「ぶつけてしまった」
その瞬間は、誰でも頭が真っ白になります。初心者ならなおさらです。しかし、事故直後に大切なのは、誰が悪いかを考えることではありません。まず人命を守り、二次事故を防ぎ、警察へ知らせることです。
覚えておきたい6つの順番
止める → 守る・救う → 110番 → 確認する → 記録する → 保険会社
写真撮影や相手との話し合いは、その後です。この記事では、万一のときに迷わないための行動を、初心者向けに順番どおり説明します。
1.直ちに停止し、二次事故を防ぐ
まず車を止めます。そのまま走り去ってはいけません。ハザードランプを点灯し、周囲を確認します。可能なら、ほかの車の妨げにならない路肩や空地などへ車を移し、エンジンを切ります。ただし、けが人の救護が必要なときは、人命を優先してください。
道路交通法第72条は、事故を起こした運転者などに、直ちに停止し、負傷者の救護と道路上の危険を防ぐために必要な措置を取ることを求めています。[1][2]
発煙、燃料漏れ、火災のおそれがある場合は車から離れ、119番にも連絡します。安全を確認せず、車道へ飛び出したり、車の前後に立ったりしないでください。
2.けが人を確認し、必要なら119番
自分、同乗者、相手の運転者、歩行者などにけががないか確認します。少しでもけがが疑われる、反応が鈍い、出血している、強い痛みがある場合は119番へ連絡してください。判断に迷ったまま様子を見るより、状況を伝えて指令員の指示を受けるほうが安全です。
反応がなく、普段どおりの呼吸がない、または呼吸しているか分からない場合は、119番へ通報し、電話をスピーカーにして指令員の指示に従います。周囲に人がいれば、AEDを持ってきてもらいます。安全に実施できるなら胸骨圧迫を開始します。[3][4]
出血には、ガーゼや清潔な布を当てて圧迫します。頭や首を強く打っている可能性がある人は、むやみに動かしません。ただし、後続車や火災など差し迫った危険がある場合は、安全な場所への移動を優先します。
119番では、まず「交通事故です」と伝え、場所、けが人の人数、意識や呼吸の状態、出血の有無を答えます。住所が分からなければ、交差点名、店、橋、電柱番号など近くの目印を伝えましょう。
3.小さな物損事故でも110番する
けが人への対応と安全確保をしたら、110番します。「バンパーを少しこすっただけ」「相手が大丈夫と言った」という場合でも、当事者だけで終わらせないでください。日本損害保険協会も、人身事故・物損事故のどちらも直ちに警察へ届けるよう案内しています。[5]
警察には、次の内容を落ち着いて伝えます。
- 事故が起きた日時と場所
- けが人の人数と、おおよその状態
- 壊れた車や物と、その程度
- 道路をふさいでいるか、危険物や燃料漏れがあるか
- 救護や車の移動など、すでに行ったこと
警察官から現場で待つよう指示された場合は、安全な場所で待機します。警察へ届けないと、後に保険手続などで必要になる交通事故証明書が発行されず、トラブルになるおそれがあります。
4.相手の情報を確認する
安全が確保され、警察への連絡を終えたら、相手と次の情報を交換します。
- 氏名、住所、電話番号
- 車のナンバー
- 加入している保険会社・代理店
- 車の所有者が運転者と違う場合は、その関係と連絡先
免許証などで表記を確認しても、無断で撮影したり、必要以上の個人情報を求めたりしないようにします。相手が興奮している、威圧的、話が通じない場合は距離を取り、警察官の到着を待ちましょう。
5.安全な範囲で現場を記録する
人命救助と二次事故防止より、撮影を優先してはいけません。安全が確保できた後で、スマートフォンなどを使って記録します。[6]
- 事故現場の全体像と車の位置関係
- 双方の車の損傷部分
- 路面のタイヤ痕、落下物、信号、標識
- 天候、明るさ、路面状態
- 相手車両のナンバー
事故までの経緯も、記憶が新しいうちに時系列でメモします。ドライブレコーダーは機種の説明書に従い、事故映像が上書きされないよう保存・保護します。目撃者がいれば、無理のない範囲で氏名と連絡先を聞きます。
撮影した画像や相手の情報をSNSへ投稿してはいけません。記録は警察、保険会社、必要な専門家への説明のために使います。
6.保険会社・代理店へ連絡する
現場での救護と警察への届出が済んだら、自分が加入している任意保険の事故受付窓口または代理店へ、できるだけ早く連絡します。契約内容が分からなくても、氏名、車のナンバー、事故の日時と場所、相手の情報、けがや損傷の状況を伝えれば案内を受けられます。車を動かせない場合は、保険に付帯するロードサービスも確認しましょう。
事故現場で、過失割合や賠償額を決めたり、「全額支払います」と約束したり、現金を渡したりしないでください。事故直後には、けがや損傷の全体が分かりません。事実を落ち着いて伝え、交渉は保険会社などへ相談して進めます。[5][6]
高速道路では「車外の安全な場所へ全員避難」が最優先
車内や車の前後で待たない。可能な範囲で後続車へ合図し、全員がガードレール外などへ避難してから通報します。
高速道路で停止した車の周囲や車内にとどまると、後続車に追突される危険があります。可能な範囲でハザードランプ、発炎筒、停止表示板により後続車へ合図し、運転者も同乗者も、車より後方のガードレール外など安全な場所へ避難します。[7]
避難してから110番、119番、非常電話などで通報します。車の前後や路肩を歩き回ったり、その場で当事者同士の話し合いを始めたりしないでください。現場の状況により安全な行動は変わるため、警察・消防・道路管理者の指示を優先します。
事故直後に避けたい5つの行動
- そのまま立ち去る
- けが人より先に写真を撮る
- 物損だからと警察へ届けない
- その場で過失割合や賠償を約束する
- 相手と口論したり、事故情報をSNSへ投稿したりする
謝罪の気持ちや相手を気遣う言葉は大切です。一方で、事故原因や責任をその場で決めつけず、確認できた事実を警察と保険会社へ正確に伝えましょう。
今日のうちにできる「5分の準備」
事故は、準備している人だけに起きるわけではありません。運転を始める前に、次の4点を確認しておくと安心です。
- 保険会社の事故受付番号と証券番号をスマートフォンに登録する
- 発炎筒と停止表示板の場所・使い方を確認する
- ドライブレコーダーの事故映像保存方法を確認する
- スマートフォンのメモに「119・110・保険会社」の順番を残す
事故直後に完璧に振る舞う必要はありません。まず深呼吸し、停止、安全確保、救護、通報までを一つずつ進めてください。冷静さとは、怖くないことではなく、怖くても決めた順番に戻れることです。
※本記事は2026年8月24日時点の公的情報等に基づく一般的な案内です。実際の現場では、自身の安全を確保したうえで、警察官、消防の通信指令員、道路管理者、保険会社の指示に従ってください。個別事故の法的責任や過失割合を判断するものではありません。