栄養サポートチーム(NST)における血液検査の重要性

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NSTチームが会議室で採血結果や栄養指標のグラフを見ながら治療方針をディスカッションしているイラスト(医師・看護師・管理栄養士・薬剤師の多職種が参加)

NSTカンファレンス:医師・看護師・管理栄養士・薬剤師が検査データを見ながら方針を議論

入院患者の栄養状態を評価し最適な栄養療法を提案するNSTでは、血液検査による栄養評価が非常に重要です。血液中の各種検査値から、タンパク質やビタミンの栄養状態、炎症の有無、電解質バランスや臓器機能などを把握できます。栄養評価に有用な検査項目をまとめた「NST採血セット」を用意している施設もあり、入院時のスクリーニングや栄養プラン変更時の効果判定に活用することが推奨されています[1]。本記事では、NSTでルーチンに行うべき採血項目とその臨床的意義、および消化吸収不良が疑われる場合に追加すべき採血項目とその目的について解説します。それぞれの検査項目の結果の簡潔な解釈や、栄養評価・介入の指標としての使い方にも触れます(です・ます調で解説します)。

NSTでルーチンに実施する採血項目とその意義

NSTが介入する患者には、まず基本的な栄養指標や代謝指標となる血液検査をルーチンで行い、栄養状態の全体像を評価します。代表的な項目として、アルブミン, プレアルブミン, CRP, 電解質, 腎機能, 血糖などがあります。それぞれの項目について、何を評価できるか、どのように栄養状態や治療に役立つかを見ていきます。

アルブミン(Alb)

アルブミンは血清中の主要なタンパク質で、肝臓で合成されます。血清アルブミン値は慢性的なタンパク栄養状態を反映する指標で、半減期が約21日と長いため急激な栄養変化には敏感ではありません[2]。値が低下している場合、長期にわたる低栄養蛋白質摂取不足が疑われます。逆に脱水状態では見かけ上上昇することもあり、採血時の体位(臥位に比べ座位で平均5%高値、立位で平均13%高値)や日内変動(夕方に高値)などにも影響されます[3]。また、アルブミンは肝機能低下でも合成が減少し低値になります[4]。重要なのは、炎症や感染症の存在下ではアルブミン合成が抑制される点です。炎症時には肝臓で炎症マーカーであるCRP産生が優先されるため、アルブミン合成は二次的になり血清アルブミンが低下します[5]。したがってアルブミン低値は低栄養状態を示唆しますが、同時に炎症の有無を確認することが必要です。なお、低アルブミン血症の患者ではカルシウムが実際より低く測定されるため、アルブミン補正カルシウムの計算式(補正Ca = 実測Ca + (4.0 – Alb))で補正するのが望ましいです[6]

アルブミン値はNST介入患者の栄養スクリーニングに用いられ、特に3.5g/dL未満の低値では入院中の予後不良や褥瘡リスク上昇が報告されています(一般的に3.0g/dL以下で重度低栄養と判断します)。一方で改善にも時間がかかるため、アルブミンは長期的な栄養状態の指標として捉え、栄養介入の効果判定には用いすぎないよう注意します。

プレアルブミン(トランスサイレチン, TTR)

プレアルブミン(トランスサイレチン)は肝臓で合成され、甲状腺ホルモンT4の運搬にも関与する小さな蛋白です[7]。アルブミンと比べて半減期が約2日間と非常に短く、血中濃度も栄養不良で低下し、栄養改善で2~3日で正常化するため、急性的な栄養変化に反応する指標として重要です[2]。プレアルブミンはRapid Turnover Protein (RTP)とも呼ばれ、栄養療法の効果判定に用いられます[8]。アルブミンでは捉えにくい短期的な栄養状態の変化を評価するのに有用で、NST介入前後での栄養改善効果を確認する際にも測定されます。

