
視神経炎は視力低下や視野障害、眼痛を主症状とする疾患ですが、その診断は容易ではありません。その理由の一つは眼科所見が乏しい場合があることです。特に球後視神経炎(きゅうごししんけいえん)では、患者さんは「何も見えない」のに医師が眼底を見ても異常が分からないという状況になりがちです。
📑 目次
はじめに(視神経炎の診断が難しい理由)
視神経炎は視力低下や視野障害、眼痛を主症状とする疾患ですが、その診断は容易ではありません。その理由の一つは眼科所見が乏しい場合があることです。特に球後視神経炎(きゅうごししんけいえん)では、患者さんは「何も見えない」のに医師が眼底を見ても異常が分からないという状況になりがちです。視神経炎には視神経乳頭が腫れるタイプ(視神経乳頭炎)と眼底が正常に見えるタイプ(球後視神経炎)があります。後者では眼底検査で異常所見がなく、視力低下の訴えだけで判断しなければならないため、診断が難しくなるのです。
また、視神経炎に似た症状を示す疾患が多く、鑑別診断が広いことも困難さの原因です。実際、視神経炎と紹介受診した患者さんの約6割は誤診(他の疾患だった)との報告もあります[1]。例えば片眼の視力低下と眼球運動時痛があれば視神経炎を強く疑いますが、同じ症状を示す疾患(偏頭痛や虚血性視神経症、機能性視覚障害など)も存在します[2][3]。痛みだけに頼った診断や、MRI所見の過剰な解釈による誤診も指摘されています[4]。したがって、一つの所見だけで断定せず総合的な評価を行うことが重要です。
視力・色覚・視野の基本的評価
視神経炎が疑われる患者では、まず基本的な視機能の評価が欠かせません。具体的には視力、色覚、視野の検査が重要です。
視力検査
現在の視力を定量的に把握する基本検査です。視神経炎では通常、急激な視力低下が起こります[5]。程度は軽い霧視から矯正視力0.1以下の重度低下まで様々で、中心暗点があれば著しく視力が下がることが多いです[6]。一方、軽症例では視力低下がわずかで見逃されることもあるため、他の指標と併せて評価する必要があります。
色覚検査
視神経の障害では色の見え方が変化することが知られています。特に赤色があせて見える(赤の飽和異常)ことが多く、赤~緑の色覚低下が初期から現れやすいです[7][8]。例えば左右の目で赤い物を見るテスト(赤色飽和テスト)をすると、患眼では赤がくすんで暗く見える場合があります[9]。色覚異常は視神経伝導の低下を反映する症状であり、視神経炎の手がかりになります[9][9]。なお先天色覚異常との鑑別も必要ですが、視神経炎による色覚異常は後天的で、赤緑系に障害が出ることが多い点が特徴です[10]。
視野検査
視神経炎では視野の一部に欠損が生じることが一般的です。典型的なのは中心暗点(視野の中心部分が見えない)で、文字や物の中心が抜け落ちて見えると患者は訴えます[11]。他にも輪状暗点や視野全体のぼやけなど様々ですが、中心部の視野障害が多い傾向があります[12]。視野検査は閾値静的視野検査(ハンフリーなど)で定量的に評価するのが望ましいですが、簡便な対面視野(指揮動法)でも左右差や欠損の有無を確認できます。視野異常は患者の訴えと合致しやすく、視神経炎の部位(中心束の障害など)を推定する材料になります。
対光反射(RAPD)
以上のように、視力・色覚・視野・対光反射といった基本検査だけでも視神経炎の可能性をかなり高く疑うことができます。ただし、症状が軽微な場合や他覚所見が乏しい場合には、今回取り上げる特殊検査が診断の助けとなります。以下では、中心フリッカー値、OCT、VEP、MRIといった検査について一つずつ見ていきましょう。
中心フリッカー(CFF)とは何か
中心フリッカー値(CFF: critical flicker frequency)検査は、視神経の機能障害を鋭敏に検出できる検査です[14]。患者さんに点滅する光を見てもらい、その点滅が分からなくなる(光がちらつかず連続光に見える)臨界の周波数を測定します[15][16]。具体的には、片眼ずつ検査器に覗き込んでもらい、光の点滅速度を徐々に上げていきます。患者さんが「もうちらつきが見えない」と感じたところの周波数をCFF値とします[15](逆方向にゆっくり下げて再びちらつきを感じた点を測定する方法もあります[16][15])。
