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ランバート・イートン筋無力症候群の最新診断と治療.mp3 - Google ドライブ
ランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)の最新診断と治療
概要
ランバート・イートン筋無力症候群(Lambert-Eaton Myasthenic Syndrome: LEMS)は、自己免疫性の神経筋接合部障害であり、末梢神経終末からのアセチルコリン放出障害により、四肢近位筋の筋力低下、腱反射低下(または消失)、および自律神経症状を特徴とします1。他の神経筋接合部疾患である重症筋無力症(myasthenia gravis, MG)に比べて稀な疾患で、推定有病率は人口100万あたり約2~3人と報告されています1。
LEMS患者の約50~60%は悪性腫瘍を合併する傍腫瘍性症候群(paraneoplastic LEMS, P-LEMS)であり、残りは明らかな腫瘍を伴わない特発性(自己免疫性)LEMSです3。P-LEMSの原因腫瘍は小細胞肺癌(small cell lung cancer: SCLC)が最多ですが、稀に非小細胞肺癌、悪性リンパ腫、前立腺癌、胸腺腫など他の腫瘍に随伴する例も報告されています3。
LEMSの特徴的な臨床像
- 四肢近位筋優位の筋力低下(特に下肢)
- 腱反射の減弱または消失
- 運動後に筋力が一過性に改善する「促通現象」
- 口渇などの自律神経症状
- 小細胞肺癌などの悪性腫瘍を高率に合併
LEMSはSCLCに先行して発症することが多く、神経症状の出現から腫瘍発見まで平均2~3年(ときに5年以上)ずれることもあります3。P-LEMSは典型的には中高年男性(平均発症年齢は50~60代)に多く喫煙者に多発するのに対し、非腫瘍性の自己免疫性LEMSは比較的若年発症で女性にやや多く、しばしば他の自己免疫疾患(甲状腺疾患、悪性貧血、糖尿病など)を合併します2。
本症は古典的な傍腫瘍性神経症候群の一つであり、腫瘍への免疫反応が神経終末の抗原に対する自己抗体産生を誘導する機序が重要です。以下に診断から病態、治療まで最新の知見を解説します。
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診断基準と診断の流れ
LEMSの診断は、特徴的な臨床三徴(近位筋優位の筋力低下、腱反射消失または低下、顕著な自律神経症状)に加え、神経生理学的検査所見および自己抗体検査による裏付けによって行われます1。診断のフローチャートとしては、臨床症状から本症を疑ったら速やかに電気生理検査(神経伝導検査・反復刺激筋電図など)を行い、必要に応じて抗体検査と腫瘍の検索へ進みます8。以下、それぞれのステップについて述べます。
臨床症状・身体所見
典型例では緩徐に進行する対称性の筋力低下で、特に下肢の近位筋(大腿筋群)が侵されやすく、椅子からの立ち上がりや階段昇降が困難になります。上肢近位筋も障害されますが、眼瞼下垂や複視、嚥下障害などの眼・球麻痺症状はMGほど顕著ではありません1。
四肢の筋力低下に比して患者の自覚する易疲労感は強く、運動後に一過性に筋力が改善する運動後促通(Lambert徴候)がみられる点が特徴です1。腱反射は全般的に低下または消失しますが、運動後短時間は一時的に反射が戻る(促通する)ことがあります1。
自律神経症状として口渇(唾液分泌低下)が高頻度で認められ、その他に便秘、尿失禁・勃起不全などがみられる場合があります2。これらの所見はLEMSを疑う重要な手がかりとなります。MGとの鑑別点については後述します(「MGとの鑑別」参照)。
電気生理学的検査