プレアルブミンの詳細と注意点

ただし、プレアルブミン値も栄養状態以外の要因で変動します。例えば肝機能障害甲状腺機能異常の影響を受けるほか、炎症や感染があると陰性急性期蛋白として低下します[7][2]。したがってプレアルブミンを評価する際は、アルブミンと同様にCRPなど炎症の指標とセットで確認することが重要です[2]。炎症がコントロールされている状況でプレアルブミンが上昇してくれば、十分な栄養投与による改善傾向と判断できます。

C反応性タンパク(CRP)

C反応性タンパク(CRP)は炎症の有無を示す急性期反応蛋白で、NSTでは炎症の指標として必ず確認します。前述のように、炎症があると肝臓はアルブミンやプレアルブミンなどの合成よりもCRPなど炎症関連タンパクの産生を優先するため、CRP上昇時にはアルブミンやプレアルブミンが低値を示しやすくなります[5]。そのため、低アルブミン血症の原因鑑別にCRP測定は不可欠です[2]。CRPが正常でアルブミンが低い場合は純粋な低栄養を示唆し、CRP高値を伴う低アルブミン血症の場合は炎症性疾患や感染症による影響を考慮します。

また、CRP自体も栄養介入の間接的な指標となることがあります。例えば慢性炎症を伴う悪液質の患者では栄養療法のみではCRP高値が持続しがちであり、炎症のコントロールが栄養状態改善に重要です。逆に重症感染症などでCRPが急上昇している状況では、栄養よりまず原疾患治療を優先すべきことを示唆します。以上のように、CRPは栄養指標ではありませんが栄養状態の評価を修正する重要な補助指標です。

電解質(Na, K, Clなど)とミネラル(Ca, Mg, P)

電解質(Na+, K+, Cl-)は基本的な生化学検査項目で、栄養サポートでも日常的にモニタリングします。電解質バランスの異常は脱水や水分過剰の状態、あるいは腎機能や内分泌の異常を反映します。特にナトリウムやカリウムは細胞外・細胞内液のバランスに関与し、不足や過剰があると筋力低下や心機能への影響(不整脈など)をきたすため厳重な監視が必要です[9]。重度の低栄養患者では電解質不足を伴うことが多く、NST介入時には補正が必要になる場合があります。

⚠️ リフィーディング症候群に注意
中でも注意すべきはリン(P)マグネシウム(Mg)です。リンやマグネシウムは通常低栄養で身体内蓄積が低下しており、栄養補給を急速に行うと血中から細胞内へ移動してリフィーディング症候群を引き起こすリスクがあります[10]。リフィーディング症候群では低リン血症低Mg血症により重篤な合併症(心不全、呼吸不全、不整脈など)を招くことがあるため、栄養開始時にはこれらを含む電解質をこまめに測定・補正します[10]。特に高リスク患者(長期絶食や極度の低栄養状態の患者)では、リン・Mgを含む電解質と血糖を厳重にモニターすることが推奨されています[10]

カルシウム(Ca)も栄養状態やビタミンD状態を反映するミネラルであり、低アルブミン血症では見かけ上低値になるため前述の補正が必要です[6]。アルブミン補正後も著しい低Ca血症があればビタミンD欠乏の有無を確認し、必要時には活性型ビタミンD製剤の補充を検討します。

腎機能(BUN, クレアチニン)

NSTでは腎臓の機能も把握しておく必要があります。腎機能指標として尿素窒素(BUN)クレアチニン(Cr)が代表的です。栄養状態と腎機能には相互に関係があり、腎不全では栄養療法の内容に制限が必要な一方、重度の低栄養は筋肉量減少や代謝低下を伴いこれらの数値に影響を与えます。

  • BUN(血中尿素窒素):はタンパク質代謝の最終産物で、腎から排泄されます。高値の場合は腎機能障害脱水・高タンパク食などが考えられますが、逆に低値の場合は低栄養(極端なタンパク質摂取不足)や肝機能低下、過剰な水分負荷などが示唆されます[11]。NSTではBUNが著しく低い場合、十分なタンパク補給ができていない可能性を検討します(もっともBUN低下は肝不全でも起こりえますので総合的判断が必要です)。
クレアチニンと筋肉量の関係

