その頭痛、貧血のサインかもしれません|鉄不足と頭痛の関係・受診の目安をやさしく解説

頭痛が続く、疲れやすい、立ちくらみがする——その頭痛は「貧血(鉄不足)」のサインかもしれません。鉄が足りないと体に酸素が行きわたりにくくなり、頭痛やふらつきが起こることがあります。とくに月経のある女性では、鉄欠乏と片頭痛の関連も報告されています。この記事では、貧血で頭痛が起こる仕組み、自分で気づくためのセルフチェック、そして「受診すべき危険なサイン」と何科に行けばよいかを、神経内科・総合内科専門医がやさしく解説します。

📊 動画を見る時間がない方へ ― スライド資料をご用意しています

本動画で使用した全16枚のスライドを、Web上で閲覧またはPDFでダウンロードできます。要点だけ素早く確認したい方はこちらをご利用ください。

📖 スライドを閲覧(全16枚) 📄 PDFをダウンロード

貧血と頭痛の仕組み・セルフチェック・受診の目安の図解

※ 画像をクリックすると原寸大で表示できます

キーメッセージ
鉄が足りないと体に酸素が行きわたりにくくなり、頭痛やふらつきが起こることがあります。鉄不足と片頭痛は関連が報告されており、とくに月経のある女性で多くみられます。ただし大切なのは、貧血は「体からのサイン」だということ。原因を調べる前に鉄剤を自己判断で飲み続けないでください。まずは内科で血液検査を受け、貧血の原因をはっきりさせることが、頭痛の改善にも安全にもつながります。

1. その頭痛、「貧血」が隠れているかもしれません

「最近、頭痛が増えた」「鎮痛薬を飲んでもなんだかスッキリしない」。そんなとき、頭痛そのものだけに目が向きがちですが、背景に貧血(ひんけつ)が隠れていることがあります。貧血とは、血液の中で酸素を運ぶ「ヘモグロビン」が少なくなった状態のこと。その最も多い原因が、ヘモグロビンの材料である鉄が足りなくなる「鉄欠乏性貧血(てつけつぼうせいひんけつ)」です。

実際に、鉄欠乏性貧血の人を調べた研究では、その多くが頭痛を経験しており、慢性的な頭痛と鉄欠乏性貧血との関連も報告されています1,3。「頭痛持ちだから」とあきらめていた症状が、実は鉄を補うことで楽になるケースもあるのです。この記事では、その仕組みと、自分で気づくためのポイント、そして安全に対処するための受診の目安を順番に見ていきます。

2. なぜ貧血で頭痛が起こるのか ― 酸素を運ぶ力の低下

私たちの体は、血液中のヘモグロビンが酸素を全身に運ぶことで動いています。鉄はそのヘモグロビンを作るための欠かせない材料です。鉄が不足してヘモグロビンが減ると、体じゅうに運べる酸素の量が少なくなります。とりわけ酸素をたくさん必要とする脳は、その影響を受けやすい臓器です。

脳が「酸素が足りない」と感じると、体はなんとか酸素を届けようとして血管を広げたり、心臓の拍動を速めたりして補おうとします。こうした体の反応や、脳への酸素供給の低下が、頭痛・ふらつき・立ちくらみ・動悸(どうき)といった症状につながると考えられています2

さらに鉄は、酸素を運ぶだけでなく、脳の中で神経のはたらきや痛みの調整にも関わっています。そのため鉄不足は、単に「酸素が足りない」だけでなく、頭痛、とくに片頭痛そのものを起こりやすく・悪化させやすくする方向にはたらく可能性が指摘されています2

3. 鉄不足と片頭痛 ― とくに女性・月経と関係が

鉄欠乏性貧血と頭痛の関係は、とくに女性でよく注目されています。月経(生理)のある女性は、毎月の出血で鉄を失うため、もともと鉄が不足しやすい状態にあります。

研究では、鉄欠乏性貧血の人の多くが頭痛を経験しており、およそ3人に1人が片頭痛の基準を満たしたと報告されています3。また、片頭痛のある人では鉄欠乏性貧血がより多くみられ、とくに月経に関連した片頭痛と鉄欠乏性貧血との関連が示されています4,5。鉄の貯金にあたる「フェリチン」という値が低いほど、頭痛のつらさが強い傾向も報告されています5

大切な注意
これらは「鉄不足と片頭痛に関連がある」という報告であり、「鉄を飲めば誰でも頭痛が治る」という意味ではありません。鉄を補うことで片頭痛が和らぐ可能性は、鉄欠乏性貧血があると確認された人で報告されているもので2、自己判断ではなく医師の診断のもとで行うことが前提です。

4. 貧血のセルフチェック ― 頭痛+このサインに注意

頭痛だけでは、その原因が貧血かどうかは分かりません。けれども、頭痛に加えて次のようなサインがそろうときは、貧血(鉄不足)が背景にある可能性が高まります。当てはまるものがないか、チェックしてみてください。

頭痛+このサインは「鉄不足」かも(セルフチェック)
☐ 疲れやすい・体がだるい・気力が出ない
☐ 少し動いただけで動悸・息切れがする
☐ 顔色や唇、まぶたの裏が白っぽい
☐ 爪が反り返る(スプーン爪)・割れやすい
☐ 氷を無性にバリバリ食べたくなる(氷食症〔ひょうしょくしょう〕)
☐ 夕方〜夜に脚がむずむずして眠れない(むずむず脚)6

