【2026年最新】アナフィラキシーショックへの対応 ― 一般・医療者向け2部構成(neffy・refractory対応まで)

【2026年最新】アナフィラキシーショックへの対応 ― 一般の方も医療者も知っておきたい初期対応と最新治療(neffy®・refractory対応まで)

アナフィラキシーショックは救命できる病気ですが、アドレナリン投与の遅れが死亡に直結します。2024〜2026年にかけて、点鼻アドレナリンneffy®の登場、観察時間のリスク層別化、2回目アドレナリンは反対側大腿へ(RCUK 2025)、抗ヒスタミン薬・ステロイドのルーチン否定など、対応の常識が大きく変わりました。本記事は一般の方向け(第1部)医療従事者向け(第2部)の2部構成で、症状の見分け方からエピペン®/neffy®の使い方、観察時間の最新基準、refractory anaphylaxisへのグルカゴン・バソプレッシン・メチレンブルーまで、WAO 2020(+2024 update)・EAACI 2021・AAAAI/ACAAI 2023・JSA 2022・RCUK 2025・JRC 2025最新版に準拠してまとめます。

PART 1 — FOR EVERYONE
第1部:一般の方へ ― 命を守る初期対応

アナフィラキシー対応 一般向けインフォグラフィック(症状・エピペン・neffy・観察時間)

1-1. アナフィラキシーとは ― 90秒で理解

アナフィラキシーとは、食物・薬・ハチ刺されなどがきっかけで、全身に強いアレルギー反応が急に起こる状態です。皮膚のかゆみだけでなく、呼吸困難血圧低下を伴うことがあり、命に関わります[1][4]

「アナフィラキシーショック」とは、その中でも血圧が下がって意識がもうろうとする状態を指します。ただし、「ショック=血圧低下」だけがアナフィラキシーではありません。喉が腫れて息ができない、激しい腹痛と嘔吐が止まらない、といった形でも起こります[1]

📌 ポイント
アナフィラキシーは救命できる病気です。ただし、アドレナリン(エピペン®・neffy®など)を打つのが遅れると致死的になります。「迷ったら打つ」が世界共通の合言葉です[1][3]

1-2. これが出たら疑え ― 4系統の症状

食事・薬・ハチ刺されなどのきっかけの後、数分〜数時間で、以下の症状のうち2つ以上の系統が出てきたら、アナフィラキシーを強く疑います[1][4]

① 皮膚・粘膜
  • 全身のじんましん
  • 強いかゆみ・赤み
  • 口唇・舌・のどの腫れ
  • 顔のむくみ
② 呼吸
  • ゼーゼー・ヒューヒュー
  • のどがつかえる感じ
  • 声がかすれる
  • 息苦しさ
③ 循環(血圧・意識)
  • 立ちくらみ・失神
  • 顔色が真っ青
  • 冷や汗・手足が冷たい
  • 意識がもうろう
④ 消化器
  • 強い腹痛(差し込むような)
  • 繰り返す嘔吐
  • 下痢
⚠️ 重要 ― 皮膚症状が「ない」アナフィラキシー
じんましんや赤みなどの皮膚症状が出ない例が10〜20%あります[31]。「皮膚に何も出ていないからアナフィラキシーではない」という判断は危険です。既知のアレルゲンを摂ったあとに急な呼吸困難・血圧低下・喉の腫れがあれば、皮膚症状がなくてもアナフィラキシーとして対応します[1]

1-3. 救急要請とアドレナリンは「同時並行」

アナフィラキシーが疑われたら、119番への通報アドレナリン投与「どちらが先」ではなく同時に行います[1][6]

  • 周りに人がいれば → ひとりが119番、ひとりがエピペン®/neffy®
  • ひとりしかいなければ → スマホをスピーカーにして119番しながらアドレナリン投与
🚨 やってはいけないこと
・抗アレルギー薬・ステロイドだけで様子を見る(代用にならない[1][3]
・「いつもの蕁麻疹かも」と自己判断する
・本人を立たせる・歩かせる(後述:empty ventricle syndrome)
・「症状が落ち着いたから」と受診をやめる