血清クレアチニンは筋肉由来の老廃物で、筋肉量と腎排泄機能の指標です[12]。高値は腎機能低下を意味しますが、低値の場合は必ずしも「良い」わけではなく、筋肉量の減少(サルコペニア)低栄養の可能性があります[13]。高齢で痩せた患者や長期臥床患者では筋肉が落ちてクレアチニンが正常範囲でも実際には腎機能が過大評価されていることがあり注意が必要です[14][13]

腎機能検査は、NSTでの栄養計画においてタンパク質投与量や水分量の適正化に役立ちます。たとえば慢性腎不全患者では過剰なタンパク投与は尿毒症悪化に繋がるため制限が必要ですが、一方で低栄養にならないよう筋肉量維持に配慮した摂取が求められます。クレアチニンが低く筋肉量低下が懸念される場合、リハビリテーション併用や十分なエネルギー・蛋白補給で筋肉維持を図るといった介入の指標となります。

血糖

血糖値のモニタリングもNSTで重要な項目です。栄養療法(特に経静脈栄養経管栄養)では糖質投与量が血糖値に直結し、過剰投与により高血糖になると感染症リスクの増加浸透圧利尿による脱水、電解質バランス異常など様々な悪影響があります[15]。そのためNST介入時には血糖を定時測定し、必要に応じてインスリン量の調整や投与カロリーの見直しを行います[16]。特に糖尿病患者や長期絶食明けの患者では、血糖管理を組み込んだ栄養投与計画が不可欠です。

また、低栄養状態では耐糖能が低下していることもあります。極度の低栄養患者ではインスリン分泌も低下しており、栄養補給開始時に逆に高血糖になりにくいこともあります。しかし栄養状態の改善とともにインスリン分泌が回復してくると血糖変動が出てくるため、栄養介入中は継続的に血糖をチェックします。リフィーディング症候群の予防という観点からも、電解質と並んで血糖モニタリングは重要です[10]

以上がNSTでルーチンに確認すべき代表的な採血項目です。これらの他にも、必要に応じて肝機能(AST, ALT, γ-GTPなど)やCBC(ヘモグロビンやリンパ球数)なども評価しますが、栄養評価の文脈では上記の項目が特に重視されます。これらの値の経時的な変化を追うことで、栄養介入の効果判定や方針修正に役立てることができます。

消化吸収不良が疑われる場合に追加で行う採血項目

患者によっては、基礎疾患や手術の影響で消化吸収障害(Malabsorption)を生じ、通常の栄養摂取では必要な栄養素が十分吸収されないことがあります。特に膵頭十二指腸切除術(Whipple手術)後の患者では、膵液や胆汁の分泌経路が変化し脂質の消化吸収が低下するため、体重減少や脂肪便、脂溶性ビタミン欠乏症などが起こりやすくなります[17]。こうした消化管機能の問題が疑われる場合、通常のルーチン検査に加えて特定のビタミンや微量元素の欠乏がないか評価することが重要です。同様に、短腸症候群(大腸の広範な切除など)や重度の吸収不良症候群の患者も対象になります。

追加で検討すべき主な採血項目には、脂溶性ビタミン, 水溶性ビタミン, 微量元素(ミネラル), 脂質関連の検査があります。それぞれの目的と意義を解説します。

脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)

脂溶性ビタミンであるビタミンA・D・E・Kは、脂質とともに小腸で吸収される栄養素です。これらの吸収には胆汁酸膵酵素を使ったミセル形成が必要であり、胆汁酸不足膵外分泌機能低下の状況ではミセルが十分形成されず吸収不良をきたします[18]。実際、胆道閉塞や膵炎・膵切除後にはこれらビタミンの欠乏が生じやすく、臨床症状として夜盲症(VitA欠乏)骨軟化症(VitD欠乏)末梢神経障害(VitE欠乏)出血傾向(VitK欠乏)が現れることがあります[19]。脂溶性ビタミンは体内に蓄積しやすいため症状が出るまで時間がかかることもありますが、慢性的な脂肪吸収不良では血中濃度の低下が進み、上述のような症状で初めて気付かれる場合もあります。