LEMSを疑う症状がある場合、神経筋接合部の機能評価のための電気診断が不可欠です。神経伝導検査では運動神経複合筋活動電位(CMAP)振幅の低下が認められ、特に手筋(小筋群)で安静時CMAPが低下(2mV未満)することが多い点が特徴です3。
LEMSの特徴的な電気生理学的所見
- 安静時のCMAP振幅低下
- 低頻度(3Hz)反復刺激での漸減現象
- 高頻度(20-50Hz)刺激または強収縮後の顕著なCMAP振幅増大(100%以上)
低頻度刺激反復神経刺激試験(RNS;例えば3Hz)では、MGと同様に漸減現象(CMAP振幅の10%以上の漸減)がみられます3。一方、高頻度刺激(20~50Hz)や強収縮後の直後ではCMAP振幅の増大(漸増現象)がみられ、LEMSではこの促通現象が診断的価値をもちます。
典型例では最大努力による数秒間の強収縮後や30~50Hz高頻度刺激後にCMAP振幅が100%以上(2倍以上)増加するのが確認でき、これがLEMSの電気生理学的所見の所見の特徴です1。このような顕著な漸増現象(増幅応答)はMGではみられない所見であり、本症の確定診断に有力です。
ただしLEMS患者の一部(約10–15%)は血清抗体陰性で電気生理変化も軽度な場合があり、そのような症例では増幅率が60%以上の増加でも診断根拠として考慮します3。反復刺激が難しい状況では、単筋線維筋電図(single-fiber EMG)によるjitter増加の証明も感度の高い検査手段です1。
以上から、典型的な電気生理学的三徴(低振幅CMAP、低頻度RNS漸減、高頻度または運動後の漸増)が確認されればLEMSの診断は強く支持されます。
抗体検査
電気生理学的所見からLEMSが示唆された場合、血清中の関連自己抗体を測定することで診断を補強できます。LEMS患者の 85~90% でP/Q型電位依存性カルシウムチャネル(VGCC)に対する抗体が検出されます3。
特に腫瘍随伴例では高力価の抗P/Q型VGCC抗体陽性率が高く、一部ではN型VGCCに対する抗体も検出されます3。残り約10~15%は抗体陰性LEMSですが、電気生理所見や臨床像が典型的であれば診断は可能です。
抗VGCC抗体検査は日本でも補助診断法として2021年より保険収載され、筋電図検査と並行して実施可能になりました。この検査によってLEMSの診断確定が容易になるとともに、腫瘍合併リスクの高低判断にも有用です(後述の腫瘍との関連参照)3。
腫瘍検索
LEMSと診断された時点で、ただちに基礎疾患としての悪性腫瘍の有無を精査する必要があります。初回には造影CTもしくはPET-CTによる胸部画像検査が推奨されます3。胸部X線写真は感度が低いため不十分です3。
初回検索で腫瘍が見つからない場合でも、特に喫煙歴・体重減少などリスク因子を持つ症例では少なくとも2年間は3~6か月毎の定期的な画像検査による追跡が推奨されています3。実際、LEMS患者のSCLCの約95%は発症後1年以内に、ほとんどは2年以内に発見されたとの報告があります3。
なお、傍腫瘍性神経症候群関連の腫瘍マーカーとして抗SOX1抗体が知られており、SCLC随伴LEMS患者の約65%で陽性となる一方、非腫瘍性LEMSでは5%程度と低率であるため、この抗体の測定も腫瘍検索の補助として有用です3。
以上のように、典型的な臨床像+電気生理学的所見にて「LEMSとして診断的に確実」と判断された場合でも、可能な限り抗VGCC抗体の確認と腫瘍検索を行い、腫瘍の早期発見に努めることが重要です3。
▲ トップへ戻るMGとの鑑別
LEMSと重症筋無力症(MG)の鑑別は専門医にとって重要です。両疾患は筋無力症状を呈する点で共通しますが、以下のような鑑別点があります(表1)。特に腱反射低下と自律神経症状、運動後の筋力一過性改善はLEMSに特徴的で、MGでは説明できません2。