結果はHz(ヘルツ)で表され、健常人ではおおむね35Hz以上が正常とされます[17]。視神経炎など視神経障害があると、この値が低下します。先述の通り視神経の炎症で視神経の伝導速度が落ちるため、神経の不応期(連続刺激に反応できない期間)が延長し、高速の点滅についていけなくなるからです[18][19]。例えば正常眼で40Hzまで知覚できるところ、視神経炎の眼では20Hz程度でちらつきを感じなくなる、といった具合です。実際の症例でも健眼:33〜36Hz、患眼:13〜18Hzと大きな左右差を示した報告があります[20]。CFFは視神経の伝導低下を示す証拠であり[21]、臨床的にも視神経炎の初期診断に最も鋭敏とさえ言われます[22]。
一方、限界としては患者の協力が必要な検査である点が挙げられます。光のちらつきを感じたかどうかは患者さんの主観によるため、検査の理解度や集中力に結果が左右されます。また視力が極端に悪い場合(0.05未満)は検査自体が難しいとも言われます[17]。さらにCFF低下は視神経障害に概ね特異的ですが、重度の網膜疾患(特に錐体細胞障害)でも低下し得る点には注意が必要です[26][27]。それでも、短時間(両眼で5分程度)で非侵襲的に実施できる有用な検査として、CFFは視神経炎が疑われる場面で積極的に活用されます。
OCTとその見方(RNFL/GCL)
OCT(光干渉断層計:Optical Coherence Tomography)は、網膜の断面構造を高解像度で描出できる画像検査です。簡単に言えば光の超音波検査のようなもので、網膜に弱い光を当てて各層からの反射を解析し、網膜の厚みや構造をミクロン単位で測定します[28][29]。視神経炎の評価では特に網膜神経線維層(RNFL)と神経節細胞層(GCL)という二つの層の厚みを確認します[30][31]。
RNFL(網膜神経線維層)
網膜の最も内側(眼底側)にあり、視細胞からの信号を脳へ伝える視神経線維(軸索)が走る層です[32]。視神経乳頭(視神経円板)を中心に円周状に分布するため、OCTでは視神経乳頭周囲のRNFL厚(cpRNFL)を測定します[33]。正常値は個人差がありますが、平均で100マイクロメートル前後と言われます。OCT解析ソフトは測定結果を年齢別の正常データベースと比較し、厚みが有意に薄ければ赤色表示(異常)、やや薄ければ黄色(境界)といった偏差マップを示します。
視神経炎では、発症後しばらく経つとRNFLが菲薄化(萎縮)するのが特徴です[33]。これは炎症による軸索障害で視神経線維が減少するためで、重度の視神経炎ほど薄くなります。研究では、急性期から3〜6か月後にRNFLが明らかに薄くなり、その程度が視力予後と相関するとの報告もあります[34][35]。したがって、片眼性の視神経炎では健眼との比較でRNFL薄化が確認できれば、過去の視神経炎の証拠となりますし、慢性期の機能予測にも役立ちます。
GCL(神経節細胞層)
網膜の中心部(黄斑部)に多く存在する神経節細胞の細胞体の層です[32]。視神経の軸索はこの細胞体から伸びており、RNFLとGCLは表裏一体の関係にあります[36]。OCTでは黄斑領域の内層厚(GCL+内網状層、装置によってはGCL+IPLやGCCとも表示)を測定し、左右差や正常値との乖離を見ます。
視神経炎では、RNFL同様にGCLも時間経過とともに菲薄化します[33]。特に急性期に視神経乳頭が腫れている場合(乳頭炎型の視神経炎)、RNFL厚はむしろ一時的に増加して正常な軸索障害の評価が難しいことがあります[33]。その点、黄斑部のGCL厚であれば乳頭浮腫の影響を受けず、早期から神経節細胞のダメージ(軸索変性)を検出できる可能性があります[33]。実際、視神経炎や虚血性視神経症では乳頭周囲RNFL厚より黄斑内層厚の方が早期診断に有用との報告があります[37][38]。したがってOCTレポートでは、視神経円板周囲のRNFLマップと黄斑のGCL厚マップを両方確認することが重要です。
OCTの意義と限界