脂溶性ビタミン欠乏の詳細
  • 血清クレアチニンは筋肉由来の老廃物で、筋肉量と腎排泄機能の指標です[12]。高値は腎機能低下を意味しますが、低値の場合は必ずしも「良い」わけではなく、筋肉量の減少(サルコペニア)低栄養の可能性があります[13]。高齢で痩せた患者や長期臥床患者では筋肉が落ちてクレアチニンが正常範囲でも実際には腎機能が過大評価されていることがあり注意が必要です[14][13]

腎機能検査は、NSTでの栄養計画においてタンパク質投与量水分量の適正化に役立ちます。たとえば慢性腎不全患者では過剰なタンパク投与は尿毒症悪化に繋がるため制限が必要ですが、一方で低栄養にならないよう筋肉量維持に配慮した摂取が求められます。クレアチニンが低く筋肉量低下が懸念される場合、リハビリテーション併用や十分なエネルギー・蛋白補給で筋肉維持を図るといった介入の指標となります。

水溶性ビタミン(ビタミンB群・葉酸・ビタミンCなど)

水溶性ビタミン(ビタミンB群やビタミンCなど)は体内に貯蔵されにくく、吸収不良の影響が比較的早期に現れます[20]。代表的なものを挙げます。

  • ビタミンB1(チアミン):糖質代謝に必須のビタミンで、不足すると脚気(心不全や末梢神経障害)を発症します[21]。食思不振や嘔吐が続いた患者ではB1欠乏によるウェルニッケ脳症(意識障害、失調、眼球運動障害)も懸念されます。中心静脈栄養や経腸栄養を行う際は、ビタミンB1を十分補給しないと乳酸アシドーシスに陥るリスクがあり[22]、必ず補充が推奨されます。
  • ビタミンB12(シアノコバラミン)と葉酸:赤血球合成に必要なビタミンで、欠乏すると巨赤芽球性貧血をきたします[23]。長期の胃切除後や回腸の疾患ではビタミンB12の吸収障害により悪性貧血を発症しうるため注意が必要です[24]。また葉酸は小腸上部で吸収されるため、空腸の吸収不良(セリアック病や熱帯スプルーなど)や一部の胃切除後で欠乏することがあります[25]。葉酸・B12はいずれか一方の不足でも貧血をきたすため、両方の濃度を確認することが重要です[26]
  • その他のビタミンB群:ビタミンB2不足は口角炎や舌炎、ビタミンB3(ナイアシン)不足はペラグラ(皮膚炎・下痢・認知症)[27]、ビタミンB6不足は末梢神経障害や貧血[28]を生じます。これら単独の欠乏症状はまれですが、偏食や長期アルコール多飲者では複数のビタミンB欠乏が同時に起こりうるため留意します。
  • ビタミンC:不足すると壊血病(歯肉出血、皮下出血)や疲労感、抑うつ傾向が現れます[29]。消化管手術後で食事摂取が極端に少ない患者や偏食の強い高齢者では、VitC欠乏症も念頭に置きます。VitCは創傷治癒にも関与するため、術後創の治りが悪い場合などにも測定が検討されます。

以上のような水溶性ビタミンの評価として、NST介入時にはビタミンB1(血中または全血チアミン濃度)ビタミンB12と葉酸(血清濃度)は必要に応じて測定します。特にリスクの高い患者では、症状が出る前に補充介入する(例:アルコール多飲者に予防的にB1投与)ことも検討します。ビタミンCや他のB群については症状や食事状況に応じて測定・補給を判断します。

微量元素(鉄、亜鉛、銅、セレンなど)