またLEMS患者の多くは眼瞼下垂・複視などの眼症状や嚥下・構音障害などの球麻痺症状が軽微で、呼吸筋麻痺もまれですが、MGでは眼・球症状が初発・主症状となる例が多い点でも対照的です1。
血清自己抗体もMGでは抗ACh受容体抗体(AChR抗体)が85%程度、抗MuSK抗体が5~8%検出されるのに対し、LEMSでは抗VGCC抗体が主体であり、お互い異なる抗原に対する自己免疫機序です3。
腫瘍合併の頻度も、MGでは胸腺腫合併が15%程度(主にAChR抗体陽性例)であるのに対し、LEMSでは上述のように約半数が悪性腫瘍(とくにSCLC)を伴います3。
検査所見では、神経伝導・反復刺激検査における高頻度刺激後のCMAP振幅増加(漸増現象)はLEMS特異的所見であり、MGではみられません1。一方で低頻度刺激時の漸減現象やテンシロンテスト陽性反応(エドロフォン試験による一時的筋力改善)は両疾患で共通しうるため注意が必要です。以下にMGとLEMSの主な相違点を表形式で示します。
| 項目 | 重症筋無力症(MG) | ランバート・イートン症候群(LEMS) |
|---|---|---|
| 障害部位 | 神経筋接合部後シナプス(ACh受容体など) | 神経筋接合部前シナプス(VGCC) |
| 好発部位 | 眼瞼下垂・複視など眼症状、球麻痺が多い | 四肢近位筋(特に下肢)※眼・球症状は軽度 |
| 筋力低下の変動 | 運動の反復で増悪(易疲労性) | 運動の反復で一過性に改善(促通現象) |
| 深部腱反射 | 正常(衰弱例では低下することも) | 全般に低下または消失(運動後に一時的促通) |
| 自律神経症状 | 通常みられない(コリン作動薬の副作用) | 口渇、便秘、勃起不全などを伴うことが多い |
| 神経伝導検査 | CMAP振幅:正常~軽度低下 | CMAP振幅:低下(手筋で顕著) |
| 低頻度反復刺激試験 (3Hz) | 漸減現象(>10%減少) | 漸減現象(>10%減少) |
| 高頻度刺激/運動後 | CMAP振幅の増加はみられない | CMAP振幅増加(>100%)の促通現象 |
| 病原性自己抗体 | 抗AChR抗体 (~85%)、抗MuSK抗体 (~5%) | 抗P/Q型VGCC抗体 (~85%) ※一部抗N型VGCC抗体 |
| 合併しやすい腫瘍 | 胸腺腫(15%程度) | 小細胞肺癌(50%程度)、他稀にリンパ腫など |
こうした鑑別点を総合しても診断が明確でない場合、両疾患が重複する例は稀ですが存在するため(MGとLEMSのオーバーラップ症候群)、必要に応じ専門医による精密検査・経過観察が求められます。
▲ トップへ戻る発症機序と病態生理
LEMSの病態生理の根幹は、神経筋接合部の前シナプス膜に存在するP/Q型電位依存性カルシウムチャネル(VGCC)に対する自己抗体によって、活動電位時のカルシウムイオン流入が障害されることにあります2。
LEMSの神経免疫学的機序
運動神経終末ではシナプス小胞へのCa2流入が不足するためアセチルコリン(ACh)のエキソサイトーシス(放出)が不十分となり、結果として神経筋伝達が低下し筋収縮が障害されます2。安静時にはこの障害が顕著ですが、高頻度刺激や持続運動によって残存するVGCCが長時間開口するとCa2流入が漸増的に蓄積し、ACh放出がある程度まで増加して一時的に筋力が改善する(促通現象)と考えられています2。
VGCCは自律神経節前線維など自律神経系にも発現しているため、抗VGCC抗体は自律神経終末にも作用し、副交感神経機能低下(唾液・涙液分泌低下など)の原因となります2。
LEMSの自己抗体は主にIgGタイプで血清中を循環し、胎盤通過性があることから新生児に一過性の筋無力症状を呈した報告もあります。また、動物モデルでは抗VGCC抗体の受動移入によりLEMS様の神経筋接合部障害が再現されており、抗体が病因に直接関与することが示唆されています。