OCTの意義は、視神経の構造的ダメージを客観的に定量化できる点にあります。視力や視野は患者さんの協力に左右されますが、OCTなら他覚的に軸索障害の有無と程度を評価できます[39]。例えば不定愁訴で視力検査に信頼性がない場合でも、OCTで明らかなRNFL菲薄化があれば器質的障害を示唆できますし、逆にOCTが正常であれば重大な視神経障害の可能性は低いと判断できます。また経時的な変化を追えるのも利点です。治療介入の効果や神経変性の進行をモニタリングする目的で、数ヶ月〜年単位でOCTを繰り返し測定することもあります[40][41]。特に多発性硬化症(MS)のように慢性的な神経変性が問題となる疾患では、RNFL/GCLの漸減があれば進行性の障害を示唆し、治療強化の判断材料にもなり得ます[42]。
限界としては、OCT所見が即時的な診断には直結しにくい点が挙げられます。視神経炎の急性期にはRNFLが正常か腫脹傾向にあることも多く、その場で診断確定する手段にはなりません。OCTで明らかな萎縮が見られるのは発症から数週間〜数ヶ月後であることが多いため[34][43]、急性期診断よりも既往の確認や後遺症評価に適しています。またOCTは重度のマスキング要因(高度な白内障や硝子体混濁)には弱く、画像が取得困難な場合もあります。しかし総じて、安全で苦痛なく再現性高く測定できるため、視神経炎のフォローアップには非常に有用な検査と言えるでしょう[33][39]。
VEPの特徴と読み方
視覚誘発電位(VEP: Visual Evoked Potential)は、視覚刺激に対する大脳視覚野の電気活動を記録する検査です[44]。頭皮上に電極を装着し、視覚入力により後頭部で発生する微小電位の変化を捉えます。視神経から視路を経て視覚野に至る視覚伝導路の機能を評価できるため、特に視神経の伝導障害を検出するのに有用です[45]。
フラッシュVEPとパターンVEP
VEPにはフラッシュVEPとパターンVEPの2種類の刺激法があります[46]。フラッシュVEPは単純な点滅光刺激で、重度視力低下や小児でも施行可能ですが、波形の個人差が大きく定量評価には不向きです[47][48]。一方、パターンVEPは市松模様のパターンを一定周期で反転させる刺激で、患者さんにその中心を凝視してもらい記録します[49][50]。パターンVEPでは比較的一定した波形が得られ、特にP100と呼ばれる正のピーク波(約100ミリ秒付近)の潜時(latency)と振幅が重要な指標となります[51][50]。正常ではP100潜時はおおよそ100〜110ms前後で、個人差が小さいため基準値とされています[52]。振幅(波の高さ)は個人差が大きいので左右差を主に評価します[48][53]。
視神経炎のVEP所見
視神経炎のVEP所見として典型的なのは、P100潜時の延長(遅延)です[54]。視神経の脱髄によりインパルス伝導速度が低下すると、大脳に信号が届くまでの時間が遅れるためです[55]。例えば正常が100ms程度のところ、視神経炎では120ms以上に遅延するといった具合です(※装置や検査条件で基準値は若干異なりますが、130ms超なら明らかな異常と考えます[52])。
一方、波形振幅の低下も視神経炎でしばしば見られます[56]。重度の軸索障害がある場合、視覚野に届く信号自体が弱まるため波形が小さくなったり、場合によっては消失することもあります[56]。ただし振幅は他の要因(患者の集中や網膜機能など)にも影響されるため、潜時の延長の方が視神経脱髄の指標として信頼性が高いです[57]。実際、黄斑疾患では視神経が正常でも入力信号量低下で振幅減少を示す一方、視神経障害では入力遅延で潜時延長を示す、と整理されています[54]。
VEPの意義と限界
VEPの意義は、サブクリニカルな視神経障害を検出できることにあります[45]。例えば患者が自覚する視力低下が無くても、VEP上で潜時延長があれば潜在的な脱髄が疑われます[45]。多発性硬化症(MS)の診断基準でも、他の視覚症状がなくともVEP異常が客観的証拠として考慮されることがあります。また他覚的検査なので、心因性視力障害との鑑別にも有用です。心因性ではどんなに視力が悪いと訴えても視覚経路は正常なため、VEP波形は正常範囲を示します[60]。実際、疑わしい小児例でVEPを行い片眼のP100遅延を確認したことで、レーベル病(遺伝性視神経症)の診断に至ったという報告もあります[61]。