1-4. エピペン®/neffy®の使い方(2026年最新)

エピペン®(アドレナリン自己注射器)

  • 太ももの外側の中ほどに、衣服の上からでOK[1]
  • カチッと音がしたら5秒そのまま押し当てる
  • 5分たっても症状が改善しなければ2本目を反対側の太ももに打つ(RCUK 2025の新ルール[7]
  • 体重別の規格:15kg以上 → 0.15mg30kg以上 → 0.3mg
💡 RCUK 2025の新ポイント
2025年に英国蘇生協議会(RCUK)の派生ガイダンスやMHRA(英国医薬品庁)の安全性情報を含む文書で、2回目以降のアドレナリンは1回目と反対側の大腿に打つことが推奨されています[7]。1回目で打った部位は血管が収縮して2回目の吸収が悪くなる可能性があるためです。

neffy®(点鼻アドレナリン液)― 2026年2月日本発売

  • FDAが2024年8月に成人・体重30kg以上の小児に承認、2025年3月には4歳以上・体重15〜30kgの小児用1mg製剤も承認しました[20][21]
  • 日本では2026年2月から発売開始
  • 使い方:片方の鼻に1回噴霧するだけ。針がないので注射が苦手な方・小児で大きな選択肢になります
  • 用量:成人2mg/小児(15〜30kg)1mg[20][21]
  • 5分で改善がなければ同じ側の鼻に2回目を噴霧(注射と異なり「反対側」ではないことに注意)[7]
  • 健常人での比較試験で、エピペン®0.3mgと同等の薬物動態(PK)・薬力学(PD)プロファイルが示されています[22]
⚠️ neffy®の限界
鼻づまりや鼻出血が強い場合は吸収が落ちる可能性があります。重度の鼻症状時はエピペン®注射を優先してください。実患者での比較試験は限定的で、現時点では「もう一つの選択肢」という位置づけです[22]

1-5. 投与後の体勢 ― 立たない・歩かない

アドレナリンを打ったあとの体勢はとても大切です。間違えると、急に立ち上がっただけで心臓に血液が戻らず死亡する例(empty ventricle syndrome=空虚心室症候群)が報告されています[1]

✅ 正しい体勢
・基本:仰向けで、足を高く上げる(クッションや枕で)
・呼吸が苦しい:半坐位(上半身を起こす)
・嘔吐している・意識がない:横向き(回復体位)
急に立ち上がらない/歩かせない(救急車が来るまで床のまま)

1-6. 「良くなっても病院へ」二相性反応

アドレナリンで症状が一旦良くなっても、数時間後に再び症状がぶり返すことがあります。これを二相性反応(biphasic reaction)と呼び、多くは8〜12時間以内に発生します[1][11]

  • 発生率は0.5〜21%(小児では約14%、約7人に1人)[11]
  • 最近の研究では、10〜33時間後の遅発例も報告されています[23]
  • 軽症で完全に消えても最低1〜2時間は医療機関で観察を受けてください
  • 2回目のアドレナリンが必要だった人・喘息持ちの人は、より長時間(6〜12時間以上)の観察を推奨

1-7. 平時の備え ― 2本携帯とAction Plan

  1. エピペン®を常に2本携帯(家・職場・通学先・移動中で計2本以上)[3]
  2. Anaphylaxis Action Plan(書面)を作成し、家族・学校・職場と共有[3][10]
  3. 同居家族・教職員・職場の同僚に使用方法を実演で訓練
  4. 有効期限をスマホのカレンダーに登録(更新忘れ防止)
  5. 原因アレルゲンをアレルギー専門医で精査・確定(必要なら経口免疫療法・除去食指導)
  6. MedicAlertブレスレットなどで意識消失時に第三者にアレルギーが伝わる工夫