パラネオプラスティックなLEMSでは、腫瘍細胞(特にSCLC細胞)上に発現するプレスナプス抗原に対する免疫応答が誘因となり、結果的に末梢神経終末のVGCCに交差反応する抗体が産生されると考えられます2。SCLC随伴LEMS患者では抗VGCC抗体価が高い傾向があり、さらに抗SOX1抗体など腫瘍関連自己抗体が検出されることも多いです3。
一方、非腫瘍性の自己免疫性LEMSでは他の自己免疫疾患の合併やHLA遺伝子型との関連が示唆されており、特に若年発症の症例ではHLA-B8-DR3ハプロタイプを持つ割合が高いとの報告があります3。これらはMG(早発型MGでHLA-B8-DR3が多い)との共通点も示しており、自己免疫素因の存在が示唆されます。
組織学的には、LEMS患者の神経筋接合部ではシナプス間隙に形態学的な異常は少ないものの、活性帯に並ぶCaチャネル数の減少が報告されています。また、抗VGCC抗体によりチャネルのクロスリンキングと内在化が生じ機能数が減少することが示唆されています3。補体の関与はMGほど明らかではなく、主として機能阻害型の抗体反応と考えられています。
以上より、LEMSは腫瘍免疫と自己免疫が交錯する神経免疫疾患であり、その解明は今後の治療標的の開発にもつながる重要なテーマです。
▲ トップへ戻る治療戦略
LEMSの治療は、「腫瘍随伴例では基礎腫瘍の治療」「筋力低下や自律神経症状に対する対症療法」「免疫学的異常に対する免疫療法」の三本柱で検討します1。患者ごとに病態や重症度が異なるため、これらを組み合わせた個別化治療を行います。近年、本邦でも診療ガイドラインが策定され、治療選択肢が整理されています。以下、各治療法について最新情報を解説します。
対症療法(神経筋伝達改善薬)
LEMS症状の緩和には、神経筋接合部でのACh放出を増強する薬剤が有効です。第一選択薬は3,4-ジアミノピリジン(3,4-DAP, アミファンプリジン)で、電位依存性K+チャネルを遮断して神経終末の活動電位を延長させ、Ca2チャネル開口時間を増やすことでACh放出を促進します9。
3,4-ジアミノピリジン(3,4-DAP)
- 作用機序:K+チャネル阻害によるCa2流入促進
- 有効性:複数のプラセボ対照試験で筋力改善効果を証明
- 用量:少量から開始し、成人で1日最大80mgまで漸増
- 副作用:四肢・顔面のパレステジア、高用量でけいれん発作
- 日本での状況:2023年12月に承認申請済み(近い将来使用可能に)
3,4-DAPは1980年代から欧米で臨床使用され、その有効性は複数のプラセボ対照試験で証明されています4。実際、7件のランダム化試験で筋力・易疲労性の有意な改善が示され、2018年に米国FDAが成人LEMSに対しアミファンプリジンリン酸塩(商品名Firdapse®)を承認しました4。
日本では長らく未承認でしたが、医療上の必要性が高い未承認薬に指定され治験が行われ、2023年12月に承認申請が行われています9(近い将来使用可能になる見込みです)。3,4-DAPの開始用量は少量から漸増し、成人では1日最大80mgまで使用できます4。副作用として四肢や顔面のパレステジア、けいれん発作(高用量時)が知られますが、適切な用量管理で安全に使用可能です4。
対症療法としては他にコリンエステラーゼ阻害薬のピリドスチグミンも併用されます。ピリドスチグミン単独ではLEMSへの効果は限定的ですが、3,4-DAPと併用することで相乗効果が期待できます3,4。実際、臨床では3,4-DAPにピリドスチグミンを併用しつつ症状に応じて増減する方法が一般的です4。これら対症療法により筋力低下や自律神経症状(口渇など)の改善が得られれば、日常生活動作の自立度が大きく向上します。