微量元素とは体内必要量がごく少量な元素(ミネラル)で、栄養不良や長期の栄養療法で不足しがちなものがあります。代表的な微量元素と欠乏による影響は以下の通りです。

  • 亜鉛(Zn):300以上の酵素に関与する必須元素で、不足すると味覚障害創傷治癒遅延皮膚炎を起こし、重度では免疫低下脱毛低身長・性腺機能低下(小児)など多彩な症状を呈します[30]。消化管からの喪失が多い疾患(高ストーマ排出や瘻孔、慢性下痢など)ではZn欠乏に注意が必要です。血清Zn値が低値の際は積極的な補充(静注または経口)が行われます。
  • 鉄(Fe):赤血球造血に不可欠な元素で、小腸上部(主に十二指腸)で吸収されます。欠乏すると鉄欠乏性貧血となり、易疲労感、息切れ、食欲低下をきたします[31][32]。胃切除後や小腸切除後では鉄吸収が低下するため、術後半年以降から貧血の有無を定期的にチェックします[33]。血清鉄やフェリチン、TIBC(総鉄結合能)を測定し、鉄欠乏が確認されれば経口または静脈鉄剤で補正します[26]
  • 銅(Cu):銅欠乏は一般には稀ですが、長期高カロリー輸液施行患者(経静脈栄養のみの患者)や小腸バイパス手術後に報告があります。不足すると貧血(小球性貧血)白血球減少, 末梢神経障害髪や皮膚の色素脱失などが起こりえます[34]。通常の食事摂取があれば欠乏しにくいものの、胆汁排泄性の元素でもあるため長期の胆汁瘻などでは不足リスクがあります。必要時には血清銅やセルロプラスミン値を測定します。
  • セレン(Se):セレンも通常は欠乏しにくいですが、長期TPNでは補充しないと心筋症筋痛の原因となります[35]。日本人は土壌セレン含有量の関係で欠乏症はまれですが、海外の事例では重度欠乏により心不全(Keshan病)を起こした報告があります。静脈栄養では微量元素製剤中に含まれますが、含有量不足の場合は個別補充します。

このほかヨウ素やクロムなども微量元素に含まれますが、特殊な状況(たとえばクロム欠乏はTPN管理下での高血糖や末梢神経障害として現れる[36])でなければ routinue に測定することは稀です。NSTでは亜鉛と鉄をチェックする機会が特に多く、それぞれ欠乏が疑われる兆候(味覚低下、貧血など)を見逃さないことが大切です。測定結果は補充療法の指標となり、例えば血清亜鉛値が50 μg/dL未満で症状がある場合は積極的に補正を行います。

脂質(コレステロール・中性脂肪)

血中脂質の測定も、栄養評価や吸収不良の疑い時に役立ちます。特に総コレステロール値は低栄養状態で低下することが知られており、コレステロールが著明に低い場合はタンパク・エネルギー不良を疑います[37]。一方で、栄養療法開始後に総コレステロールが適正範囲まで上昇してくれば栄養改善の一指標になります。また過剰な脂肪投与を行っている場合や糖質過多で脂肪合成が亢進している場合にはコレステロールが高値を示すこともあり、栄養投与量が適切かどうかのモニタリングに用いることができます[38]

中性脂肪(TG)は食事や輸液からの脂肪摂取量の指標となります。脂肪の吸収障害があると食後でもTGが上昇しにくかったり、逆に肝での合成低下により低TG血症になることも考えられます。ただしTGは食事の影響を大きく受け、食後4~6時間でピークになるため測定時は空腹時が望ましいです[39]。NSTでは高カロリー輸液中の脂肪乳剤投与による高TG血症(≧400 mg/dL程度)の有無を定期的にチェックし、膵炎予防のため投与量を調整します。また経口摂取ができている患者でも、極端な脂肪制限食が続けば脂溶性ビタミンとともにコレステロール・TGが低下しうるため、必要に応じて食事内容を見直します。

このように、脂質関連検査は脂肪摂取・吸収の指標であるとともに、適切な栄養投与の監視に役立ちます。特に膵疾患術後など脂質吸収障害が懸念される場合には、定期的に脂質プロファイルを測定し、必要なら栄養経路の変更(中鎖脂肪酸の利用など)や酵素補充療法の効果判定に活用します。

以上、NSTでルーチン実施する採血項目と、吸収不良が疑われる場合に追加すべき項目を概説しました。最後に、それぞれを簡潔にまとめ、ルーチン採血セットと追加採血セットの違いを表に整理します。