1-8. 一般向けよくある質問(FAQ)

蕁麻疹だけでもエピペン®を打つべきですか?
蕁麻疹だけなら通常はエピペン®は不要です。ただし、蕁麻疹に加えて呼吸困難・喉の違和感・血圧低下・激しい腹痛・繰り返す嘔吐のいずれか1つが出てきたらすぐ打つのが正解です[1][4]。「迷ったら打つ」が国際共通のルールで、過量での重篤副作用は極めてまれです[3]
エピペン®を誤って打ってしまったら危険ですか?
健康な人に誤って打っても、多くは一過性の動悸・手の震え・蒼白で済みます。すぐに医療機関を受診し心電図モニタを受ければ、ほとんどの方が問題なく経過します[1]「迷って打たない」リスクの方が圧倒的に大きいので、疑わしい時は躊躇せず使ってください。
抗アレルギー薬(ザイザル®など)やステロイドで様子見していい?
いいえ。抗ヒスタミン薬・ステロイドはアドレナリンの代用にはなりません[1][3][30]。これらは皮膚のかゆみ・蕁麻疹を和らげる程度で、呼吸・循環の救命効果は確立していません。アナフィラキシーが疑われたらアドレナリンを優先してください。
neffy®(点鼻アドレナリン)はどこで処方される?保険は?
日本では2026年2月発売。アレルギー専門医・小児科・内科などで処方されます。保険適用も予定されており、自己注射に強い不安がある方・既往のある小児で大きな選択肢になります[20][21]。詳細な保険適用範囲・薬価は最新の情報を主治医にご確認ください。
子どもは何kgからエピペン®/neffy®を使えますか?
エピペン®は体重15kg以上で0.15mg規格、30kg以上で0.3mg規格が処方されます[1]。neffy®は4歳以上・体重15〜30kgで1mg、30kg以上で2mgです[20][21]。15kg未満の乳幼児はガイドラインの記載が分かれており、主治医と相談してください。
PART 2 — FOR HEALTHCARE PROFESSIONALS
第2部:医療従事者の方へ ― 2026年標準対応

アナフィラキシー対応 医療者向けインフォグラフィック(診断基準・初期治療・観察時間・refractory対応)

2-1. 2026年診断基準(NIAID/FAAN 3項目 → WAO/JSA 2項目への集約)

NIAID/FAAN 2006の3項目は、WAO 2020JSA 20222項目に集約されました[1][4]。最大の改訂点は、Criterion 1の(c)に「重度の消化器症状」(強い痙攣性腹痛・反復する嘔吐)が追加されたことです。

Criterion 1(皮膚・粘膜症状あり)

数分〜数時間で急性発症した皮膚または粘膜症状(全身性蕁麻疹・瘙痒・紅潮・口唇/舌/口蓋垂浮腫など)に加えて、以下の少なくとも1つ

  • (a) 呼吸器症状(呼吸困難、喘鳴、stridor、低酸素血症)
  • (b) 循環器症状(血圧低下、失神、失禁を含む末梢循環不全)
  • (c) 重度の消化器症状(強い痙攣性腹痛、反復嘔吐) ※WAO 2020で新規追加[1]

Criterion 2(既知あるいは強く疑われるアレルゲン曝露あり)

急性発症の血圧低下、気管支痙攣、または喉頭症状(皮膚症状がなくても)[1]

📌 臨床ポイント
皮膚症状なし症例(10〜20%)はCriterion 2で拾います[31]。「蕁麻疹がないからアナフィラキシーではない」は誤りです。
JSA 2022は2023年3月修正で「呼吸不全」→「重度の呼吸器症状」へ用語変更(誤解防止目的)[4][5]

2-2. 初期治療アルゴリズム ― IM Epinephrineファーストライン

全ガイドライン共通で、アドレナリン大腿外側広筋への筋注(IM)が第一選択かつ唯一の救命治療です[1][2][3][6]。投与遅延が死亡率と直結します[30]