免疫療法
特発性LEMSや腫瘍治療後も活動性が残るLEMSでは、MGの場合と同様に免疫抑制療法の適応を検討します。副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン)は第一選択の免疫治療であり、症状の重さに応じた用量で可能な限り短期間使用します3。
ステロイド単独で不十分な場合や長期管理が必要な場合には、免疫グロブリン静注療法(IVIg)や血漿交換療法(PE)が有効です。IVIgは急性増悪時の一時的な効果だけでなく、定期反復投与による維持療法としても有用であるとの報告があります3。PEも速効性がありますが、症例報告レベルに留まります3。
ステロイドの長期使用を避ける目的で、経口免疫抑制剤(アザチオプリン、シクロスポリンなど)がMGでは用いられますが、LEMSにおけるエビデンスは限定的です。ただし、基本的な考え方はMGと同様であり、自己免疫反応の抑制によって症状安定を図ります1。
近年、補体阻害薬エクリズマブや抗FcRn抗体フラグメント(エフガルチギモド)などMGに登場した新規治療薬について、LEMSへの適応は確立していません。しかし、LEMS患者でMG治療薬を試みたケース報告はいくつかあり、重症難治例では個別申請で試用が検討されることもあります。
基礎疾患(腫瘍)の治療
腫瘍随伴性LEMSでは原疾患である腫瘍の治療が最優先となります3。特にSCLCが確認された場合、標準的な小細胞肺癌治療(化学療法や免疫チェックポイント阻害剤、放射線療法など)が速やかに開始されるべきです3。
腫瘍の寛解に伴い、LEMS症状も大きく改善することが多く、腫瘍が根治すればLEMSが完治する症例もあります3。実際、腫瘍切除や化学療法後に抗VGCC抗体価が低下し、筋力が著明に改善した例が報告されています。
また、LEMSの存在自体が腫瘍に対する免疫反応の強さを反映している可能性があり、SCLC-LEMS患者は同じSCLCでもLEMSを伴わない患者より腫瘍予後が良好であったという報告もあります3,7。もっとも、腫瘍が治癒しても自己免疫が完全には収束せずLEMS症状が残存する場合もあり、その際は上述の対症療法や免疫療法によるコントロールを継続します。
腫瘍が進行している場合でも対症療法により筋力を維持することで抗癌治療に耐えうる全身状態を保つ効果が期待できるため、神経内科医と腫瘍内科医の連携が重要です1。
以上のように、LEMS治療では腫瘍の有無と病勢の重症度に応じた総合的アプローチが求められます。特に腫瘍随伴例では「腫瘍治療」+「対症療法」で早期に症状を改善しつつ、必要に応じて免疫抑制を追加する戦略になります。一方、非腫瘍性例では「対症療法」+「免疫療法」で長期管理を行い、患者の生活の質(QOL)の維持向上を目指します1。
治療反応を定期的に評価し、症状寛解が得られれば段階的に免疫治療を減量しつつ、対症療法のみで維持できるか検討します。LEMSは希少疾患ゆえエビデンスが限られますが、近年は国際共同研究や患者登録が進み、新たな治療法の開発も期待されています。
▲ トップへ戻る腫瘍との関連
前述のようにLEMSは半数前後の症例で悪性腫瘍(とくにSCLC)の合併を認めます3。そのためLEMS診断時には腫瘍の有無を精査することが不可欠ですが、同時に「どの症例が腫瘍随伴型か」を見極める手掛かりも研究されています。
腫瘍合併リスク評価:DELTA-Pスコア
以下の6項目をポイント化して腫瘍合併リスクを評価
- D: Dactylitis(指の腫脹)/重喫煙歴
- E: Emaciation(体重減少)
- L: Lumber carcinopathy(腰部症状)
- T: Timespan <3 months(発症3か月以内)