ルーチン採血セットと追加採血セットの比較

NST活動におけるルーチン採血項目と、状況に応じて追加する項目を対比すると下表のようになります。左欄がすべてのNST介入患者で評価すべき基本項目、右欄が吸収不良や栄養素欠乏のリスクが高い場合に追加で評価する項目です。

NSTルーチン採血項目(目的) 吸収不良時の追加採血項目(目的)
アルブミン(慢性的なタンパク栄養評価) 脂溶性ビタミンA・D・E・K(脂肪吸収不良による欠乏評価)
プレアルブミン〈TTR〉(急性的な栄養変化の評価) 水溶性ビタミンB1・B12・葉酸・C 他(吸収不良・欠乏症の確認)
CRP(炎症の有無を評価し栄養指標の解釈補助) 微量元素 鉄・亜鉛・銅・セレン 他(欠乏による貧血・合併症の評価)
電解質 Na, K, Cl, Ca, P, Mg(電解質バランス、リフィーディング予防) 脂質プロファイル 総コレステロール・中性脂肪(栄養状態・脂肪吸収の指標)
腎機能 BUN, クレアチニン(脱水や腎機能、筋肉量評価) (該当なし:必要に応じ上記から選択)
血糖(耐糖能・代謝合併症のモニタリング) (該当なし:必要に応じ上記から選択)
📋 追加項目選択のポイント
※追加項目は患者のリスクや症状に応じて選択されます。例えば、膵頭十二指腸切除後で脂肪便がある患者では脂溶性ビタミンと亜鉛を重点的に確認し、長期絶食明けの患者ではビタミンB1や電解質を特に重視するといった具合です。必要な場合は他のホルモン検査(甲状腺機能など)や特殊検査(血中アミノ酸分析など)も組み合わせ、包括的に評価します。

おわりに

NSTにおける血液検査は、患者の栄養状態を客観的に評価し、適切な栄養管理方針を立てる上で欠かせない手段です。アルブミンプレアルブミンなどのタンパク指標、電解質腎機能などの代謝指標、そして必要に応じたビタミン・微量元素のチェックによって、見落としがちな栄養障害を早期に発見できます。ただし、どの検査値も単独で絶対的な判断を下せるものではなく、患者の臨床症状や身体所見、基礎疾患の状況とあわせて総合的に解釈する必要があります[40]。NSTチーム内でこれらの情報を共有し、多職種の知見を合わせることで、より安全で効果的な栄養サポートが可能となるでしょう。本記事がNSTメンバーや臨床医の先生方の参考になれば幸いです。各種検査項目を活用しつつ、患者さん個々の状態に応じたきめ細やかな栄養管理を実践していきましょう。

参考文献

総引用箇所数: 42箇所 | 参考文献数: 17件
参考文献を表示(全17件)
1 3 4 5 6 7 8 38 39 40 41 hosp.mie-u.ac.jp - 栄養サポートチーム関連の院内資料
https://www.hosp.mie-u.ac.jp/wp-content/themes/mieuhosp/assets/doc/section/eiyou/nst05.pdf
2 22 26 栄養判定に用いる血液検査について | 国立長寿医療研究センター
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/nst/25.html
9 20 31 37 42 吸収不良症候群について解説|渋谷・大手町・みなとみらい・田町三田・新宿の内科ならMYメディカルクリニック
https://mymc.jp/clinicblog/382295/
11 尿素窒素(BUN)(血液)|腎機能の検査|各検査を知る|人間ドック|健診会 東京メディカルクリニック
https://www.dock-tokyo.jp/results/kidney/bun.html
12 13 14 「クレアチニンが低い」と言われた方へ | 東京で透析治療するなら東京新橋透析クリニック
https://www.toseki.tokyo/blog/low-creatinine/
17 18 19 21 23 24 25 27 28 29 30 32 34 35 36 jstage.jst.go.jp
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspen/27/1/27_1_5/_pdf
33 7.貧血(鉄欠乏性貧血)|薬事情報センター - 愛知県薬剤師会
https://www.apha.jp/medicine_room/entry-3544.html