「氷をやたらと食べたくなる」「脚がむずむずして眠れない」は、一見すると貧血と結びつきにくいのですが、どちらも鉄不足のときにみられやすいサインとして知られています。とくにむずむず脚は、脳の鉄不足が関わるとされ、片頭痛と併せ持つ人が多いことも報告されています6。複数当てはまる場合は、一度血液検査を受けてみる価値があります。

5. やってはいけないこと ― 鉄剤を自己判断で飲み続けない

「鉄不足かもしれないなら、市販の鉄サプリを飲めばいい」——そう考えたくなりますが、ここに大きな落とし穴があります。鉄欠乏性貧血は「結果」であって、その裏には必ず原因があります。女性なら月経や子宮の病気、男性や閉経後の女性なら、胃や腸からのじわじわとした出血が原因のことも少なくありません。

とくに注意したいのが、消化管(胃・大腸)からの出血です。鉄欠乏性貧血の背景に、胃や大腸のがんなどが隠れていることがあるためです7。実際、大腸がんを調べた研究では、その多くが貧血・血便・便潜血(べんせんけつ)といった「出血のサイン」で見つかっています8。つまり貧血は、体が出してくれている大事な警告サインなのです。

原因を調べないまま鉄剤だけで貧血の数値を「ごまかして」しまうと、その裏に隠れた病気の発見が遅れてしまいます。鉄剤・鉄サプリを自己判断で飲み続けるのではなく、まず血液検査で原因を確かめること。これが最も大切な対処です。食事面では、赤身の肉・魚・レバー・大豆製品・青菜など鉄を含む食品をバランスよくとることが助けになりますが、貧血の治療は自己流ではなく医師の指示のもとで行いましょう。

6. 受診の目安と何科へ ― 危険なサインの見分け方

頭痛と貧血が気になるとき、最初の相談先は内科です。血液検査でヘモグロビンや鉄・フェリチンの値を調べれば、貧血の有無とおおよその原因の見当がつきます。女性で月経の量が多い場合は婦人科、便の異常や腹部の症状があれば消化器内科へつながることもあります。貧血の専門は血液内科ですが、多くはまず一般内科で十分で、必要に応じて専門科を紹介してもらえます。

こんなときは「すぐ」受診を(危険なサイン)
☐ 突然の、今まで経験したことのない激しい頭痛
☐ 頭痛とともに、手足のしびれ・力が入らない・ろれつが回らない・物が二重に見える
☐ 黒いタール状の便、または赤い血便が出る
☐ 安静にしていても強い息切れ・動悸・胸の痛みがある
☐ 立っていられないほどのふらつき・意識が遠のく

これらは、貧血そのものが進んでいるサインや、頭痛の背後にある別の重大な病気(脳卒中や消化管の大量出血など)のサインのことがあります。あてはまる場合は様子を見ず、早急に医療機関を受診(必要なら救急外来)してください。一方で、「いつもと違う頭痛がだんだん強くなる」「鎮痛薬が効きにくくなってきた」といった変化も、自己判断せず一度受診する目安になります。

参考文献

  1. Singh RK, Kaushik RM, Goel D, Kaushik R. Association between iron deficiency anemia and chronic daily headache: A case-control study. Cephalalgia. 2023;43(2):3331024221143540. doi:10.1177/03331024221143540
  2. Al-Qassab ZM, Ahmed O, Kannan V, et al. Iron Deficiency Anemia and Migraine: A Literature Review of the Prevalence, Pathophysiology, and Therapeutic Potential. Cureus. 2024;16(9):e69652. doi:10.7759/cureus.69652
  3. Pamuk GE, Top MŞ, Uyanık MŞ, et al. Is iron-deficiency anemia associated with migraine? Is there a role for anxiety and depression? Wien Klin Wochenschr. 2015;128(Suppl 8):576-580. doi:10.1007/s00508-015-0740-8
  4. Gür-Özmen S, Karahan-Özcan R. Iron Deficiency Anemia Is Associated with Menstrual Migraine: A Case-Control Study. Pain Med. 2015;17(3):596-605. doi:10.1093/pm/pnv029
  5. Sari US, Kama Başci Ö. Association between anemia severity and migraine in iron deficiency anemia. Eur Rev Med Pharmacol Sci. 2024;28(3):995-1001. doi:10.26355/eurrev_202402_35335
  6. Seeman MV. Why Are Women Prone to Restless Legs Syndrome? Int J Environ Res Public Health. 2020;17(1):368. doi:10.3390/ijerph17010368
  7. Banerjee AK, Celentano V, Khan J, et al. Practical gastrointestinal investigation of iron deficiency anaemia. Expert Rev Gastroenterol Hepatol. 2017;12(3):249-256. doi:10.1080/17474124.2018.1404905
  8. Hreinsson JP, Jonasson JG, Bjornsson ES. Bleeding-related symptoms in colorectal cancer: a 4-year nationwide population-based study. Aliment Pharmacol Ther. 2014;39(1):77-84. doi:10.1111/apt.12519
監修
今村久司(京都大学医学部卒・京都大学医学博士・神経内科専門医指導医・総合内科専門医指導医・てんかん学会専門医指導医)
※ 本記事は教育・情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療の代替となるものではありません。気になる症状があるときは医療機関にご相談ください。