標準フロー

  1. アレルゲン曝露停止
  2. アドレナリン筋注(大腿外側広筋)
  3. 救急要請・応援要請
  4. 仰臥位+下肢挙上(呼吸困難時は半坐位、嘔吐時は側臥位)
  5. 高流量酸素・気道確保
  6. 大量輸液(成人 晶質液1〜2L、小児20mL/kg[1][2]
  7. 改善なければ5(〜15)分で反復[1][7]
  8. それでも改善なければIV持続点滴+専門家介入(refractory)

投与量ファクトチェック表

対象 部位・経路 用量 反復間隔 主要根拠
成人IM初回 大腿外側広筋 IM 0.3〜0.5mg(0.01mg/kg、最大0.5mg) 5〜15分(多くは5分) WAO 2020[1]/EAACI 2021[2]/JSA 2022[4]
小児IM初回 大腿外側広筋 IM 0.01mg/kg(最大 成人0.5mg/小児0.3mg) 5〜15分 WAO 2020[1]/JSA 2022[4]
RCUK 12歳以上 大腿外側広筋 IM 500µg一律 5分 RCUK 2021/2025[6][7]
RCUK 6〜12歳 大腿外側広筋 IM 300µg 5分 RCUK 2021[6]
RCUK 6ヶ月〜6歳 大腿外側広筋 IM 150µg 5分 RCUK 2021[6]
RCUK <6ヶ月 大腿外側広筋 IM 100〜150µg 5分 RCUK 2021[6]
neffy® 成人 点鼻(片側) 2mg 5分(同側に2回目)[7] FDA 2024.08[20]/PK同等試験[22]
neffy® 小児(15〜30kg) 点鼻(片側) 1mg 5分 FDA 2025.03[21]
輸液(成人) 晶質液 急速 1〜2L(最大3〜5L) 全GL一致[1][2]
輸液(小児) 晶質液 急速 20mL/kg(最大60〜100mL/kg) EAACI[2]/AAAAI[3]
🆕 RCUK 2025 新ルール ― 2回目以降は反対側大腿
1回目アドレナリンによる局所血管収縮で、同側追加投与の吸収が悪化する可能性。2回目以降は反対側の大腿外側広筋へ変更を推奨[7]。なお、neffy®は逆に同側鼻孔に2回目(製剤特性上)。

2-3. 補助療法のパラダイムシフト ― 「足し算」から「引き算」へ

2022〜2026年の最大の変化のひとつが、抗ヒスタミン薬・コルチコステロイドのルーチン投与の見直しです。「とりあえず全部入れる」から「アドレナリン以外は本当に必要か考えて入れる」へ、医療文化の転換期にあります[6][7][30]

抗ヒスタミン薬(H1/H2)

  • WAO 2020: 「H1抗ヒスタミン薬は治療における役割が限定的、第三選択となるGLもある」[1]
  • AAAAI 2023: routine first-line推奨せず。重症症状安定後の補助として[3]
  • RCUK 2021/2025: 急性反応の第一選択ではない[6][7]
  • Cross-Canada Anaphylaxis Registry: 抗ヒスタミン薬投与は転帰改善せず、むしろアドレナリン投与遅延と相関[30]

コルチコステロイド ― ルーチン投与は推奨しない

  • WAO 2020: 「急性期管理で利益なし、有害かもしれない、ルーチン使用は議論的」[1]
  • RCUK 2021大改訂: ルーチンでは推奨しない(弱い推奨、very low certainty)[6]
  • AAAAI 2023: routineには推奨せず。喘息/ショック合併時のみ第三選択[3]
  • EAACI 2021: biphasic予防効果なし、重症度低下なし[2]
  • 小児ではbiphasic反応リスクをむしろ上げる可能性[25]