限界としては、VEPは専門設備を要し、検査にある程度時間がかかる点が挙げられます。また患者の協力度(特にパターンVEPでは指標を凝視する必要)が不足すると、不良波形で正確な判定ができません[62]。高度視力低下でパターンが見えない場合はフラッシュ法に頼らざるを得ず、その場合は定量性が落ちるというジレンマもあります[48]。さらに古い障害なのか新しい障害なのかをVEP単独で判別することは困難です(潜時延長や振幅低下は長期に残存しうるため)。それでも、非侵襲で視神経機能を客観評価できる意義は大きく、視神経炎のみならず視神経症全般の評価・診断に重要な電気生理検査として位置づけられています[45]。
MRIで見るべきポイント
MRIは視神経炎の診断や鑑別において極めて重要な検査です。眼球から脳へ向かう視神経の走行を直接描出でき、炎症や腫瘍など構造的異常を確認することができます。
視神経そのものの評価
視神経炎が疑われる場合、まず視神経そのものの評価が必要です。MRI検査ではT2強調画像(脂肪抑制T2WIやSTIR)で視神経の高信号を探し、加えて造影T1強調画像(脂肪抑制)で造影増強効果がないか確認します[23]。急性期の視神経炎では、炎症により視神経が腫脹しT2で明るく映るとともに、造影剤投与後に視神経が造影され(ガドリニウム造影効果陽性)ます[23][63]。この所見は活動性の炎症の存在を示すものです[23][64]。特に冠状断(Coronal)の画像が視神経全体を追いやすく、有用とされています。
実際の例では、左眼の急性視神経炎で左視神経が全体に膨れて高信号を呈し、造影でも明らかに突出して映るといったMRI所見が報告されています[24]。一方、慢性期(陳旧性)の視神経炎では、炎症が治まった後に視神経が萎縮することがあります[65]。この場合、造影効果は消失し、T2でも信号は落ち着きますが、視神経が細くなり、代わりに視神経鞘周囲のくも膜下腔が広がって見えることがあります[66]。したがって、MRIで視神経の太さ・信号・造影状況を確認することで、炎症の有無やフェーズをある程度推測できます。
背景疾患の検索
MRIのもう一つのポイントは、視神経炎の背景にある疾患の有無を探ることです。視神経炎は特発性(原因不明)も多いものの、中枢神経の脱髄疾患(多発性硬化症MSや視神経脊髄炎NMOSD)に伴って起こるケースが少なくありません[67]。特に若年成人で初発の視神経炎では、将来的にMSへ移行するリスク評価のため脳内の病変検索が推奨されます[68]。
MS関連の視神経炎なら、MRIのFLAIR画像で脳室周囲や皮質下に非対称性の脱髄病変が見つかることがあります[69]。NMOSD(視神経脊髄炎)であれば、視神経の障害範囲が長く(しばしば視交叉に及ぶ)かつ脊髄病変の有無も重要です[70][71]。従って、MSやNMOSDを疑う所見(例えば片眼にとどまらず両眼性かつ重度、再発性、他の神経症状合併など)がある場合は、頭部全体MRIや脊髄MRIも追加撮影します[72]。
鑑別診断への活用
さらにMRIは鑑別診断にも有用です。視神経炎と症状が似て非なる疾患として、視神経鞘髄膜腫(視神経を取り囲む髄膜の腫瘍)や虚血性視神経症などが挙げられます[73]。視神経鞘髄膜腫ではMRIで視神経を取り囲むように造影されるtram-trackサインが見られ、視神経炎とは異なるパターンです[74]。虚血性視神経症(NAION)では通常造影されず視神経の特定部位だけ萎縮するなど、こちらも像が異なります[75]。このように、MRI所見は他の疾患を除外し、視神経炎と確定する助けともなります。
実臨床での組み合わせ方(どの検査がどこで役立つか)
以上述べたように、視神経炎の評価には様々な検査が存在し、それぞれ得意な情報と限界があります。実臨床ではこれらを組み合わせて総合判断することが重要です。一つの検査結果だけで決めつけず、多面的に患者さんの状態を評価しましょう。
初診時のアプローチ
