専門科に相談します。1重症の遅延型皮膚反応が疑われる場合は、専門科へ紹介して原因薬を評価します。8
検査と鑑別
全身状態と病型に応じて、血算・白血球分画、肝機能、腎機能、尿検査などを検討します。初期の結果が正常でも、後から臓器障害が現れる可能性を考え、症状と検査値を再評価します。必要に応じて皮膚生検や感染症の検査を追加します。感染症、自己免疫性水疱症、他の炎症性皮膚疾患などを、病歴と所見に応じて鑑別します。1,2
退院後・次の処方につなぐ記録
原因が確定したか疑いにとどまるかを区別し、疑われる薬剤名、剤形・投与経路、反応の内容、発現時期、服薬期間、今後避ける薬を記録します。専門科の評価結果も患者と医療者の間で共有します。8薬剤群全体の回避が必要かは、反応型や薬剤間の交差反応を踏まえて個別に判断します。8
まとめ
薬疹を疑ったら、皮膚と粘膜、全身状態、薬剤歴を同時に確認します。重症徴候があれば診断の確定を待たずに専門科と連携します。初回の所見が乏しくても経過を追い、原因薬の確実性を区別して記録することが、次の安全な処方につながります。
よくある質問
薬疹が疑われたら最初に何を確認しますか?
皮膚と粘膜、全身状態、薬剤歴を同時に確認します。重症徴候があれば診断の確定を待たずに専門科と連携します。
発疹が現れたとき、一番新しい薬が原因ですか?
直近の追加薬だけが原因とは限らず、薬剤ごと・反応型ごとに潜伏期間が異なります。薬歴と臨床像をあわせて判断します。
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参考資料
- 日本皮膚科学会. 薬剤性過敏症症候群診療ガイドライン2023. 日本皮膚科学会雑誌. 2024;134:559–580. 原資料
- 日本皮膚科学会 重症多形滲出性紅斑診療ガイドライン策定委員会. SJS/TEN診療ガイドライン補遺2025. 原資料
- PMDA. 重篤副作用疾患別対応マニュアル(医療関係者向け). 原資料
- Yan A, et al. Morbilliform Eruptions: Differentiating Low-Risk Drug Eruptions, Severe Cutaneous Adverse Reactions, Viral Eruptions, and Acute Graft-Versus-Host Disease. Am J Clin Dermatol. 2025;26:379-393. PMID 39888589. 原資料
- 東和薬品. ラモトリギン錠「トーワ」電子添文. 原資料
- 厚生労働省. 重篤副作用疾患別対応マニュアル 急性汎発性発疹性膿疱症. 2009. 原資料
- DermNet. Fixed drug eruption. 原資料
- NICE. Drug allergy: diagnosis and management. Clinical guideline CG183. 2014. 原資料
- 厚生労働省. 重篤副作用疾患別対応マニュアル アナフィラキシー. 2026年2月改定. 原資料
- 厚生労働省. 急性汎発性発疹性膿疱症 参考資料(副作用報告件数、2022年2月時点修正). 原資料