β2刺激薬吸入・酸素・輸液

  • サルブタモール吸入:気管支痙攣残存時の補助。アドレナリンの代替ではない[1]
  • 高流量O₂(リザーバーマスク):全GL第一選択補助療法[1][2][3]
  • 晶質液(生食/Ringer液):成人1〜2L、小児20mL/kg を5〜10分で[2][3]

2-4. Refractory Anaphylaxis(治療抵抗性)

日本語で系統的に論じた無料記事は皆無であり、本記事の最大の差別化ポイントです。Pouessel 2024 reviewが包括的にまとめています[12]

定義のばらつき

ガイドライン/組織 Refractoryの定義
RCUK適切なIM 2回後も持続
米国Expert Panel適切な3回以上 or IV持続開始
CoFARIM 3回以上
ISPAR周術期適切な投与・輸液後10分超で反応不十分

治療階層(Pouessel 2024準拠)[12]

  1. 第1選択:IV adrenaline持続点滴 + 大量輸液
    • 開始:0.05〜0.1µg/kg/min(米:2〜10µg/min/英RCUK:5〜10µg/kg/h)
    • 体液蘇生:1〜2L晶質液(成人)
  2. 第2選択vasopressornoradrenaline(最頻用)またはvasopressin
    • vasopressin:1〜2単位ボーラス0.2〜0.4単位/分持続(または2単位/時)
  3. β遮断薬服用例グルカゴン
    • 成人:1〜5mg IV bolus over 5min5〜15µg/min持続
    • 小児:20〜30µg/kg(最大1mg)
    • 機序:cAMPをβ受容体非依存的に上昇させ、変力作用を回復
  4. 救命rescueメチレンブルー 1〜2mg/kg IV(NO媒介血管拡張対策)
  5. 体外循環:ECMO/ECLS
⚠️ エビデンスレベル
全ての二次治療はcase report/case seriesベースでRCTは存在しません[12]。「弱い推奨/低い確実性」のもとで、現場判断+専門家コンサルトが基本です。

2-5. 観察時間のリスク層別化(Kim 2019メタ解析準拠)

「全例6〜8時間観察」の固定的運用は古い常識です。Kim et al. 2019のメタ解析[11]RCUK 2021/2025[6][7]が、リスク層別化への移行を後押ししています。

Kim 2019メタ解析(PMID 30763927)の要点

  • 1時間観察で陰性的中率95.0%
  • ≥6時間観察で陰性的中率97.3%(95% CI 95.0〜98.5)
  • >8〜12時間で>98%

リスク層別化観察時間(RCUK 2021/2025準拠)

リスク層 観察時間 該当条件
低リスク 1〜2時間 軽症・アドレナリン1回投与で完全消失・既知アレルゲン・AAI携帯・即時医療アクセス可
中リスク 6時間 中等症・複数回投与不要・既往biphasic
高リスク 12時間以上 重症呼吸器/循環器症状・2回以上投与・喘息既往・遅延治療・夜間退院・遠隔地

Biphasic反応のリスク因子

  • 初期反応の重症度・反応の遷延
  • アドレナリン2回以上必要
  • 初期投与遅延(>60分)
  • 脈圧の開大、不明アレルゲン
  • 小児では薬剤誘発
📌 AAAAI 2023の論争点
prompt, complete, and durable response があればEMS活動は必須でないとAAAAI 2023は記載[3]。ただし日本の現場では患者教育・到達性を考慮し、JSA 2022は依然として救急受診を原則推奨[4]

2-6. 退院時処方とAction Plan

  1. EAI処方+使用訓練(通常2本携帯、AAAAI 2023/ASCIA 2026[3][10]
  2. neffy®も選択肢として提示(注射拒否例・小児で特に)[20][21]
  3. Anaphylaxis Action Plan(書面)を配布
  4. アレルギー専門医紹介(原因同定・予防)
  5. トリプターゼ測定(基準値確認、24時間以降のベースライン採血)[3]
  6. トリガー回避指導/MedicAlertブレスレット推奨
  7. β遮断薬・ACEi継続判断:多くは中止しない(中止リスクが反応増悪リスクを上回る[3]