まず基本的視機能検査(視力・色覚・視野・対光反射)で大まかな見立てを立てます。ここで明らかな片眼視力低下、赤色飽和低下、中心暗点、RAPD陽性といった所見が揃えば視神経炎を強く疑います。その段階で、可能であれば中心フリッカー値を測定するとよいでしょう。CFFは短時間で実施でき、例えば視力が0.8と比較的保たれているケースでもCFFが異常低値なら「やはり視神経の障害がありそうだ」と診断を後押ししてくれます[25]。逆に症状ほどにはCFF低下が乏しければ、機能性障害の可能性も念頭に置く必要があるかもしれません(とはいえ通常は視力低下が強いほどCFFも低下します)。
VEPについては、多くの場合すぐには結果が出ない(検査予約や解析に時間がかかる)ため、急性期の治療判断には直接寄与しにくいです。しかし、MRIで明らかな視神経炎像がない場合や、症状の割に他覚所見が少ない場合などには、後日VEPを行うことで潜在的な視神経障害の有無を確認できます[45]。例えば「視力低下と色覚異常はあるがMRIで炎症が捉えられなかった」というケースでも、VEPでP100潜時延長が出れば視神経炎と診断しやすくなります。
MRIの位置づけ
MRIは、急性期において他疾患の除外と重症度評価に欠かせません。急激な視力低下+眼痛の患者ではステロイドパルス療法を考慮するためにも、脳MRIでMSの既存病変がないか、視神経の造影効果がどの程度かをチェックします[68][23]。仮にMRIで視神経に炎症所見が無く、代わりに視交叉近くに腫瘍様の造影があれば、それは視神経鞘髄膜腫かもしれません[73]。そうした鑑別転換もMRIで可能です。したがって治療前に可能な限りMRI撮像することが望ましいですが、難しければ治療開始後でも構わないので早期に行っておきたいところです。
OCTの活用タイミング
OCTはサブアキュート〜慢性期の評価や経過観察に有用です。急性期にはあまり変化がなくとも、1〜3か月後に再度OCTを行えばRNFLやGCLの変化が見られることがあります[34]。これにより、「どの程度の神経線維が失われたか」「後遺症の程度はどれくらいか」を客観的に把握できます。例えば治療後に視力は回復したもののOCTでRNFLが大幅に薄くなっていれば、実は視神経は大きくダメージを受けており、将来再発時の予備能が低下しているといった示唆が得られます。またMS/NMOSD管理中の患者では定期的なOCT計測で緩徐な進行をモニターできます[42]。さらに、視神経炎を繰り返している疑いの患者では左右差の推移を見ることで、再発の痕跡や新たな萎縮を検知できるでしょう。
各検査の役立つ場面のまとめ
| 検査 | 主な役割 | 活用場面 |
|---|---|---|
| 視力・色覚・視野・RAPD | 第一次スクリーニング | 視神経炎の疑いが強いかを判断。RAPDは片眼性障害の客観的証拠 |
| CFF(中心フリッカー値) | 早期発見と経過フォロー | 軽度障害も鋭敏に検出[25]。視力回復後も残る障害のチェック |
| VEP(視覚誘発電位) | 客観的な伝導評価 | MRIで不明瞭な場合の補強診断[45]。非器質性障害の除外。MSの電気生理学的証拠蓄積 |
| MRI | 確定診断と鑑別 | 視神経炎の証明[23]、MS/NMOSDの評価[72]、腫瘍など他疾患の除外。治療方針決定の参考 |
| OCT | 構造的ダメージの定量化 | 後遺症評価と予後推定。慢性期の進行モニタリング[33]。他覚所見として患者説明にも有用 |
まとめ(多面的評価の必要性)
視神経炎の診断・評価には、多面的なアプローチが必要です。一つの検査結果だけで断定するのは危険であり、臨床症状・身体所見・機能検査・画像検査のすべてを総合して判断すべきです[3]。視神経炎はときに診断が難しく、また見落とせば失明のリスクもある疾患です。しかし逆に過剰診断して無用な治療を行えば副作用など患者負担につながります[5]。そのバランスを取るためにも、様々な検査から得られる情報を突き合わせて整合性を考えることが大切です。
眼科以外の医師にとっては、OCTやVEP、CFFといった検査は馴染みが薄いかもしれません。しかし本記事で述べたように、それぞれ視神経炎の評価において有用な役割を果たします。