- A: Age at onset ≥50(発症年齢50歳以上)
- P: Proximal weakness(近位筋力低下)/Bulbar症状
3点以上でSCLC合併確率が90%以上
臨床的には喫煙歴の有無、体重減少の存在、Bulbar症状の合併(構音障害・嚥下障害・頚部筋力低下)、性別(男性)、発症年齢(50歳以上)、Karnofskyパフォーマンススコア低値といった因子が腫瘍合併リスクと相関することが報告されており、これら6項目をポイント化した"DELTA-Pスコア"が提唱されています3,6。DELTA-Pスコアが3点以上の場合、90%以上の確率でSCLCが存在したとのデータもあり、腫瘍検索の指針として有用です3,6。
実臨床では、高齢男性で喫煙歴があり短期間での体重減少を伴うLEMS患者では特に腫瘍を強く疑い、初回の画像検査が陰性でも継続的にフォローアップします10。逆に若年発症で他自己免疫疾患合併など自己免疫性が示唆される症例では腫瘍合併の可能性は低いものの、ゼロではないため一定期間の経過観察は怠らないようにします。
LEMSに合併する腫瘍としてはSCLCが最も多いものの、他にも報告のある腫瘍には膵神経内分泌腫瘍、胃小細胞癌、前立腺小細胞癌、乳癌、ホジキンリンパ腫などがあります。しかしこれらは極めて稀であり、LEMSの腫瘍検索ではまず胸部画像検査でSCLCの存在を調べることが基本です3。SCLC以外の腫瘍が疑われる場合は症例ごとに臨床症状に応じた検査を追加検討します。
近年増加している免疫チェックポイント阻害薬(ICI)治療との関連では、癌患者がICI療法中にLEMSを発症する免疫関連副作用irAEのケースも報告されています3。特に抗PD-1抗体ニボルマブ投与中の肺扁平上皮癌患者でLEMSが生じた例などがあり、ICI時代においてもLEMS発症時は既知の腫瘍の免疫関連機序を考慮する必要があります3。
なお、腫瘍随伴性LEMS患者では神経症状出現時に腫瘍が限局期であることが多く、結果として腫瘍予後が一般の同ステージ患者より良好となる傾向が指摘されています3,7。この「腫瘍の早期発見」および「免疫反応による腫瘍抑制効果」はパラネオプラスティック症候群に共通する現象でもあります。
LEMS患者の長期予後は腫瘍の有無に大きく左右されますが、非腫瘍性LEMSでは生命予後は健常人とほぼ変わらず良好であるのに対し、腫瘍随伴LEMSでは腫瘍の進行度に応じた予後となります3。SCLC自体の予後は不良ですが、LEMSを呈したSCLC患者では5年生存率が向上したとの報告もあり(傍腫瘍性神経症候群によるリードタイムバイアスの可能性も考慮が必要)、今後さらなる疫学データの蓄積が望まれます。
▲ トップへ戻るおわりに
イートン・ランバート症候群(LEMS)は稀少疾患ではありますが、神経免疫学的機序や腫瘍との関連から神経内科医が理解すべき重要な疾患です。診断においては臨床像・電気生理・抗体検査を駆使してMG等と鑑別し、見逃さないことが肝要です1。
特に腫瘍随伴の可能性を常に念頭に置き、適切な検査とフォローアップによって早期に腫瘍を発見し治療に繋げることが患者予後を左右します3。治療は3,4-DAPを中心とした対症療法で筋力低下を改善しつつ、必要に応じて免疫療法を組み合わせる個別化戦略となります1,3。
近年の研究により本症の疾患理解と診療体制は大きく進歩しており、国内でも診断法の標準化や新規治療薬の承認に向けた動きが進んでいます。今後さらなるエビデンスの集積と新たな治療開発に期待しつつ、現時点ではエキスパートによる適切な診断・治療アルゴリズムに沿った包括的管理が求められます。
▲ トップへ戻る参考文献
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