2-7. トリプターゼ採血・診断確定

採血タイミング(AAAAI 2023)[3]

  • 急性期:症状開始後15分〜3時間(理想は2時間以内)
  • ベースライン:症状完全消失後24時間以降または発症前値

トリプターゼ上昇判定式(2024 update)

急性期トリプターゼ ≥ (1.2 × ベースライン + 2) µg/L を「臨床的に有意な肥満細胞活性化」と定義[3][26](WAO/2010 Working Conference準拠)。
従来の固定閾値11.4µg/Lより、患者個人のベースラインを基準にした方が感度が高いことが示されています[26][27]
  • ベースライン > 8 ng/mLの場合:遺伝性αトリプターゼ血症(HαT)/クローン性肥満細胞疾患を考慮し、骨髄生検検討[3]
  • 急性アナフィラキシー患者の30%超でトリプターゼは上昇しない → 臨床診断が優先
  • 「epinephrine should not be used as a surrogate to diagnose anaphylaxis」(AAAAI 2023)[3]

2-8. 院内アナフィラキシー(特殊状況)

周術期アナフィラキシー(NAP6 / Pouessel 2024)[18][19]

原因(地域差大)頻度(UK NAP6)
抗菌薬(テイコプラニン、ペニシリン、バンコマイシン、セフロキシム)47.2%
筋弛緩薬(NMBA)32.6%
クロルヘキシジン9.0%
色素(パテントブルー)4.5%
ラテックス、ヨード造影剤、スガマデクス

致死リスク因子:男性、肥満、心血管疾患、β遮断薬服用[18]

造影剤アナフィラキシー

  • 多くは非IgE機序(直接肥満細胞活性化、補体経由)
  • 治療は同一(IM/IV adrenaline + 輸液)
  • 再投与可否:放射線科・アレルギー科とのリスク評価+前投薬プロトコル

非IgE機序の最新理解(MRGPRX2)

  • 肥満細胞選択発現GPCR(11p15.1、330aa、7回膜貫通)
  • カチオン性リガンド(NMBA、フルオロキノロン、バンコマイシン、オピオイド、抗菌ペプチド、神経ペプチド)に反応
  • IgE非依存性脱顆粒
  • 臨床アナフィラキシーでの直接エビデンスは未確立[16][17]

HαT/SM除外

  • 再発性・特発性・蜂毒重症例で骨髄生検を検討
  • ベースライントリプターゼ > 8 ng/mLが目安[3]

2-9. 国際ガイドライン比較表

項目 WAO 2020
(+2024)
EAACI 2021 AAAAI 2023 JSA 2022 RCUK 2025 JRC 2025
診断基準 2項目 NIAID修正 NIAID 2項目 NIAID修正 2項目
観察時間 リスク別 リスク別 EMS拒否容認 4〜24h リスク別 リスク別
抗ヒスタミン 補助 補助 補助 補助 不要 補助
ステロイド ルーチン否定 ルーチン否定 ルーチン否定 慎重 不要 慎重
2回目部位 同側可 同側可 同側可 同側可 反対側 同側可
反復間隔 5〜15分 5〜15分 5〜15分 5〜15分 5分 5〜15分

主要参考:WAO 2020[1]/EAACI 2021[2]/AAAAI 2023[3]/JSA 2022[4]/RCUK 2025[7]/JRC 2025[8]

2-10. 医療者向けよくある質問(FAQ)

抗ヒスタミン薬はもう打たなくていいのか?
急性期の第一選択ではありません。皮膚症状(蕁麻疹・掻痒)の緩和目的に補助として使うのは可。RCUK 2021/2025は急性反応では不要としています[6][7]。重要なのは抗ヒスタミン薬の準備でアドレナリン投与を遅らせないこと。Cross-Canada Anaphylaxis Registry[30]で抗ヒスタミン投与とアドレナリン遅延の相関が示されています。
ステロイドの投与量は?投与すべきでない理由は?
2026年時点でルーチン投与は推奨されません[1][3][6]。理由:(1) 吸収まで数時間かかるため急性期循環/呼吸症状改善に不向き、(2) 複数のSR・Cochraneレビューでbiphasic予防効果なし[2]、(3) 小児ではbiphasic反応リスクをむしろ上げる可能性[25]。喘息合併・遷延ショック例で使う場合はメチルプレドニゾロン1〜2mg/kg等が一般的ですが、エビデンスレベルは弱いです。
β遮断薬服用患者でグルカゴンを使う根拠は?
β遮断薬服用例ではアドレナリンのβ作用が拮抗されるため、グルカゴンがcAMPをβ受容体非依存的に上昇させて変力作用を回復させます[12]。投与量は1〜5mg IV bolus over 5min → 5〜15µg/min持続、小児は20〜30µg/kg(最大1mg)[12]。エビデンスはcase reportレベルですが、推奨は維持されています。副作用:嘔気・嘔吐が多く、誤嚥対策(側臥位・気道確保)必須。
観察時間「4時間」は古い?
「全例4〜8時間」の固定運用は古い常識です。Kim 2019メタ解析[11]≥6時間で陰性的中率97.3%、1時間でも95%であることが示され、RCUK 2021/2025・AAAAI 2023はリスク層別化(低1〜2h/中6h/高12h以上)に移行しています[6][7][3]。日本のJSA 2022は依然「4〜24時間」と幅広く記載していますが[4]、JRC 2025はリスク層別化を採用[8]。実臨床では2回以上投与・喘息既往・夜間・遠隔地は12時間以上を強く推奨。
院内造影剤アナフィラキシー後の再投与可否は?
既往の重症度・代替検査の可否・前投薬で判断します。多くは非IgE機序で、ヨード造影剤の交差反応性は不完全。アレルギー科コンサルトのもと、別系統造影剤への変更+プレドニゾロン+抗ヒスタミン薬前投薬プロトコル(例:13h/7h/1h前 50mg PSL + 1h前 H1 50mg)を検討します。重症既往例ではMRI等代替を優先。

まとめ ― 2026年に押さえるべき5項目

2026年アナフィラキシー対応 5箇条

  1. アドレナリン(IM epinephrine)が唯一の救命薬 ― 抗ヒスタミン薬・ステロイドは代用にならない[1][3][30]
  2. 2026年は補助療法(抗ヒス・ステロイド)が「ルーチン否定」 ― RCUK 2025は不要、他GLも第一選択ではない[6][7]
  3. 観察時間はリスク層別化へ(低1〜2h/中6h/高12h以上)― Kim 2019+RCUK 2021/2025準拠[6][7][11]
  4. Refractory anaphylaxisへの体系的対応 ― IV持続→グルカゴン→バソプレッシン→メチレンブルー→ECMO[12]
  5. neffy®点鼻液など新規製剤の選択肢 ― 2026年2月日本発売。注射拒否・小児で大きな選択肢[20][21][22]

📝 著者情報・更新履歴

監修・執筆:脳神経内科専門医(医学コンテンツ作成チーム)

準拠ガイドライン:WAO 2020 (+2024 update) / EAACI 2021 / AAAAI/ACAAI 2023 / JSA 2022(2023.03修正)/ RCUK 2025(2026.01実装)/ JRC 2025(2025.10オンライン公開)/ ASCIA 2024(2026.02改訂予定)/ GA²LEN 2024 consensus

初版公開:2026年4月28日

更新履歴

  • 2026-04-28:初版公開(neffy®日本発売・RCUK 2025・JRC 2025反映)

免責事項:本記事は医学的情報の提供を目的としたものであり、個別の診療行為を代替するものではありません。実際の診療判断は主治医とご相談ください。

参考文献(31件)

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